”油断” ”篭る” 小話
4月6〜4月30日分
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1.※ティーダ短 ”油断”その後
「なんか、楽しそうだな」
妙にニコニコと機嫌のいいティーダに声をかける。
確かさっき彼女にまた怒られていた気がするんだが、とうとうそっちの方面にでも目覚めてしまったのだろうか。
せっかく、健康的な明るさを持った男だというのに一体どういう付き合い方をしているのか少し不安が過る。
「いや〜、楽しいっていうか、嬉しいっていうか、なんて言えばいいんっスかね!」
なんだか照れくさそうに頭を掻いているティーダをじっと見る。
一見、普段と変わりはない。
しかしなにか違和感を感じる。
その違和感を見つけるために観察すること数秒。
「…。…あぁ」
そういうことかとひとり納得する。
ティーダの顔に見つけた異変。
いつもより唇が赤いということは、つまりそういうことだ。
それくらいでこんなにも陽気になれるなんて、まだまだ初々しい少年なんだと思う。
そんなことを思いながらティーダの顔を眺めていると視線に気がついたティーダが不思議そうに首を傾げてきた。
「なんか付いてるっスか?」
「…いや」
唇の異変に気が付いてない辺り、無知というのか純粋というのか。
人それぞれとはいえ、彼女も一言教えてやってもいいだろうに。
まぁ、見ていて面白いから飽きないけど。
「あいつと上手くいってるみたいだな」
そう言えば、それを肯定するように嬉しそうな笑顔を見せてきた。
やはりよく懐いているものだと犬を連想しながらも、この先このふたりが穏やかに過ごせていけたならそれはそれでいいんじゃないのかと思う。
◇
2.※クラウド短 ”篭る”小話
「スコール。どっちが早く終わらせられるか勝負しよーぜ!」
「くだらない」
そう一言漏らして、この階の地図を片手に調査に入っていってしまった。
つまらない。
これがジタンやティーダだったらノリノリで乗ってくるのに。
まったく真面目なヤツだよなー、なんて思いながらスコールの後についていく。
坦々と壁を調べては地図に印を付けていく。
まぁまぁ的確に物事を進めていくもんだなぁ、なんて感心しながら手元の地図を覗き込んでみたら阻止された。
「邪魔だ」
「なんだよそれー」
ブーブー文句を言っているこっちを無視してまた作業に戻ってしまった。
やっぱノリ悪いヤツ。
そんなことを言いながらもスコールの後ろを歩いていると、不意に振返ってきた。
物凄く眉間に皺を寄せている。
かなり機嫌が悪いらしい。
やばい。調子こきすぎた?俺。
「勝負するんだろう」
「へ?」
「このままじゃ、俺の一方的な勝ちになるな」
そう言って、また黙々と辺りを調べ始めた。
なんだ。
結構やる気じゃないか。
よっしゃ、じゃあこっちも本気でやらせて貰おうじゃないか。
上の階層の地図を握り締めて宣戦布告する。
「これに勝ったら、スコール、くすぐりの刑な!」
その宣言を受けてスコールが少し動きを早めた気もするけど、出だし遅くても自分が負ける気がしないのは楽しみが出来たからだろう。
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