「強いポケモン、弱いポケモン、そんなの人の勝手……うむ、名台詞だね、お姉さん。けどっさ、お姉さん、やっぱりポケモンに強さ弱さはあると思うんだ。聞くけど、貴方はコラッタを使ってホウオウに勝てるかい? ほら答えられない。私は、はっきり言うよ。勝てない、ってね。ただそれはなにも育てをしていないときだ。人間が愛情を持って育てれば……という考え方には非常に賛同するよ。ただ、私が言いたいのはそうやって薬やトレーナーの手を入れて"作られた"ポケモンを、強いポケモンだの弱いポケモンだの、人間の秤で見るのはどうかな。野生の中で生き抜いたポケモンを見れば分かると思うけどさ、」


「……もう良いわ! 早く、次の部屋に……いって頂戴。お願いだから」

「あらららら、泣きそうな声だ。お姉さん、負けるのは久しぶり? だが良いことを教えてあげよう、負けることは勝利よりも寧ろ得ることが多く」

「……早、く!」



 私は準備体操をしているカイリキーをボールへ戻し、仕方なしに急いで扉を抜ける。完全に震えた声のお姉さんは膝を着いて、さっきの二人にも見た光景だ。強いポケモンだの、弱いポケモンだの、私はそんなの、特に私が扱う子達に関しては言えない。既に野生とはかけ離れているから。より強い固体を。より良い厳選を。周りのみんなが顔をしかめる中私だけはこの作業に熱中していた。何度も何度も同じことを繰り返す。いつの間にかボックスは卵から孵ったワンリキーで埋れる。でもまだ足りない。もっと強い固体を。もっと強い固体を。ノーガードから繰り出されるばくれつパンチを。攻撃を鍛え上げて。何度も薬を与えて。そうしてほら、出来上がり。
(どうして私はこんなことをしているの?)


「相変わらず趣味の悪い部屋っさ、こんにちは、ミニリュウオタ。ううん、チャンプ。前は四天王だったのに出世したね、だってチャンピオンさんはいなくなってしまったものね、赤い帽子の素敵なひと。あのでんきだま持ったピカチュウは羨ましいなぁ、ボルテッカーとねこだましと、ああ育成をしなきゃ。その前に私は貴方を、倒すよ、ほら、行ってらっしゃい、ダース」

「相変わらずの減らず口だね、シズカ。今までどこに行っていたんだい? カントーを制覇してからはまた大好きな育成でも? 俺は君が遊んでいる間に出世したんだ、ジョウトを治めるのは俺だ、今も、これからも、ね。さぁギャラドス、行って来い」

「こんなことも分からないなんて可哀想な頭。これからジョウトを治めるのが私で、貴方はまたトップから引き摺り下ろされることをさ。かみなり。……控えめぶっぱ。貴方の新しいあだ名教えてあげるよ。お財布、ね。私のお財布。素敵なあだ名でしょ? さ、次を出せば。ほら、ダース、戻れ」

「……あまり大人をナメるなよ。カイリュー」

「グドラりゅうせいぐんでよゆー」


 まだ続けるの? 星の固まりがカイリューを襲って、倒れる。煙。煙。いつから私はこうだっけ。どう調整して、ポケモンの力を数字でしか見れなくなって。技の構成を決めて、トリッキーな確実に勝てる"型"を。まひとエアスラッシュ。てんのめぐみ。なにを一撃で倒せるか。そんなことばっかり。それが大好きで大好きでたまらない。沢山のポケモンを逃がして強い固体を探し続けて自分好みに仕立て上げて。
(ああ、でもそれって)(なんって悲しい人生なんだか)

 彼らをもっと愛したいよ。こんな数字、消えちゃえば良いのにね。




 廃人っぽい女の子を書いてみたくて。あまりに酷いのでお蔵入り。当時はノーガードカイリキーとかグドラとかキッスのまひるみとかが流行っていました。
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