普段はほんとに喜怒哀楽の少ないつまらんキノコのくせに。
 どう考えたってこのスーパーに美しいおれに釣り合うわけがないのに。

 こいつが時々見せる顔に、おれは、今すぐぶっ倒れるんじゃねぇかってくらい心臓がばくばくして。どうしようもなく顔が熱くて。こいつの目に映る俺も見られなくて。

 そんでこいつは、多分それを見抜いてる。

「……なぁ」
「んだよ」
「おまえ、おれの目好きだろ」
「は?」
「ていうか、キスが好き?」
「はああ?」

 もう動きたくない、気だるい空気の中で、掠れた声で返事をする。(掠れてるのはあいつのねちっこい、それはもうねちっこいアレのせいである。考えたくないが)
 キノコは薄っぺらい背中をベッドサイドライトの下に晒しながら、にやにやと笑っていた。

「キスされると、すごく気持ち良さそうな顔するし」
「っ……」
「それに、おれがおまえを見てるとき、おまえはおれの目を見ようとしない。真っ赤な顔でな」
「ん、なこと……!」

 急にキノコが迫ってきた。
 慌てて口を自ら両手で塞ぐ。あからさまに不服な顔になるキノコ。

「なぜ塞ぐ」
「や……そっちこそ、あの、なんですか、急に」
「そういう関係だろ」
「そ、そうです……ケド」
「恥ずかしいのか?」

 それだ。
 その、意地悪くさい、笑い方。
 それを見るたびにおれの心臓はうるさく鳴り出して、

 ああ、今もだ。

「恥ず、かしい、に決まって……んだろ」

 もちろん笑われると思って小さい声で呟いたのに、キノコからの返事はない。どうしたことかと目線を戻すと、シーツに伏せてぷるぷる震えている姿が見えた。

「えっどうした」
「あー……なんかもう、おまえ、怖い」
「は? 怖いってなんだよ」
「天然が怖い」
「天然? んだよそれ。言われたことねぇよ」
「……当たり前だ。おれ以外にその天然発揮されたら困る」

 油断も隙もあったもんじゃない、とはまさにこのこと。不意をつかれて唇を奪われて、ぬるりと熱いものが入ってきて、やっぱりあいつの眼球に映ったおれを、見られない。


( 離さないと指きりしたの )
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