DFFガラケー | ナノ




関心5


「で。最近どーなんだ」
「おかげさまで、おそろしいくらいに充実しています」

先日の格好の、お礼を言っていなかったとジェクトの元に11は訪れていた。
次元城の庭園とでもいえばいいのだろうか。
見晴らしのいい屋外にて心地よい風の中、芝生の上の敷物に広げられたおにぎりをひとつ手に取りジェクトは11に近況を聞いていた。

人のことなど、どうでもいい。
そう思っていたのだが、なぜかこの小娘を見ていると放って置けないというのか無意味な保護欲をそそられるというのか、余計なお世話ながらも確認したくなってしまうのだ。
ジェクトの言うことに文句を言ってくることも多々あるが、何かあればすぐさま報告に現れる。
そんな風に懐かれてしまっては自分の性格上無碍にすることも出来ず、相手をしている内にそんな11にだいぶ感化されてしまったのかもしれないとジェクトは思う。

「そりゃあ良かったじゃねーか」

どおりでここ何日か自分の元へ現れなかったわけだ。
聞けば、先日11が大泣きした時からセフィロスの態度が微妙にだが変化を辿っているという。
殆どの時間を共に過ごしているし、余程機嫌が悪い時を除けば大抵一緒の寝具で眠らせてくれるらしい。
やはりベッドが大きいと寝心地も良いものだし、セフィロスの視線も慣れればどうということはないと嬉しそうだ。
しかし、そこまでされているのなら微妙どころか大層な変化じゃないだろうか。

「うーん。でも、いつもみたいにしつこくしてると刀で脅されるし、鷲掴みにされるし」

やっぱり少しですよ、という。
されている本人がそう感じているのだからそれはそれでいいのだろう。
微妙だの大層だの、そんなことはたいしたことではない。
だが、あのセフィロスが11に袂を許すなど一体どんな心境の変化でもあったのかジェクトにとっては気になるところである。
薄々楽しんでいる感はそれとなく感じ取っていたが、それでもセフィロスのことだから飽きたらすぐに突き放すのだろうと思っていた。
そうなった時にはどうやって11を慰めてやろうかと本気で考えたものだ。
でもそれも杞憂だったようだ。
こうしてうまくいっているようだし、何よりだと思う。
これで11から何やら変な質問などされなくて済む、と清々するような少しばかり寂しいようなそんな気もするが。
お礼にと11が作ってきたおにぎりをひとつ食べ終え、もうひとつに手を伸ばす。

「それで、お聞きしたいんですけど」

そうジェクトに目を向けてきた。
今更聞くも何も、そんなに親密になっているのなら本人に直接聞いたほうが早いのではないだろうかと思いながらも習慣的に11の話に耳を傾ける。

「裸になっても反応ないのは何ででしょう」

そう11が溜息を漏らしてきたが、ジェクトにとっては予想外の問いかけだ。噴出すのを飲み込むことで堪えたせいでおにぎりが喉に詰まって苦しい。
その様子に気が付いた11が、お茶を手渡してきた。ジェクトは受け取りそれを一気に飲み干す。
相変わらず突拍子もないことを聞いてくる小娘だ。
もうそういったことを質問してくることもないだろうと思っていたばかりなのに、油断も何もあったもんじゃねぇ。
そう思いながら、まだ少し胸のあたりに違和感を残しつつも喉の詰まりも取れ落ち着きを取り戻す。

いい年をした男が、女の裸を見ただけでは反応しないことぐらい11でもわかるだろう。
だがこうして聞いてくるということは、それなりな行動を起こしたうえでの結果だったのだろうし、それならいくつか原因も思いあたる。

11ではそういう対象にはなり得ない。
どんなに頑張って関心を引いたところで、対象外なら関係を持つことは不可能だろう。
そうであったらそれを求めている11には酷な話だ。
いやでも、あの日あの寝巻きには興味を示していたはず…たまたまか?

不能である可能性も捨てきれない。
男としては深刻な話だが、それなら11もはっきりと諦めがつきそうだが。

「まぁ、なぁ。アイツもいろいろあるんだろうよ」

結局の所ジェクトはセフィロスではないのだから思惑なんて判るわけもないし、ヘタな返事をしてそれこそこの間のようにとばっちりを喰らうのも勘弁してもらいたいからそう答えるしかない。

「お風呂だって一緒に入ってるのに、ヒドイと思いませんか?」

そう言う11の言葉に、ジェクトは益々セフィロスという男が何を思っているのか判らなくなってきてしまった。
据え膳喰わぬはなんとやらとはよく言うものだが、セフィロスに関してはそんなことは関係ないようだ。
そこまでされて、指の1本も触れていないというのならさすがに女として11が哀れに思えてくる。

「…おまえさんも、なかなか苦労してるんだなぁ」

そう頭を撫でてやる。
11の一方的な好意とはいえども、寝食ともにしているのならお情けでも相手のひとつぐらいしてやってもいいものではないだろうか。
言動はともかく容姿的には整っている方なのだし、なんとかなりそうなものなのだが。
それとも、こんなふうにやきもきしている11を見て楽しんでいるのか。
そうだったらとんだ悪趣味だと思う。
だが以前11は体だけの関係でもいいと言っていた。
セフィロスの気を惹くのは無理と考えてのことだ。
なら体の関係性などそれほど重要なことではないのではないだろうか。こうして充実した日々を送っているのだし、セフィロスの関心は今11に向いている。

「んー。セフィロスさんの興味なんて、私にあるわけないじゃないですか」

単なる暇つぶしなのはわかってます、と11は苦笑を浮かべた。
セフィロスの興味の対象は、あくまで秩序にいるあの男だという。
だからそういう関係だけでもいいからと、相変わらずしつこく求めているのだが思い通りにいかないようだ。

「馬鹿だな」
「そんなの承知ですよ」

そう11は応えてきたがジェクトの言う馬鹿とはセフィロスと11、ふたりを指している。
手にすることのできないモノを執拗に追い求める。
お互い関心の方向性は違うものだが、本質は同じだ。
そんな行動は、ジェクトにしてみたら馬鹿としか言い様がない。
だがまだ11はマシな方なのだろうかとも思う。
11の望み通りのことには程遠いが、傍に居れるだけでも救いはある。

ではセフィロスは。
アイツのやっていることに救いが待ち受けていることはあるのだろうか。
あの男を倒すことができたとして、その後はどうなる。

「…」

考えても仕方がない。深く息を吐く。
混沌の中にいて、救いも何もないのだから。


「あ、セフィロスさんが帰ってきました」

そう言う11の言葉に振返って見てみれば、こちらに向ってくるセフィロスが窺えた。

「んじゃあジェクトさん。お暇しますね」
「あれか。俺はおまえさんの暇つぶしの相手だったわけか」
「そんなことないですよ」

そう言いながらも、食べ終え空になった箱を急いで片付けている。
お礼とは言っていたが、絶対に暇つぶしも兼ねていたに違いない。

「聞いてもらって、ありがとうございました」
「あ?あぁ」

珍しく礼の言葉を述べてきた11に目を瞬かせる。

「私、馬鹿ですけど。馬鹿なりに思うこともありまして」

でも聞いてもらえてスッキリしました、と荷物に手をかける。

「…話ぐれぇならいつでも来いや。それで気が済むならいつでも聞いてやる」

そう返せば満面の笑みで頷き、荷物を持ってセフィロスの元へ駆けて行った。



充実していると言っていたが、本当のところは弱音を吐きに来たのだろう。礼だと、口実をつけて。
強い女だと思う。根を上げないのだから。
だがまだ子供だ。己の息子と同じ。
もう少し11の年が上なら、別の慰め方もあるしあわよくば…とそこまで考えてジェクトは頭を振る。

馬鹿らしい。
傍観すると決めているのだから、余計な考えを起こす必要はないのだ。

髭をなぞり、息を吐く。
11の話を聞いてやるだけでいい。
それでもどうにもならなくなったらその時はその時だ。
願わくば11の想いが実ることが望ましいが。
11の背中を見送りながらそう思い巡らせるジェクトだった。

-end-

2010/3/4




[*prev] [next#]
[表紙へ]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -