DFFガラケー | ナノ




探しモノ


「スコール。11見なかったか?」

手に入れた素材を確認している途中、クラウドからそう声を掛けられた。
11の使っている召喚石を借りようと探しているのだが姿が見つからないという。
今日は確か、ジタンと行動を共にしていたはず。
ならばジタンに尋ねれば居所がわかるんじゃないのだろうか。
そうクラウドに伝えているところに、丁度ジタンが通りかかった。

「11か? ティナとテントに入っていったのは見たけど」

そう教えてくれたジタンにクラウドは首を振って見せた。
テントにはもう足を運んできたのだという。
ティナに聞いたら、いつの間にかテントから居なくなっていたからわからないと言われてとりあえずここに来てみたらしい。
とりあえず、とはまた根拠のない。

ほんの偶にだが、こうして11が不意に姿を消してしまうことがある。
見つけるたびに、注意をしているし11もしっかり聞いているのだが、どうもどこか抜けているのかこうしてまた居所不明になってしまう。
だからなるべく注視してはいるのだが。
それにしたって、自分のところに来て尋ねるよりも、普段よく彼女を構っているバッツやティーダ辺りに聞いた方が11の行動パターンも読めるだろうに。
そんなことを思っていると、側に居るジタンがなにやらニヤニヤとした顔を向けてきた。

「珍しいよなー、スコールが11から目を離してるなんてさ」

そう言うジタンの言葉を受けてクラウドが苦笑を零してくる。

もしかして何か誤解をしていないか。
確かに自分は11をよく見ている。
しかしそれは11が日頃からフラフラとしているせいであって、例えて言うなら言葉は悪いが監視しているといったところか。
これだけ個性溢れる面々が数揃えている中、いちいち気にしていても仕方がないとは思うが、それでも多人数で行動している以上その輪を乱す行為は褒められたものじゃない。

だからだ。
他意はない。

それを言ったところで、この様子のふたりが素直にそれを受け入れてくれるとも思えないから言わないが。
そんなことよりも、居ないのなら探さなければならない。
いつもの如く、宿営地としている聖域から出ていることはないだろう。
ある程度の広さはあるとはいえ、探せばすぐ見つかるはずだ。
そう告げれば、用事のあるクラウドは当然として、ジタンも他にやることもないから一緒に探すと出掛けていった。

地面に散らばる素材を小袋に集め、立ち上がる。
見つけたら、もう一度念を押して注意しなければならない。
その場を後にして、自分も11探しへと向う。


茂みの中を歩き難いながらも進んで行く。
テントを張っている場所は更地になっていて、こうした鬱蒼とした木々が生い茂っているわけではない。
しかし、その場から離れれば途端に自然溢れる景色ばかりだ。
人が歩けるような道も所々あるにはあるが、なぜか姿を眩ました11を見つけるのは、いつもこうした視界の悪い場所だ。

それにしても一体何が11をそんな行動に駆り立てているのか。
戦いを終えて戻ってくれば、体力の回復も必要だ。
散策したいのなら、誰かしらに一言告げていくべきだと思うし、行くなら行くでもっと足場のいいところに居てもらいたい。
ぬかるむ地面に足元を捕られないように慎重に歩みを進めていく。


「スコール?」

頭上から声がした。
声のした方を見上げると、傍らにある小高い岩の頂上から11が顔を覗かせていた。
なんでこんなところにいるのかと不思議そうに首を傾げている。
首を傾げたいのはこっちだ。

「そんなところで何をしている」
「スコール、ここ登れるー?」

聞いていることの応えになっていない。
それに11が登れたこの岩場を、自分が登れないわけがないだろう。
岩の出っ張りに手を掛けてよじ登る。
上から応援の言葉が注がれてきたが、登るのに集中したいというのに勘弁して欲しい。
とはいっても、思っていたよりも高いものでもなく割とすんなりと登りきれることができた。

到達した頂上にて一息つくなり目に飛び込んできたのは、今にも落ちそうな勢いで岩場の端から身を乗り出している11の姿。
咄嗟に11を引っ張り戻す。
宿営地であるこの区域では、戦域と違って一切の力は発揮できないのだから万が一落ちてしまったら、それ相応のダメージを食らうはめになってしまう。
まったく心臓に悪い。
当の11はといえば、目を丸くしてこっちを見上げてきた。
疑問符が浮かんでるような顔をしているが、おそらくなぜ引っ張り戻されたのか理解できていないのだろう。
百歩譲ったとして、いや勝手に居なくなることもアレだが、頼むからもう少し危機管理能力を身に付けて欲しい。
あぁ、思い出した。
皆と合流後、初めて11が行方不明になった時のことを。

そのうち戻るだろうと、楽観的に考え放って置いたが、暗くなっても姿は見えず大慌てで皆で探し回った。
あの時も11を見つけたのは自分だ。
草原に寝転んで、皆の心配もよそに呑気に眠っていたのを発見した。
見つかったのだからそれで良しと思いきや、そこは丁度聖域と戦域の境目。
戦域の方へ無防備に投げ出されている11の脚を掴もうと手を伸ばしているイミテーションに気付いて急いで助け出したことがあった。

あれ以来、どうも放って置けなくて何かと目を離さないようにしている。
自分らしくないとは思うし何も自分がそう有る必要はないのだが、気になるというのか。
不意に先刻のジタンの顔が頭を過った。

(…それは、ない)

浮かんだ思考を振り払おうと、頭を振る。

ありえない。
こんな意味不明な女子に興味を持つことなど。
それこそジタンがそういう目で11を見ているから、こっちもそうなんじゃないのかという錯覚を起こしているんじゃないのか。
ジタンに限ったわけではない。
他にも何名かよく11を構っている。
彼らが全て11に対して邪な気持ちを抱いていると思わないが、物好きな奴らだとは思っている。
11も11で、何を考えているのか解かり難い性質をしているから、それが余計にアイツらの興味を惹いているのかもしれない。

だいたい人を心配させるようなことを仕出かす11に問題があるんじゃないのか。
だから気になって気になって仕方がない…。


「スコール、重いよー」

11の声に我に返る。
黙考に集中していたせいか、腕に収まる11に凭れ掛かっていたようだ。
丁度いい具合に収まっている。
抱え心地が良いというのか。抱え心地…。

「…わっ、悪かったっ」

慌てて身を離す。
離れた途端に体が熱くなってきた。鼓動が早い。なんだこれは。
11が不思議そうな面立ちでこっちの様子を窺ってくるが、見るな。

自分でもわかる。
明らかに挙動不審だ。
そして挙動不審になってしまう原因も、なんとなくだが判りかけている。

11に見破られないようにと必死に背を向けていると、背後から11の気配が去っていくの感じた。
まさかと思い、すぐさま振返れば案の定、再び身を乗り出そうとしている。
今度は11の腕を掴んでそれを阻止した。
またしても首を傾げてこっちを見やってくる。

「あ…。危ないだろう。落ちたらただでは済まない」

ポーションで回復可能とはいえ、痛いものは痛いのだから。
そう言えば、やっと合点が入ったのか素直に謝ってきた。
そして名残惜しそうに、顔を少し上の方へ向ける。
11の視線の先には、花。
隣接する木に生茂る葉に入り混じって所々に姿を覗かせている。
どうやら、あれが欲しいらしい。
自分の身長なら、身を乗り出すこともなく手が届きそうだ。

それにしても、この岩場に登らなければこの花の存在には気がつくことはないのだから、花が目的だったとは考え難い。
一体何が目的でこんなところに居たのか。
いや、聞くだけ無駄だろう。
いつもの如く、”なんとなく” と返されるのは目に見えている。
そういう奴だ、11は。


説教しなければならないのは帰り道にでもと後回しにして、ひとまず木から花をひとつだけ手に入れて11へ渡してやる。
すると嬉しそうな笑顔で礼を述べてきた。
花で喜ぶなんて、取ろうとしていた手段の無謀さはともかく、なかなか女子らしい一面も持っている。
普段ぼんやりと反応が少ない分、こうした笑顔を見れる機会は貴重だ。

11から目が離せない理由。
実際の所、そんな彼女の笑顔が見たいだけなのかもしれない。

-end-

2010/2/18 ウェレアさまリク




[*prev] [next#]
[表紙へ]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -