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無用心


「バッツさんバッツさん」
「ん〜?」
「そろそろイイ」
「ダメ」

即答で返す。


11を抱え込んだまま、早数分。
あれから宣言したように、そりゃあもう堂々と人目も構わず遠慮なくスキンシップをとらせて貰っている。
最初の方は皆、事あるごとに注意してきたけど(主にスコール)慣れとは恐ろしいもので、今となってはそれが当たり前のことのように風景の一部と化している。
お陰で今日一緒に来ていたジタンは「あんま見せつけんなよなぁ」なんて、苦笑を浮かべつつも空気を読んで先に行ってくれたりして。


「あ、私今日当番」
「一昨日、したばっかりだろ」
「…」

どうにかこの状況から逃れようと考えているみたいだけど、そのあたりならしっかりチェック済だ。
目的の素材は手に入ったし、今日のところはもう、急ぐ用事はこれといって無い。

だから、少しくらい甘えさせてもらうことにした。


「なぁ11」
「はいはい」

名前を呼べば、返事をする。
当たり前のことだけど、知っている。
ふたりきりになるとこうやって平然を装いつつ、結構動揺していることを。
余裕そうに見せて、実は余裕でなかったり。
その隙に付け込むことは容易いことだけど、それじゃあ面白くもなんとも無いから、少しばかり焦ってもらうことにした。

うん。
11の焦る顔とか、困ってる顔とか、見るのが堪らなく好きだ。
構い甲斐があるというか。

そぉっと項に唇を押し当ててみる。

「うぅわぁっ、ちょっと!変なことしないでよ!」

そう言いながら、掻き毟るように首に手を当てる11。

「変なことって、ヒドイなぁ」

その手を退けて、もう一度唇を這わせてみるとそれから逃れるべく体を起こそうと身を捩りはじめた。
逃がすものかと、腹部に回している腕に力を込める。
だいたい、前々から思っていたけど、11は少し無用心すぎるんだ。
楽しんでいるうちは一緒になって騒いでみたり、お宝探しのゲームなんかに乗ってきたり、告白する以前よりスキンシップに対して寛容だったり。
そのノリのいいところも惚れた要因だけど、女の子としてそれはどうかと思うことも多々あったわけで。
もう少し警戒心ってものを持ったほうがいいと思うけど、俺になんか言われたくも無いか。
放っておけないというかなんというか。

そんなことを頭に、さり気なく片手を胸に押し当てる。
おぉ、柔らかい。

「バッツ!」

もういい加減にして、と勢いよく立ち上がる11。
あらら、怒らせてしまった。
まぁ、怒った顔もいいかもしれない。

「怒った?」
「当たり前でしょっ。だいたいやっていいことと悪いことってのがあって…」
「じゃあ、何ならいいの?」

そう聞けば、言葉を詰まらせる。
困った顔も捨てがたい。
あ、溜息ついてるし。
溜息つきたいのはこっちだっていうの。
皆の前で無邪気を装って戯れているけれど、あれがどれだけ我慢しているか。


立ち上がり、11に近づく。

「11、いい匂い」

ほら、こうやってこんな言葉をかけてみれば頬を染め上げたりして。
そんな態度が余計に俺を煽っているなんて、想像すらついてないんだろ。

11の手を取って指を絡めると、眉間に皺を寄せて俯く。
スキンシップに対しては動揺を隠そうと出来るのに、対直接的な仕草には隠せない。
ということは、一応男としては意識されてるわけだ。
じゃあもう少し踏み込ませてもらおうか。

「抱いていい?」
「…は?」

…呆れた顔を向けられた。
うわぁ、訝しげな表情してるし。
それはちょっと…なんて、かなり引いてる様子だ。
話が飛躍しすぎたかもしれない。

気を取り直して。

「キスしたい」

愛情表現の一種だ。
ひとまず想いを満たすのには最適な方法だと思う。

「…うん、まぁそのくらいなら」
「じゃあいただきます」
「いただきますって、な」

11の苦情の言葉を遮って、口付ける。
触れるだけなんかじゃ、もちろん物足りない。
唇の隙間をぬって、奥深くへと舌を這わせる。
さっき触れた胸の感触とはまた異なる柔らかさ。
熱く絡めとって、何度も確度を変えながら味あわせてもらう。
どんな顔をしているのか見ていたいから、薄く目を開いたままで。
目元しか確認できないけど、震える瞼が愛らしい。
こんな柔順なカンジもいつもと違う雰囲気で好みかも。


ちゅっ、とワザと音を立てて唇を開放する。
一瞬ぼやっと見つめてきたけど、咄嗟に口に手を当てて「…信じらんない」って上目遣いに睨んできた11。

どうやら、初っ端から舌を入れられたことに対しての不満らしい。
まったく、まだまだ無用心だ。
そんな紅潮した顔で睨まれたって、余計煽るだけだって。
あぁもう、可愛いやつ。

「発情、しちゃった」

なんて戯言みたいに言いながら11の腰を引き寄せると、更に焦りを見せる。
そうそう、その顔。
やっぱり、堪らないなぁ。
いつか11がSっ気でもあるんじゃないかって言ってたけど、案外そうかもしれない、なんて心の中で思ってみたり。


今日はキスだけでやめておこうと思ってたけど、予定変更だ。
本格的に甘えさせてもらうことにする。

だって、そんな顔をされたら我慢できるわけないじゃないか。

-end-

2009/9/23 あずさ様リク




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