「なにお前、シズカさんと話したのか!」
「う、うん。館長の部屋に行ったら偶然に、」
「っくぅーーー! 羨ましいぜラグ、ジギーさんの鉄馬に乗せてもらった上にシズカさんに会えるなんて…」

 バタバタして羨ましさを全身で表したら、シルベットがキッと睨みつけてきた。食事中だから静かにしろ、という意味だと思っておく。出されたスープには死んでも手を出さない。

 ところで、その、シズカさんに会った、しかも会話したというラグのことだ。
 シズカさんは、女ながらに若くからBEEを勤めている人で、ヘッド・ビーに匹敵するほどの実力を備えているというもっぱらの噂が立つ人だ。なんで噂かというと、彼女に来る配達依頼はアカツキの中でも上流階級の人宛のテガミばかりで、その姿は早々見られないからだ。
 館内でも人の多い時間に居ることが少ないらしいので、会えたラグは相当なラッキーだ。



「で、でもザジだって会った事くらいはあるでしょう?」
「ハチノスの入り口で館長の横に歩いてたのとすれ違ったりとかはな。本当にお前それ幸運だぜー」
「そうだったんだ…でもザジ、僕ね、ゴーシュに聞いてたんだ」
「なにを?」
「シズカさんのこと」
「どんな風に?」
「自分の先輩で、尊敬してる人で、その、恋人…だって、」

 ラグのあっさりした声音に齧りかけのバケットをぽろりと落とした。


「シズカさんって、館長の恋人じゃ、なかったのか?」


( 時がたてば)
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