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”休息の日” ”信頼” 小話

5月1〜6月3日分




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1.※短話 ”休息の日” セシル小話。


彼女が戻ってきてから数十分後。
自分用のテントを準備し終えて、一息吐けたところでふたりの様子を窺いにウォーリアのテントの前に立つ。
幕を少しだけ開けてそっと中を覗いてみたら、なぜかウォーリアが起き上がっていた。
こちらに気がついたウォーリアに手招きをされて中へと入る。

「彼女、寝ちゃったみたいだね」

そう苦笑を零しながらウォーリアの膝元に頭を寄せている彼女に目を向ける。
規則正しいテンポで揺れる背中に、熟睡している様子がよく分かる。
朝から予想だにしなかったことばかりで余程疲れているのだろう。
生成にしたって、あちらこちらに飛びまわって魔力を使うのだからそれなりに体力は消耗するのだろうし。

「これでは、彼女も体調を崩してしまうのではないだろうか」

そう困ったような顔をこちらに向けてくるウォーリアの表情が、それは今までに見たことのないほど戸惑いを含んでいるもので、少しだけおかしくなってしまう。
風邪を心配するくらいなら貴方のその寝具に入れてあげればいいじゃないか、なんてわざわざ言わないけれど。
ふたりの繋がれた手に視線を注ぐ。

「…あぁ。これは、彼女が繋ぎたいと」
「安心したのかな。貴方と触れ合えて」

別に手を握るくらいいいんじゃない。
そう応えて、彼女の体に手を掛ける。

「冷えると悪いし、彼女のテントまで連れて行くよ」
「すまない。頼む」
「どういたしまして」

繋がれた手を、ゆっくりと、丁寧に解くウォーリアの仕草が、労りとも慈愛ともとれる優しさに溢れて見えてなんだか微笑ましい。
そんなに愛おしく想っているのなら、さっさと告げてしまえばいいのにと思うけど。
でもこんな初々しいふたりをもう少しだけ傍観しているのも悪くはない。







2.※短話 ”信頼” バッツ&ジタン小話。


「おっそい!!」

バッツとジタンの顔を見るなり彼らに文句をつける。
いや、八つ当たりなのは判ってるんだけども。
普段怒鳴るなんてことないから、ふたりが顔を見合わせて首を傾げている。

「どうした?なんかあったのか?」

ジタンが心配そうにこちらを窺ってくる。

「遅いっつーかさ、ほらほらお土産お土産」

バッツがなにやらアクセサリを手渡してきた。
あぁ、これって以前自分が欲しがってたヤツじゃないか。
もしかして、これを手に入れるために帰りが遅くなったのだろうか。
そうだったとしたら、自分勝手に文句を叫んでしまったことは謝ってしまわないと。

「…ごめん。怒鳴ったりして」
「いやまぁ、遅くなったのは事実だしなぁ」
「そうそうあれだよ。おまえが声荒げたのにびっくりしただけでさ」

そうこちらを宥めるようにポンポンと頭に手を乗っけてきた。
あぁ、心が広いんだなふたりとも。
意味もわからず、いきなりスコールにあんなことされて混乱していた自分にとってその優しさが余計に心に染みるよ。
ふたりを心配してたのは確かだし、でも信頼してやれってスコールに言われたから落ち着いて迎えようと思ってたのに。
情けないけどそれほど自分に余裕がなくなっていた証だ。

「怒りたい時は怒ればいーし。我慢しすぎは良くないよな」
「…うん」
「そのかわり、楽しむ時にはパーっと楽しもうぜ!」

そう手を掲げるふたりに思わず笑みが零れる。

「ありがと」

直面したばかりの問題は直には解決できないかもしれないけれど、今はふたりの言葉をありがたく受け入れておこうと思う。




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