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閑話


失敗した。
敵に背後を捕られたティーダを庇うべく剣で受け止めたまでは良かったが、まんまと不意打ちを食らってしまった。
脇腹に傷を負ったが、体制を整えたティーダの援護もあって無事に勝利はした。
この辺りの敵のレベルが異様に高いのかこんな傷を負ってしまうなんて、少し戦術を見直す必要があるかもしれない。


早々に宿営場へと戻り、とりあえず手当ては済んだ。
ティーダが足りない処置具を取りに行ってくれたが…。

「フリオさ〜ん」

お邪魔しますよ〜、と呑気な声と共にテント内に11が入ってくる。
手には薬箱。

「戻ってきたら、なんかティーダが泣きそうな顔してるんですもん」

心配させたらダメですよ〜、と11。
お前に言われたくない。

「ティーダはどうした?」
「オロオロしてたので、交代で来ました」

と、薬箱を掲げる。
ティーダのことだ。
傷の原因が自分にあると落ち込んでいるんだろう。

そんなことはないと言い聞かせはしたが、また後でもう一度よく言っておかなければ。
戦いに身を置く者ならば、どんな状況であっても傷を負うのは自己責任だ。
この傷だって、自分の未熟さのせいに過ぎない。


箱を床に置き、中身を漁り始める11。
クラウドにポーションを勧められたが、断ってきたという。

「だって命に支障ないでしょ?痛むでしょーけど、ガマンですよ〜」

相変わらず気の抜ける声音だが、以前自分が話したことをしっかり覚えていたようだ。

生きている実感。
それが肉体的にしろ、精神的なものにしろ、痛みがあるからこそ次への糧となるんだ。


漸く包帯を見つけ出した11が、目の前に腰を降ろす。
身を屈め、傷に目を向けてきた。

「うわぁ、結構斬れちゃってますね」

眉間に皺を寄せ、顔を見上げてくる11。
嫌そうに顔を歪めているが、これでも心配してくれているのだろう。


腹部へと腕を回し、包帯を巻きつけていくが、どうにも不器用らしく重なりが歪だ。
それでも11にしては珍しく一生懸命な様子だし、せっかく介抱してくれているのだから、ここは細かいことは言わずに黙って任せておくことにする。
後で自分で、こっそり直せばいいだけだ。


ふと11の手が止まった。

「…傷だらけ」

ポツリと一言漏らし、古い傷跡に指を這わせてくる。

「まぁ…いろいろあるさ」


この世界で負ったもの。
自分の世界で負ったもの。
致命的なものもあったが、それだって自分の生きてきた、戦ってきた証だ。


「いつも、暗がりでしか見てないので気がつきませんでした」
と11。

止めていた手の動きを再開する。
言われてみれば、そうかもしれない。
彼女に素肌を見せる機会といったら…、…そういう時しかない。
そういう時は大抵暗がりだし。

「…明るい方がいいのか?」
「なっ、何言ってるんですかフリオさん!」

慌てた様子で背中を叩かれた。
直接触れられた訳ではないが、負ったばかりの傷に響き、軽く唸り声が漏れる。

「そういう意味じゃなくてですね」

包帯を巻き終え、こちらを見上げてくる。

「こんな私ですけどね、いろいろ思うことがあるわけですよ」

うまく言えないんですけど、と首を傾げる。
言ってくれればそれに越したことはないのだが、素直に口に出せない彼女の性格は知っている。

「大丈夫だ。無理はしない」

そう告げ、11の頭を撫でてやる。
その言葉に満足したのか立ち上がる11。

「良かった。じゃぁ、しばらくはお預けですね」

と満面の笑み。
最近寝不足気味で〜、と欠伸をしながら体を伸ばしている。

「え、おい、11っ」

お体、ゆっくり休めてくださいね〜、とテントを去っていく11。


ひとり残された自分。
傷ついた体に無理は禁物。
わかっている。
わかってはいるけれど。

あんな満面の笑みで言われてしまったら…。

膝を抱え、そっとため息を吐くフリオニールだった。

-end-

2009/8/27




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