”化” 小話
5/?〜7/5
※DdFF ”化” の小話。
夢主不在。
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「つーか、あれだな。あの嬢ちゃんの趣味にはついていけねーってかよ」
先ほど見つけた少々大きさのあるカエル。
あの少女は何が気に入ったのかそのカエルをこの宿営地へと連れ帰ってきた。
それを甘んじて許可してしまったのは紛れもなく一緒に行動していたジェクト自身なのだが、やはり見ていて気持ちのいいものではない。
それに加え、いくらライトニングに肌身離さず持ち歩けと言われたとはいえあんな…身に収めるだなんて。
これはさすがの大男ジェクトもついて行けない嗜好だ。
せめて、雨蛙ほどのものであれば多少は可愛げがあるというものだが。
「フリオニール」
ふと、カインが義士の名を呼んだ。
そういやすっかり姿を見かけていないとは思っていたが、大方ひとりを満喫していたのだろう。
ようやく帰ってきたのかと辺りを見回す。
だが、姿は見えない。
カインを見やれば、思い出したのだと声を漏らした。
「カエルに変化するという魔法があった」
自分の世界には、とカインが言う。
そんなカインの言葉にジェクトは首を傾げる。
仮にカインの言うとおりにカエルになれるという魔法があったとしよう。
だから、どうだってんだ?
何かとてつもなく強力になるとかそんななのか。
だったら大いに結構なこったが……。
「いや。能力は下がる」
「下がるのかよ……」
ならば尚の事。
そんな魔法に何の意味があるというのだろうか。
カエル状態の姿に落ち込むという精神的屈辱は味わうことができるかもしれないが、そんなことは勘弁してもらいたい。
「敵には有効だな。相手を弱体化させることができるのだから」
「おぉう。…なるほどなぁ……で、まぁ、詰まる所あのカエルがフリオニールだって言いたいのか?」
ひとまずそんなくだらない魔法の存在はいいとして。
頷くカインに、何を根拠としてフリオニールがあのカエルだというのかジェクトは増々頭を捻る。
カエルはカエルだ。
それ以上でも以下でもない。
そんなジェクトにカインは言う。
あまり見かける大きさではないということ。
やたらと人馴れしているということ。
やけに訴えかけるような鳴き声を漏らしてたと言う事。
「それに往々にして、生き物というものは臆病なものだろう」
なのにそれが感じられない。
そして未だに姿の見えないフリオニールに、思い出された自分の記憶。
疑う余地は十分にある。
そう紡ぐカインになるほどジェクトは微妙ながらもその可能性を考える。
では、あのカエルがフリオニールだとして元の姿に戻る方法は。
「”乙女のキッス”というアイテムがあってだな」
「は?”乙女のキッス”?」
何とも羞恥を煽るネーミングだろうか。
いや、夢見る童話好きな少女という限定付なら夢見心地な響きに感じるものだろうが…生憎ジェクト自身男なうえに年も年だ。
口にするのすら微妙といったところなのだが。
「この異界にも”乙女のキッス”があるのかはわからないが、とりあえず探してみるほかない」
「お、おう…なら、協力するがよ……」
生真面目に”乙女のキッス”を連呼するカインにも微妙な思いを感じながらジェクトは”乙女のキッス”なるアイテムを探しに行くのだった。
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