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”肝試し” 小話

10月分
※短の ”肝試し” の小話。
夢主不在。



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1.クラウド


クラウドは内心焦っていた。
わざわざ暗黒騎士にまでチェンジして、臨場感たっぷりに語ったセシル。
年長者として、怯える姿を晒すわけにもいかないと思い、なるべく平然を装っていたのだが。
怖い話など平気だと、高を括り過ぎていたかもしれない。
こうして一番手に出発したのも、恐怖心を紛らわすためだ。
まだ僅かに残っているであろうイミテーション。
それらを倒しつつ進めば、余計なことを考えずに済む。
そう考え、大剣を引きずりながら廊下を進む。
クラウド自身の足音のみが、暗い廊下に響き渡る。
異様な静けさ。
いつもならなんてことはないのに、今ばかりは不気味に思う。
不意に敵の気配が背後から近づくのを感じた。
剣を構えて瞬時に振り向くも、そこには何も居ない。

(気のせい、か)

不安な思考が寄せた幻覚か。
しかし、気は抜けない。
手に剣を構えつつ、足を進める。
すると、またしてもイミテーションの気配。
振り返りながら大剣を一閃させるも、またしても何も無い。

(…確かに、見えたはずなんだが)

辺りを窺うも、静まりかえった廊下が長く続くだけだ。
次第に焦りが昂ぶってくる。
曲がり角に差し掛かったところで再び気配を察知した。

「逃がすか!」

今度こそ、と角に入り込むと同時に剣を3度振り下ろす。
過度の緊張のせいで、余計な力が篭りすぎたかもしれない。
壁面を抉り取るような痕跡を残してしまった。
しかし、そこにはイミテーションの残骸はなく…。

”実態でもあれば、なんとかなりそうだよね”

セシルの言葉が脳裏に過る。
それに反応するかのように、滲み出す額の汗。

(…出口はもうすぐだ)

汗を拭いながら、出口へと向うクラウドだった。







2.ティーダ


(男は度胸、男は度胸…)

そんなことを頭の中で反芻しながら進むティーダ。

”肝試し!”

などと言い出したのは自分だし、セシルの提案に意気揚揚と乗ったのも自分だ。
ただ、少しだけ後悔している。
なぜなら思ったよりも怖かったからだ。
言い出した手前、やっぱり皆で行こう、なんて情けないことも言えず。
脇に構えたボールに力が篭る。
先行くクラウドのお陰か、イミテーションに遭遇することもなく、ひたすら恐怖心と戦いながら足を進める。
ふと、背後よりヒタヒタとした足音が近づいてきた。
数分開けての出発なのだから、後発者が追いつくにはまだ早いはず。
早い、…はずだ。
いやそれでも、もしかしたら皆怖いから早めに出たのかもしれないし!
それにしたって声くらいは掛けてくるだろうし、と思い巡らせる。
そんな考えに次第に高まる鼓動に足を速める。

(男は度胸…度胸っスよ…!)

そう、頭の中で自分を励ましながらも、後ろを振り返ることなく更に足を速める。
すると背後の足音もティーダに合わせるかのように速まる。
いっそのこと思い切って振り返ろうかとも思ったが、そこに”実態のないナニか”が居たらと思うとそれも叶わず、益々鼓動が早くなる。
恐怖で振り返ることができないのなら、いっそのこと。

(逃げるっスよ!)

決心を固め、半泣きになりながらダッシュで出口に向うティーダだった。





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