「りゅうのはどう!」

 カイの口から放たれた協力な攻撃で、あっさりと野生のゴローンは倒れた。

 チャンピオンロード__ポケモントレーナーの最高峰が集まるポケモンリーグへ続くこの道は、その名の通り、容易な道じゃない。トレーナーもポケモンも、今までとは桁違いのレベルで現れる。
 ……でも、一度この道をクリアした私たちにとって簡単に感じられた。野生のポケモンはなるべく倒さず、トレーナーは瞬殺。

「カントーは大したことないね」
「……だが、油断は禁物だぞシズカ。いつなんどきどんなトレーナーが現れるか分からない。もしかしたらお前さんみたいに他の地方から来ているトレーナーもいるかもしれん」
「わかぁってますぅ。もう、カイは心配性だなぁ」

 カイは私の大切なパートナー。ナックラーの時からずっと一緒に成長してきた、兄弟のような存在。
 カイは強い。ホウエンを旅した間、積み重ねてきた力がある。きっとカイより強いフライゴンはいないんじゃないかと思う。


「さすがに人も減ってきたね……」
「なんだ、怖いのか?」
「っち、違うもん!」
「じゃあなんで俺をボールに戻さないんだ?」
「そ、れは……」

 押し黙る私を見て、カイが図星だろ、と笑った。私が昔から暗いところや、人気のないところを苦手としていることをカイは知っている。昔は森や洞窟を通るのも一苦労だった。足が竦んで動けなくなった私の服の裾をくわえて、まだナックラーだったカイが出口まで引っ張ってくれたこともある。
 カイからしたら何を今更、と思うんだろう。でもこの年になると恥ずかしかったりするのだ。

「(察しなさいよ!ばか!)」

 更に地下へ階段を下りると、いよいよ真っ暗になった。かろうじて足元がうっすら見えるレベル。これでは歩きにくいことこの上ない。
 私は腰にセットしたボールのうち、まだ真新しい一つを取り出した。

「キリヤマくん」

 赤い光と共に現れたのは小さなピカチュウ。名前はキリヤマくん。この地方に来て出会った子。

「こ、こんにちは」
「こんにちは。あのね、『フラッシュ』をして欲しいんだ」
「分かりました」

 フラッシュは、暗い洞窟内を明るく照らす技。バトルでは相手の目をくらますことが出来る。
 キリヤマくんの光で、暗かった洞窟が明るく照らされた。

「ど、どうですか……?」
「うん、バッチリ! ありがとう!」

 ひょいと抱っこするとポカポカと暖かい。小さなキリヤマくんはぬいぐるみのようにふわふわの毛並みで、抱き心地は最高だ。ライチュウにするのはやめとこう、とこっそり誓った。
 カイはちょっぴりキリヤマくんに嫉妬するような顔をしている。いつも大人なカイにしては珍しい。でも、私はもうカイを抱っこすることは出来ない。私を背中に乗せることはできるようになったけど、ナックラーだった頃のように抱き上げてもらえなくなったのは、やっぱり寂しいのだろうか。

 しばらくてくてくと歩きながら、私はチャンスだと思い不安に思っていたことを口に出した。

「ねぇ、キリヤマくん」
「なんですか?」
「キリヤマくんは、本当に私たちと一緒に来て良かったの?」


 私がキリヤマくんに出会ったとき、彼にはちゃんとしたトレーナーがいた。夜、トレーナーが寝ている間に家を抜け出してきたところに私たちが遭遇したのだ。どうやら彼は一人立ちをしていくつもりだったらしく、経験値を手に入れるために私を襲ってきた。レベル差もあり、カイはそれを返り討ちにした。気絶したキリヤマくんが既にゲットされていることに気づいた私たちは、彼をトレーナーの元に届けようか、ずいぶん迷った。
 トレーナーにも色々ある。私とカイのようにポケモンと家族のような関係を築いている人もいれば、ポケモンを道具としか思っていないひどい人もいる。そういう人の元から逃げ出すポケモンはゴマンといて、キリヤマくんもそうじゃないかと思ったのだ。
 目覚めたキリヤマくんは、最初は警戒心丸出しだったが、カイの姿を見るとビクビクしながら話をしてくれた。カイに手加減というのを覚えさせなければ、とこっそり思った。
 話によれば、キリヤマくんのトレーナーさんは決して悪い人ではないらしい。奥さんと一緒に暮らしていて、ポケモンたちを実の子供のように可愛がっている。だが、バトルとなるととても厳しく、その家では強いことが正義だった、らしい。キリヤマくんは、前のトレーナーさんがいなくなって(それが亡くなったのか、捨てられたのかは分からなかった)一人ぼっちになったところを、前のトレーナーさんの親友だったトレーナーさんに受け入れてもらったそうだ。だから多少その家に居にくいこともあり、トレーナーさんに認めてもらうために懸命に修行した。するといつの間にか元からいたポケモンたちより強くなってしまい、ますます家に居にくくなって、家出した。とのこと。
 とりあえず、虐待や暴力が原因ではなくて私はほっとした。そして、そういう状態なら家に戻った方が良い、トレーナーさんも心配しているだろうから、と説得しようとしたのだけれど、キリヤマくんはなかなか頷かなかった。
 このままずっとこの森の中にいるわけにはいかない。でも、まだ怪我が治ってないし、このまま放っておくのは心配だと思っていたのが分かったのか、カイがとりあえず次の街まで一緒に行って、色々考えてみたらどうだ、と妥協案を出した。
 色々と考えた結果、キリヤマくんはコウダさんの元を離れ、私と一緒にここまで来た。

 でも、それで良かったのかと思う時があった。
 私だって、コウダさんと同じ、この世界においては強さが正義だと思っている。ポケモントレーナーの性質上、そうやって上を目指していくのが当たり前だ。勝つために厳しい修行をするし、負ければ涙が出るほど悔しい。みんなにこたえられない自分を嫌いになるときもある。
 せっかくコウダさんの元を離れたのに、私のところへ来て良かったのか、私はずっとキリヤマくんに聞いてみたかった。

「うちのパーティは、みんな、信頼関係で成り立ってるの。私はポケモンたちを信頼してるし、みんなはトレーナーである私を信頼してる。疑いもなく、お互いにそう思って今まで一緒に闘ってきた。私は『信頼』こそが、強さに繋がると思ってる。それで、私がトレーナーである以上、私はあなたたちに勝ち星をつけなければいけない。だから、私はコウダさんと同じ、強さを追い求めている。キリヤマくんは、私を、信頼出来る?」

 『コウダさんと同じ』というところを、わざと強調した。
 キリヤマくんは押し黙っている。
 彼を引き取ってから、一度もバトルに使っていないのはそういうことがあってだった。彼のレベルは56。決して弱いわけじゃない。技も多彩だ。でも、バトルにおいて一番大切な信頼関係を、私は彼とまだ築けていない。
 ポケモンリーグは総力戦だ。6匹全員の力が必要になる。でも、彼が闘うことが出来ないのなら、ボックスで出番を待つポケモンも居る。つまりはそういうことだ。

「……シズカさんは、コウダさんとは違います」
「…………」
「そもそも家を出たのは、コウダさんの考えが嫌だったんじゃなくて、僕が……僕が、あの家の幸せを壊してしまった気がして。バトルは好きです。厳しい修行にだって耐えられる。でも、僕の存在意義が分からなくて、怖かった。キョーコさんも、アユムも……僕がいなければ、幸せだったのに。……シズカさんが誘ってきてくれたとき、貴女なら僕に存在意義をくれる気がしたんです。だから、一緒に来ました。……それじゃ、駄目ですか?」

 カイの方を向くと、彼はゆっくり頷いた。

「駄目じゃない、ってさ」
「あ……」
「悪いな、うちの主人は変なとこで口下手んなる」
「いえ……」
「口下手、じゃないもん」
「はは、嘘つけ。俺に代わりに言って欲しそうにしたくせに。……シズカ、お前さんからも言った方が、今後のためになるぞ」

 人影が浮かんだ。このフロア初めてのトレーナーだ。私はカイに目で合図し、彼をボールに戻した。

「え、え……!?」
「よおしキリヤマくん。私たちの初バトルだよ。私を信じて。そうしたら、勝てるから!」
「っ、はい!」

 力強く頷く彼は勢いよく走り出し、相手のオニドリルに向かっていった。バトルの始まりだ。



 日記に載せていた小ネタ。以下はわりとどうでもいい話なのでぜんぜん読まなくて大丈夫です。


 今のところ決まってる設定はごとう→ボーマンダ、つじい→グレイシア(ふぶラー笑)、じゅんけい△→メタグロス、きょーこさん→ペルシアン、そうや→フリーザーくらい。スミスとかがっきゅんとか考えてみたけど当てはめるのがなかなか難しいです。辻井さんとかすぐ決まったのに笑 
 3ライキャラをトレーナーにして、みんなそれぞれポケモンもたせてもいいなと思いました。というのは私はポケモン夢も書いてますから、どうしても主人公に私好みのポケモンを持たせたいんですよねー。トレーナーで考えるときりやまにはフシギダネが似合う気がします。ごとうは……ハッサムとか。バンギとか。厨ポケか!笑 ゴツイのいっぱいもってそーですね。ゴツいの5体に一匹だけエーフィとかムウマとか嫁がいそう。島田さんは……ここは原作にのっとって雨パでしょうか笑 島田さんがグドラとかトノとか繰り出すのか……。しかしBWの雨パってどうなってるんです?(調べた)→あ、ルンパッパさんはまだ現役なんですね。あー、あとウォッシュロトム、カイリューかー。なるほどー。島田さん、カイリュー似合いますね笑 そっかトノは夢特性で雨降らし習得したんですね。トノも似合うなぁ。スミスは……エルフーン! エルフーンどうですか! 完全に「風車」意識ですね分かります。いやエルフーンが何パで活躍するかは知らないんですけど。エルフーンって耐久でしたっけ……いたずらごころでしたよね。あとはスイクンとか……ストライクとか? スミスは足の早くて軽いポケモンのイメージになりますね。ハッサムはちょっとゴツいからストライクの方がいいな。ストライクって何型なんですかね。きせき持ったりするんですかね。

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -