DFFガラケー | ナノ




仰望


最近、11とスコールが恋人同士ということを知った。
いつ、どんな経緯を経てふたりがそんな関係になったのかなんてわからない。
っていうか、彼氏彼女とか、そんなこと考えてもみなかったし、そんなふうに注意して見ていたわけでもないのだから気がつきようもなかったわけで。
それにもともとスコールはひとりで行動したがるし、なにかと構いたがりな11が面白がって着いてくって様子には不自然さはないし、自分が気が着かなかったのも当然と言えば当然かもしれないけど。
今こうしてあらためて状況を振返ってみれば他の仲間とよりはふたりで行動している時間は僅かに多かったような気もする。
そうあれば特別仲良くなるのもわかるし、そんなカンジになってしまうのも頷ける気もしないでもないというかなんというか…。

……つーか、なんで相手がスコールなのさ。
いや別にスコールがイヤってことじゃないんだけど。

前になんとく11とお互いの好みのタイプについて話したことがあった。
11の好みなんか聞くまでもないけど、なんとなく、会話の流れでそんな話になったんだ。
そして案の定 ”父さんみたいな人” と自身満々に言ってのけていた。
じゃあとりあえず、考えるのも気に食わないアイツとスコールを比較してみる。

アイツみたいに人をおちょくるような態度はスコールはしない。 (どっちかっつたらそれは11だし)
行動がいちいち大胆じゃない。 (これも11の方がそうだし)
スポーツマンでもない。 (でもこれは自分が知らないだけで、もしかしたら?…でもなんか想像し難い)
オヤジ臭くない。 (同じ年なんだから、オヤジっぽかったらそれはそれで微妙だけど)

考えれば考えるほどアイツとの共通点なんかさっぱり見当たらない。
どちらかといえばアイツみたいなのは11の方だし、ふたりまるきり正反対な性格だ。
あぁでも11、強い人が好きとか言ってたし、その辺りならスコールにも当てはまるのか。
強いったって、仲間なんか皆得強いけど。
その中でスコールを選んだってことはやっぱ何か確たるものがあったんだろうし、……気に、なる。
気になりすぎて、こうしてコソコソふたりの後をつけて物影からヒッソリと様子を窺ってしまうほど気になっている。
自分らしくない…っていうかストーカーじゃん、こんなの。
いやでも別になにかしようってことじゃないからストーカーなんて人聞きの悪い行為じゃないよな、うん。
姉を気遣って、様子を見に来ただけだ。
そう自分に言い聞かせて、そっとふたりの様子を窺い見る。




「この辺りに追い込めたら余裕だと思うんだけどね」
「紛い物とはいえ、なかなかに学習しているからな。そう易々とはいかないんじゃないのか」

どうやらここ一帯の戦闘対策について話し合ってるみたいだ。
だだっ広い上に、至るところに点在する障害物のお陰で自分が隠れていても気がつかれないほど見通しが悪い。
有利な戦闘に持ち込むための話し合い、といったところだろうか。
なんというか我が姉ながら色気がないと思う。

「そこがオリジナル様の腕の見せ所でしょ」

こう、ガーっと行ってガーっと押しやれば…と自分ですらそれはないだろうと思える位のいい加減な説明を始めた。
スコールはそれを聞きながらもなんだか軽く眉間に皺が寄ってきてるし (きっと11の説明にイライラしてる) 、こいつらホントに恋人同士?
戦いにおいて公私混同は良くないのはわかるけど、それにしたって自分の思い描く一般的な彼氏彼女の関係には全く見えない。
もっとこう、11も可愛らしく言ってみるとかしないのか?
そんな11は気味悪いから見たくないけどさ。
好きな男の前では可愛らしく振舞いたいって、そーいうのって女の子なら当然って思ってたし、それはさすがの11もそうなんだろうと思ってたんだけど。
うわ、スコール溜息吐いてるし、なんだかあんな姉で、こっちが申し訳なくなってきた。

「で、11の言う ”ガーっと行く” のは誰なんだ」
「そこは当然スコールでしょ」
「…俺か」
「うんうん。特攻隊長頼むよ」

そう11がポンポンとスコールの肩を叩いている。
ダメだ、この女。我が姉ながら意味がわからない。
素早さが抜きんでているわけでもないのにスコールに先発とか、それだったら自分の方が速さはあるし…。

「あと、クラウドもね」
「あぁ。なるほどな」

……あれ?
スコール納得してる?

「イケメンふたりで特攻隊とか、なんだか想像するだけで燃えてくるんだけど」
「そうか。良かったな」

ちょっ、なにスコール納得してんの?
つかイケメンのあたりは否定しないんだな、くそぅ。まぁイケメンだけど。

「腕力はクラウドの方が上だしな」

確かに細身に反してあんな大剣振り回してるんだから力、あるよな。
その分、動きが少し遅いけど。

「捕り逃した奴らは俺の連撃で追いやる、と」
「うん、そうそう、そうなんだよね」

そうすればあとはこっちのモンだし!と11が勝ち誇ったかのように腕を掲げる。
そんな11に対してスコールは、まぁそれも有りか、と肯定の意に頷いた。

あの11の説明を短時間で理解できていたスコールに尊敬の念すら覚えてしまう。
それはきっと自分だけじゃない。
他の仲間だって今の11の説明だけですぐに戦術を理解することなんてできないはずだ。
その辺、スコールは11の言いたいことをしっかり汲み取ることができるっていうかそんなスキルを持っているみたいだ。
それなら11がスコールに懐くのもわかる気がする。
人のことを言えた義理じゃないけど、だいたい11の何かに対する説明って言うのは大雑把すぎて相手が把握できるまでに時間がかかるんだ。
実際弟である自分でも理解しかねる時もあるし、それを事も無げに受け入れてくれる人物がいるのならそれに靡くのも当然かもしれない。

そう思えば、性格がどうだとかいうのなんてなんの意味すらないものに思えてきた。
お互いがお互いを理解できるのならそれでいい。
そしてそれが楽しくあるのなら、それ以上望むことなんてないじゃないんだろうか。
幸い今の11はそのどちらも手に入れているようだし、嬉しそうにスコールから頭を撫でてもらっている11の姿が自分も嬉しい。
なんだか気になっていた胸の蟠りがすっかり取れてしまって心が軽い気がする。


「そういえば、今日はまだ甘えてこないんだな」

そうそう、11も存分に甘えられる相手を手に入れたんだし、これからはもっとスコールに甘えてちょっとは女の子らしい仕草のひとつでも手に入れればいいんだ。
そうすればあの跳ねっ返り具合もいいカンジに調和されて少しは大人しくなれるだろうし。

「そんなに甘えて欲しいの?」

相変わらず無駄に自信満々なこんな態度だってきっとこの先薄れて行くかもしれないし。

「いつも飛びついてくるだろう。それがないと落ち着かない」

あの抱きつき方は、自分もよく11にされていた。
背後から、ガバっと飛びついてくるってやつ。
実は結構腰に負担がかかったりするから最近頻度が少なくなってきててホッとしてたんだけど、その矛先がスコールだったなんて。
スコールも自分に比べたら細っこいから、きっと腰に絶大な負荷がかかっているに違いない。
でもあれがなければないで、なんだか落ち着かないというスコールの意見には同意だ。
自分も最近抱きつかれてないからなんだか妙に物足りなくて…って、そりゃあスコールに抱きいついてるんだからわざわざ自分のところにきて抱きついてくる必要もないのはそうだけど。
あ、気がついたらなんか少し寂しくなってきた。
うん。でも、そうだよな。
お互いもう小さな子供じゃないんだから、姉弟っていったっていつまでも一緒に居るわけにもいかないんだし、この寂しさを乗り越えて自分も11離れしなきゃってこともわかってるけど。

「うーん。あれだとちょっと物足りないことに気がついてねぇ」

11がスコールを見上げて腕を広げた。

「こう、ぎゅーってしてくれると、私が嬉しいかな、なんてね」
「そうか」

そうスコールが一歩11に近づいたところで慌てて物影に顔を引っ込める。
やばい。
なんか心臓がすごくうるさいんだけど!

11が幸せそうならそれでいいし、ふたりは自分がこんなところに居ることなんて知らないわけだし、勝手に覗き見みたいな悪趣味なことしている自分がアホなんだけど、ダメだ、この雰囲気やばいって!

「なんかこうしてると恋人同士みたいじゃん、私たち」
「一応恋人同士だろ」
「だってスコール、キスすらしてくれないじゃん」
「それは…」
「わーーーーーっっ!!」

ふたりの醸すやばい雰囲気に、勢い余って飛び出してしまった。
真っ先に目に飛び込んできたのは11の腰にしっかりと回されているスコールの腕。
ぎゅって11を引き寄せていて、それがなんだか無性に悔しくて。

「そっそういうのは、まだ早いと思うんっスけどっ…」
「と、あんたの弟が言っているんだが」
「えー、なにそれティーダお子様過ぎー」

っていうか何でティーダがここにいるの、とニヤニヤしながら11がこっちを窺ってきた。
そんな顔で見てきたってダメなもんはダメだ。
だって、き、キス…とかっ、まだ早いしそんなの、絶対ダメだって。
恋人のキスっていったらだって、寝るときのちゅーとか、挨拶のちゅーとかと全然違うし、となると…あぁあ、やっぱりムリっ!

「眠る時…」
「うん。おやすみのちゅーって。ほっぺだけどね」

ひとり混乱している自分を差置いて、ふたりがのんびりといった風に会話をしているけれど、11の腰に回されたスコールの腕が外されるということもなく、余計に頭がぐるぐるしてくる。
あぁでも混乱の最中にひとつだけ気がついたことがある。
アイツとスコールの見当たらないと思っていた共通点。

おちゃらけているクセに言い出したことは絶対退かないアイツ。
マジメそうに見えて(マジメだから?)、弟である自分が登場したにも関わらず11の腰から腕を離さないスコール。

……頑固、なところがソックリだ。
それが11の心を掴む要因だったのかはわからないけれど。

「と、とにかくダメだからな!不純異性交遊なんて!!」

そう宣言すれば、11が盛大に笑い出した。
スコールはなんだか溜息吐いてるし。

こうして11に笑われて、スコールに呆れられているうちはまだまだ自分は11の言うとおりお子様なんだろう。
そしていつか姉である11からひとり立ちしなきゃいけないのはわかっているけれど、でももう少しだけ11に甘えていたいと思うのもまだ子供だからなのだと思いたい。

-end-

2010/7/30 ウェレア様リク




[*prev] [next#]
[表紙へ]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -