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関心11


「と、まぁ、一応の進展っぽいことはあったんですよ」
「その程度で進展と言っているようでは、まだまだ目出度い頭をしているようだな、11」

相手は酔っ払っていたのだろう、とさも馬鹿にしたかのように聞き返しているのは皇帝。
愉快そうな笑みを浮かべながら床に身を伏した11を見下ろしている。

ここは皇帝の居室。
11が絶対に足を踏み入れることはないだろう、いや踏み入れてはならないと心に決めていた場所。
だがそう決めていたにも関わらずなぜ11が今皇帝の部屋にいるのか。
しかも身を伏して。
それは、捕らえられてしまったからである。

”下僕にしてやる” と顔を合わせるたびに11を捕獲しようと試みていた皇帝だが、それをことごとく誰かしらの介入により妨げられてきた。
11自身がなんとか掻い潜ってきた時もあるが。
しかし11も11で、このところ拠点地を移動していたせいなのかそんな皇帝の魔の手に怯えることもなく、それなりに楽しく暮らしていたお陰で平和ボケをしていたのだろう。
嬉々として朝方の出来事をジェクトに報告に向っていたところ、まんまと皇帝の罠に掛かってしまった。
一体いつからその罠を仕掛けていたのかという11の素朴な疑問もよそに、罠に嵌まって身動きの取れなくなった11を皇帝は自室へと運び入れ、そして今に至る。

体は痺れて動かない。
そして痺れて力の入らない体は支えるものもなく、ただ地面に投げ出されている。
皇帝がなぜ11を捕らえたのか、その意味を11は理解していた。
その目的とは、兼ねてからの皇帝の目論見、11を ”下僕” にするためということ。
下僕といっても混沌勢にはイミテーションという便利な僕もいるのだが、それでは意味がないという。
イミテーションでは勤まらない、皇帝の望む ”下僕” とは、いわゆる性に関する下世話なもの。
下世話といえば11自身も人のことをいえた義理ではないが、状況が大いに違うのだから問題だ。

往々にして権力者というものは、自らのために奉仕し、尽くす者を傍に置きたがるものだ。
それは輪廻うずまくこの異界に閉じ込められた皇帝自身もそれに漏れず、またこの閉鎖された次元で生身の生娘といえば調和に属する少女か11だけ。
混沌には女性といえばアルティミシアもいるのだが傍に置くにはいささか従順さに掛けるし、それよりも彼女の力量を図れば従えるより上手く利用した方が価値がある。
そして暗闇の雲は皇帝にとっても対象外。女どころか生物かも怪しいものを傍に置くのは流石の皇帝でも勘弁である。
以前は調和の少女もこちらの側にいたのだが、今や呪いは取り払われて手に入れることは困難だ。
そもそもあのケフカが常に少女の傍に居たのだから元から無理といえば無理な話だったのだが。
そこに格好の餌食たる11が現れた。

行動は破天荒なものがあるが、カオスの力となるには力量不足。
なんの役にもたたなそうな11を少しは意味のある存在にしてやるのもいいんじゃないだろうか。
セフィロスが好きだの抱いて欲しいだの纏わり付いているようだが、一向に見向きもされていないのだし。
いつだったか、一度皇帝の罠にかかった11をセフィロスは助けようともしなかった。
あの時はそれが詰まらなくてそのまま放置しておいたのだが、よくよく考えてみればセフィロスは以前のケフカのように少女に強い関心を示しているわけではない。
それならば、あの態度も頷けるもので、皇帝自身が11をどうしようが勝手ではないだろうか。
哀れな小娘だと思いながらも皇帝にとっては都合のいいことだ。
いつの間にか拠点とする場を変えていたセフィロスと11だったが、度々11がこの城に足を運んできているのは知っていた。
いつ罠に掛かるかそれを待つのもまた一興と、のんびりと構えていたのが項を奏したのか今日ようやく捕獲することが適った。

皇帝の目的を理解している11は(だからこそ今までなんとか罠から逃れていたのだが)諦めさせようと、ひたすらに、いかにセフィロスと進展があったのかを聞かれてもいないのに熱く語り聞かせた。
肝心のところは未だ適わないながらもそれなりに進展しているのだから、こんなことをしたらセフィロスが怒るのじゃないのかと、そんな意を込めてのものだったのだが、皇帝にとってはそれは痛くも痒くもない話だ。
11のいう進展とは風呂に入っただのキスをしただの子供じみたことばかりで、皇帝から言わせればそんなものは特別関心がなくたってできること。
相変わらず何の進展もないことに腹の底から笑いがこみ上げてくる程だ。
そして仮に体の関係があったとしても皇帝の計画になんら問題はない。
それどころか余計にこれから行う行為に盛り上がるを見せてくれるというもの。

「あんな男より、私のほうがお前を楽しませてやれるぞ」

欲求不満なのだろう、と皇帝は11の顎に手をかけた。
動かない体。
それでも思考だけはしっかりしている。
やり方が卑劣だと11は思う。
好きにしたいのなら、操りの輪でもなんでもつけて思考すら支配してしまえばいい。
そうすれば11自身のわからないところで事は済まされ、拒否する心も己が気付くこともなく過ごすことができるのだから。
とても虚しいことだけれど、意識ある中でされるよりはずっとマシだ。
それに欲求不満だとか言ってきたが、それはセフィロスに対して欲情しているだけであって、楽しむ以前の問題で、相手がセフィロスでなければ意味がない。
そう意思を込めた目で11は皇帝を睨みつけた。

「私に刃向かうとは見上げた根性だが」

鼻で笑い、11の顎から手を離す。
11の思考能力を残しておいた理由はここにある。
この、嫌悪を含んで睨みつけてくる眼差し。
拒んで、足掻いて、そこから屈服させていく。
プライドを取り去って、服従させて。
それでもまだ拒むというのなら、それから洗脳したって遅くはないのだ。
支配欲を満たしてくれるならそれでいい。
そこに至るまでの楽しみを今から取り払ってしまう方が余程退屈なものなのだから。

「さぁ、存分に楽しませてもらおう」

そう皇帝は11の体を抱え上げる。
事が済んだ頃にはどんな様子へと変貌を遂げているのか。
まずはセフィロスの元に連れ立って行くのも面白いかもしれない。
関心がなければなにも思うところはないだろうが、少しは何かしらの反応を示すかもしれないのだし。
いやそれよりも彼女と親身にしているジェクトに見せ付けてやるのも悪くはない。
もしかしたらセフィロスよりもジェクトの方が余程愉快な反応をしてくれるのかもしれないが。
そんな思惑を秘めながら皇帝は、身動きもままならない、目で訴えることしかできない11を自室のベットへと降ろした。

-end-

2010/7/5




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