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仮構

「11−、探検行こうぜ探検ー」

ひずみの開放もソコソコこなして、日々順調に過ぎて行ってる今日この頃。
日差しも良好な事だし、こんな日は何かいいモノが発見できそうな気がする。
だからさして用もなさそうにうろついていた11に声をかけてみた。
11と言えばお宝だ。
キラキラ光るものには目がないし、おどろおどろしいモノを見つけたところでそれもまたある意味目を輝かす。
そんな11だから、お互いこれといった用もなく、都合が合う時は行動を共にしていた。
だから今日も当然の如くに一緒に行くと思ってたんだけど。

「あぁ、ごめんねバッツ。今日は行けないの」

そんな言葉を返されてしまったのだから、一瞬目を瞬いてしまった。
それから11の姿を頭の先からつま先まで凝視する。
自分のそんな視線に何やら居た堪れなさそうな仕草を見せる11だけど、そんなことは気にしない。
だって、探検だぞ。
探検といえばお宝だ。
お宝と言えば11の大好物で。
暇そうにしていたにも関わらずに即答で断ってきたということは体調でも悪いのかと思ったけれどそうでもなさそうだ。
いつもと変わらない長閑そうな雰囲気に、顔色だって健康そのもの。
でも、もしかしたら実は熱があるとか…なんて疑ってみたりして、11の額に自分の額を当ててみる。

「バッツってばどうしたの。熱なんてないよ」

そうクスクス笑う11の言うとおり、熱はない。
じゃあ一体どうしたって言うんだろうかとそのまま頭を捻っていると後ろから誰かに肩を引かれた。
瞬時に11との距離が離れるのだけども、こんなことをするのはここにはひとりしかいないわけで。

「アンタはまた何をやっているんだ」
「何って、見てのとおり熱測ってただけだよ」

いつものように眉間に皺を寄せてひどく不機嫌そうに声をかけてきたのはスコールだ。
事あるごとにこうして11に絡む自分を警戒してくるんだけれど、毎度毎度ご苦労なことだと思う。
いくら頑張ったところで11は自分のものなのだし、心変わりだってさせないようこれでも一応努力はしている。
ベタベタし過ぎず、かといって離れすぎてしまわないような距離を保って、それでいて11を飽きさせないように。
だからどんなに構うことを阻止しようとしてきたって無駄な労力にしか過ぎないってのに……て、わざわざ忠告なんてしないけどな。
なぜなら、面白いから。
ジタンには性質悪いなんて言われたりもするけれど、でもまぁ、人生何でも楽しんだ方がいろいろとお得だったりするだろ。
だからスコールの可愛い嫉妬具合も充分に楽しむ素材として使用させてもらっているってことで。

「11、体調悪いのか?」

自分への態度とは打って変わって心配そうに見やってくるスコールに11は苦笑を漏らして、全然平気だと応えている。

「大丈夫だから、行こうか」

と続けた11の言葉に、今日一緒に探検できないのはスコールとの約束があったらしいことを知った。
…まぁ、11だし。
スコールの11に対する想いなんかはその鈍感ぶりでさっぱり気づいていないが故のものというか、何かとスコールの面倒を見てしまうのは彼女らしいといえばらしい。
そういえば前に弟が出来たみたいで面白いとか言ってたよな。
大層小難しそうな弟だよなぁとふたりで笑ったりもしてみたけれどー……って、おいおい、なんだその手。
繋がれているスコールと11の手。
今まで警戒はしてきていたけれども、これといった手出しは一切してこなかったスコールの意外な行動に目が釘付けになる。
するとそれに気が付いたのか11がその手を掲げてきた。

「手がどうかした?」
「ん?いや、珍しいなと思って。スコールが11と手を繋ぐなんてさ」

普段なら絶対に見せない行動だ。
いや、普段ならってこともないのか。
機を狙い、定めて、いよいよ11奪取作戦にでも取り掛かったのだろうかと半ば感心しながら思っていると11が小首を傾げてきた。

「何言ってんのー。いつものことじゃない」

バッツの方こそ熱でもあるの、と心配される始末なんだけども、何だこれ。
え?いつものことってなんだ?
いやいや、俺は今初めて見たんだぞこの光景。
今まではどんなに11に近づこうとも指の一本すら触れてこなかったスコールまでもが、頭大丈夫かと自分を心配してきている。
うん、頭は大丈夫だ。
大丈夫じゃないのはこの光景であって、何時の間に手を繋ぐほどふたりの仲が進展してしまっていたのかと頭を捻る。
そんな隙はなかったはずだ。
ふたりきりにするなんてことはそうそうなかったことだし、あったとしても微々たる時間でそんな短時間にスコールにあれやこれや11を振り向かせるような芸当なんてできるはずはない。
可能性があるとしたら、11の心変わりってことだけれども……ならそれって、あれだろ。
浮気ってやつ。
しかも隠すことなく、こんなに堂々と。
でもまぁ、11だし、ちょっと呆けているトコもあるからきっと事の重大性に気が付いていないのかもしれないよな。
ならここは自分が彼氏としてしっかり諭すところだろう。

「11、浮気は良くないぞ」

自分というものがありながらスコールに気を移すのは良くはない。
こういったことにも順序ってものがあって、まず前彼としっかり別れてからそういったお付き合いをするものだ。

「どうしよう、スコール。バッツが何かまともなこと喋ってる」
「11、突っ込むべきところはそこじゃない」

自分の紡ぐ言葉に各々反応を見せて来るんだけど。

「本当に大丈夫か?バッツ。浮気がどうとか言っているが……」
「あぁ、そうそう。浮気って、何?スコール、浮気してるの?」
「どこにそんな相手と時間があるのか教えてもらいたいところだな」

即答するスコールに笑みを向けている11の顔は、いつもなら自分に向けられていたものだ。
そして言葉こそ突き放すような言い方だけどスコールの雰囲気は何やら柔らかいもので、このふたりの醸し出すものは恋人同士が放つ特有のものっていうか。

「……あー、もしかして付き合ってんのか?スコールと11」
「もしかしても何も…バッツだって喜んでくれたじゃない」

ほんの数日前にスコールが11に告白をして、お付き合いを始めたのだと事細かに説明してくれた。
話す11の目が何やら心配そうな視線で、スコールにいたってはもはや憐みの目を向けて来ているんだけど、自分にそんなことを話されたところでさっぱり何も覚えていないんだけど。
っていうか、そもそも11は自分と付き合っているのだし、だからやっぱり浮気だろ、とういうことを二人に告げるとまたしてもふたりに頭の具合を心配されてしまった。
いや、だって、昨日だってあんなに仲良く布団を共にしたじゃないか。
もうやめてー、って最後の方は少し泣かせちゃったけど……うん、カワイかったなー11。

「バッツ。妄想も大概にしろ」
「妄想なんかじゃないさ。ホントの事言ってるだけ」

一体何がどうなって自分との関係性が失われてしまっているのかは知らないけれど、真実を曲げることなんてできるわけがない。
ほらほら、と繋がるふたりの手を離す。
それからスコールから離れた11の手を取り、今度は自分が繋いでやる。
スコールは怪訝そうにこっちを見やって来るけれど、11は自分の成されるがままだ。
まぁ、基本的に11はそういうところがあるよな。
常に受け身っていうか、そもそも仲自体はスコールよりも元々自分の方が良いのだし、過多なスキンシップだってあんまり嫌がらない。
ただ今はどうやらスコールに意識が向いてしまっているようだけど。

「スコール。おまえ、11の事どれくらい知ってる?」

お宝大好き…は皆が知ってることだ。
でも、ピカピカ光っていれば良いってもんじゃない。
今にも呪われそうなモノも、砂粒ほどのほんの小さなものでも、11にとってはお宝なんだ。
そのモノに刻まれた歴史を調べる。
それが11の仕事。

「だったよな?11の思い出したことって」
「へ?あ、うん…でも、どうして……」

これを告白してくれたのはつい最近だ。
でもまだまだ未熟者で恥ずかしいから皆にはしばらく内緒だと、それでも自分には一番に教えてくれた。

「それから、余裕そうに見えて実は余裕なかったり」

この間の手合せは <本気> と題して対戦したけれど、あれ、実のところ自分は割と余裕だった。
11が火薬持ってるのは知ってたことだし、<本気> というのならば使ってくるだろうなとも思ってたし。
案の定実際に使って来たけど、仕掛けた火薬の場所は自分からしたらバレバレで。
ああやって動き回りながら仕込むのならもっと余裕持った方が効果は絶大だと思う。

「胸、無さそうに見えてホントに小っちゃかったり」

こういったのって大抵あれだろ。
脱いだら意外とあったとかが定番だと思うんだけど、ホント見た目に違わず小さくて、あ、でも柔らかさは自分好みだからバッチリ問題ないんだけどな、って笑顔で告げたら殴られた。
意外とパンチ力有りと、今身を持って知った。

「で、結構うっかり者だったり」
「あ!バッツ!」

11が取り返そうと手を伸ばすけれども、そんな早さじゃ奪い返せるはずもなく、手にした火薬をスコール目掛けて投げつける。
途端に響いた爆音とともに砂塵が舞った。
いきなりの出来事に当然スコールは身構えることなんて出来ず、砂塵に姿を飲み込まれている。
自分はその隙にとんずらだ。
スコールが卑怯だとかなんとか叫んでいるけれど、そんなことは知った事じゃない。
こういうのは先手必勝。
11がスコールと本当に付き合っているというのなら、それを奪ってしまえばいいだけだ。
たかだか数日の関係性。
微々たるものを覆すことなんて容易いこと。
圧倒されている11を抱えて一目散に駆け出す。
しばらく11を抱えたまま走り続けて、あの噴煙が収まる頃には姿が見えないであろう場所まで辿り着く。
そしてそこに11を降ろして。

「奪取成功!」

とひとり満悦に手を掲げると11が困ったような笑みを向けてきた。

「奪取って…バッツ。私、お宝なんかじゃないよ」

奪い取ったところで何の役にも立たないよ、と11は言うけれど。

「俺にとっては大事なお宝だっつーの」

それをバカにするのは本人といえども許せない。
この異界に来てから他の誰よりもずっと長く過ごしてきた大事な仲間。
それだけでも充分に大切な存在だというのに、更に掛けがえのない関係になったんだ。
それをスコールなんかにどうこうされる筋合いはない。
11は自分のもので、自分は11だけのもの。
だったはずなのに、どういったわけかそれは無いものと化してしまっている。
でも、それならまた、もとに戻せばいいだけだ。

「好きだよ、11」

日頃あんまりそんな言葉を告げるなんてことはしないけれど、でも好きだということは事実だし。
大好きでいつでも11のことは大事に思っているし、からかいたいと思っているし、泣かせたいと思っている。

「えぇと、ありがとう、でいいのかな。なんか最後の方が怪しい気もするんだけど…」

若干引き気味に 「私の事、好きってことだよね?」 と11が尋ねてきたから満面の笑みでもって頷き返す。

「でも、私スコールと」
「本当にスコールの事、好き?」

打って変って真面目な面立ちで問いかける。
そうすれば自然と11の目は自分に釘付けになるわけだ。
勝手知ったるなんとやら、真面目な自分に弱い属性はとうの昔に把握済み。
それをここで活かさなければ男が廃る…なんて大層な事でもないだろうけど、一応本気だ。

「お宝に夢中になる11も、余裕の無い11もカワイイし、胸の大きさだって気にしてないからな」

そう告げれば11が顔を赤らめた。
それが告白に対してのものなのか、羞恥によるものなのかは……一目瞭然だ。
なぜなら本日二回目のパンチが顔に食い込んでいるからだ。
くそぅ、なかなかいい拳をしてやがる……なんて感心している場合じゃない。
11の返事は……。
未だヒリヒリと痛む感触に目を薄らと開けていく。
すると、そこはスコールからとんずらした平野ではなく。
目に映るのは見慣れたテント生地と、その手前に覗く11の顔。

「バーッツっ…て、あ、起きた?」

おはようと挨拶をする11を視界に留める。
それから手を伸ばして、柔らかな頬っぺたを抓れば11が痛がった。

「……んぁ……、あれ、夢か……」

安堵に息を漏らして11の頬から手を離すと、11から抗議の声が漏れてきた。
ドスドスと腹部を圧迫しているのは、11が腹に馬乗りになっているから。
ちょっと苦しいけれど、あの夢の中の苛立ちに比べたら苦ではないし、どちらかといえば嬉しい重みだ。

「バッツってば、珍しくなかなか起きないんだもの。そりゃあ馬乗りくらいするよ」

と11が言うのだけど、どうやら抓られた頬の原因は馬乗りにあるのだと思っているらしい。
まぁ、夢の中で何があったかなんて11が知るはずもないからな。
そして何度かパンチも食らわしてみたけれどそれでも起きなく、やっと起きてくれたと告げる11は正直者とういうか、やっぱりうっかり者というか。
おかげで夢だと知った今、いやにリアルだったあのパンチ具合の原因も知ることが出来た。

「それにしたって馬乗りはないだろー」

ヒドイよなぁ、なんて言いながら身を起こして。
そうすると自然と11との距離は近くなる。
近くなったついでに軽く口付て、後はそのまま押し倒して。

「んじゃ、次は俺が11に乗る番な」

朝っぱらから焦る11も可愛いもんだと愛でながら、相変わらずな詰めの甘さに口も綻ぶ。
でも、11が悪いんだからな。
夢の中とはいえ、自分をあそこまで困惑させたんだから。
さて。
あんな夢を見させてくれた責任でもとってもらおうか。

-end-

2012/8/22 ナギサ様リク




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