案の定あの後すぐ配属の発表があって、隊列の前へ向かうこととなった。億劫だったことが顔に出ていたのか、エルヴィンに宥められる。別に良いだろうが。いっそ、やつらの温いイメージを表すには絶好のチャンスじゃないか。ここには格好良い"リヴァイ兵士長"なんて何処にもいない。やつらの中に勝手に作られただけだ。



 前を歩くエルヴィンが足を止めたからなにかと思うと、その視線の先にアイツの顔があった。なにかが崩れ落ちそうなのをぐっとこらえて、それでも目は逸らせなかった。アイツは死んだはずだ。そう聞いた。誰に聞いた? アイツの職場でだ。これは確かか? 落ち着け。考えろ。俺の目の先にいるのは誰だ?

 エルヴィンが到着すると同時に、いっせいに敬礼が向けられる。
 予定は滞りなく、隊が分けられていく。誰がどこに入ろうか、知ったこっちゃねぇが…でもこいつらはもう、俺の『部下』であり共に闘う人間だ。__あの女も。目を凝らすと、『似ている』だけだと思った。そう思い込ませただけかもしれないが。アイツはもうこの世にいないのだから当然だ。化けて出てくるなんてこともありえない。

 __化けて?
 いや、それだったら有り得るかもな。自嘲気味に笑った。アイツは最後に俺の名を読んだかも知れない。人類最強と呼ばれている俺を求めたのかも知れない。それでも俺は来なかった。間に合わなかった。恨んで当然だ。むしろ恨んでくれていい。一生、恨めばいい。

 あの女は俺への罰なのかもしれない。
 


( 20110422 )

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