俺はあいつの最後を見ることさえ叶わなかった。調査兵団という場所に所属しているゆえに、壁の外へ出ていた俺が町へ戻ってきたのはあいつが巨人の口に納められたあとだった。吐き出されてもいない。だから、遺体すら、残らない。人類最強と呼ばれても、愛するもの一人守ることすら、かなわない。





「リヴァイ、ほらあの子だよ。成績トップ10で、この場所を選んだのはあの子だけだ」

 綺麗に整列している新団員を、ショーウインドーを眺めるように見る。心底興味がなかった。エルヴィンが目で指した先には、長い前髪を垂らした女がいた。小柄で、ほんの少しだけあいつに似ているような気がして、そう思った自分を蹴り飛ばしたくなった。

「どうせ他は憲兵団だろ」
「ああ。ちなみに、あの子は9位だ」
「俺が求めるのは成績じゃねぇ、実力だ、エルヴィン」

 あの女のせいで昔の記憶が蘇り、一気に気分が落ち込む。腹ただしい。あいつのことを忘れようとは思わない、一生。それでも巨人を相手に戦う時に雑念は無用だ。常日頃、雑念はいらない、必要なときだけでいい。今は必要ではなかった。
 しばらくすれば、あの部下となったものたちの前に立たなければならない。羨望の眼差しを受けながら。それが失望の眼差しに変わるまで時間はかからないことだろう。

( 20110420 )
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