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”堪え” 小話

2月2〜3月1日分
※短 ”堪え” 設定スコール2本。




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1.


目の前に掲げられたスプーン。
これがバッツ相手だったとしたら見るに耐えなく笑い転げることは必須だ。
だからなんとしてでもそれを阻止すべく彼女を頼るしかない。
それに早々に片付けてしまわなければ、彼女の分が冷めてしまう。

それにしても、”食べさせてもらう” というこの行為が堪らなく恥ずかしく感じるのは自分だけだろうか。
彼女の様子を窺ってみても、至って普通だ。
だからこれは特別羞恥を煽る行為ではないらしい。
やはり、自分の感覚がおかしいだけなのか。
だがそれを素直に受け入れてしまうのも躊躇われる。
かくなる上は…。

「うわっ、なにっ?」

スプーンを持つ、彼女の手事掴み取る。
そして、そのまま口に運んで食べてしまえばどうということは、…ない…。
と考えたのだが、少し恥ずかしい。
しかし、こうして食べ始めた手前今更止めるわけにもいかない。
彼女のもう片方の手に持つ皿に目を向ける。
食べ始めたばかりなのだから、そんな急に減っていることもなく。
あと何回この羞恥に耐えなければいけないのか。







2.


彼女の口にスプーンを掲げる。
一瞬戸惑いの顔を覗かせたが、

「バッツにでも頼むか」 

と聞いてみたら素直に食べ始めた。
この間なんかジタンと彼女でバッツを引き合いに出してきたと言うのに、自分が当事者となると遠慮したい所のようだ。
黙々とスプーンを運ぶ。

彼女にしては珍しく話し掛けてくることもなく大人しく食事を受けている。
喉の動く様子を見て、次へとスプーンを動かしているのだが…。

次第に目が向いてしまう彼女の唇。
食べさせているのだから目に付くのは当然だ。
しかし、そこから少しばかり覗く口内。
食事を運ぶ際に僅かに見えるモノ。

(…柔らかそうだな)

そんな考えが頭を巡る。

「どうしたの、スコール」

彼女の呼びかけに、思わず止まっていた手を慌てて動かし始める。
そして再び目が行ってしまうのは彼女の唇。
皿を確認すれば、順調に食べ進めていただけにあと残り僅かだ。
こんな間近で見れる機会なんてそうそう無い。
スプーンを掲げる動きを止めないよう気を付けながら、もう少ししっかり観察しておこうと思う。




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