My favorite,thinking of you――B
「じゃあさ、外見ではどこが好きなんだ?」
再びヴァンが聞いてくる。
よく“相手の体のどの部位が好きか”って質問があるじゃん。
ヴァンの意見に他の男たちが頷く。
「あー、女の子って手とか背中が好きってよく聞くよなぁ」
「男は背中で語れってか?」
ラグナの肯定にジェクトが、俺はよく言われたぜ、と自慢げに語る。
「で、11は?」
ジェクトのモテ話を悪気なしにスルーして、改めてヴァンが尋ねた。
「た、確かにカインの背中は広くて好きだけど……」
恥ずかしげに11が答える。頬を染めて指をもじもじさせる姿は愛らしく、カインでなくとも胸キュンだ。現にライトニングとユウナは揃ってときめいていた。
仲間たちはうんうんと肯首して先を促す。
「背中よりも好きなトコあるのね?」
「う、うん……」
ティファの指摘に11は照れながらも、はっきりと告白した。
曰く、
「う……ん、挙げるとしたら、しっぽだな!」
「しっぽ……」
暫し間が空く。
「え、あいつシッポあるのか?」
ヴァンだけが無邪気に返す。その他のメンバーは一瞬彼女が何を言っているのか理解できずにいた。
「あ、ジタンみたいな本当のしっぽじゃなくて、あのひらひら!」
「ひら、ヒラ……」
あーあれか。
一同は一様にカインの鎧姿(通常時)を思い浮かべ、次にその腰部から流れるように付いているモノを思い浮かべて漸く納得した。考えてみればあの部分をなんと呼べばいいのかと聞かたら「分からない」のは確かだし、だったら“しっぽ”と呼ぶのが一番しっくりくるかもしれない。
が。
「あれがほんとに竜のしっぽみたいで、カッコいい!!」
最初の恥じらいはどこへ行ったのか、自信満々に言い切る11の表情は輝いている。心なしか興奮しているように見えるのは気のせいだろうか。
「どうりでカインを遠目から見ているときの視線が下寄りだと思ったわ……」
ティファが搾り出すように呟く。
あれはしっぽ(11談)を見ていたのか。彼氏を目で追う姿がいじらしいと思っていただけに、真相は残酷だった。
「11さんは竜が好きなの?」
ユウナが口を開く。
「うん大好きだ! バハムートカッコいい!」
いつも一緒にいられるユウナが羨ましいよ、と誰も使用する予定がない時にしかバハムートの召還石を持たない11が肩を竦める。そういえばこの間、普通のとオートのと、どちらにしようか迷っていたなと、目撃者ジェクトは語る。
「そういえば皆のいた世界には竜はいたのか?」
「竜……竜ねぇ……モンスターにはいたような気はするけど……」
全員が全員、長くこの世界に留まっていたわけではない。永く参戦してきたジェクトやユウナはかなり元の世界の事を思い出していたし、逆に最近召喚されたティファはほとんど忘れてしまっていた。
「竜かー。俺の世界にはいたような……そう……確か“ブルブルドラゴン”っていったか?」
「なんか弱そうな名前だなオイ」
「いつも震えてるのかそいつ?」
ジェクトとヴァンが立て続けに返す。
もしこの場にスコールがいて、尚且つ彼が記憶を取り戻していれば、心の中で訂正しただろう。
正しくは“ルブルムドラゴンだ”と。
――五分後。
「特にジャンプしたときなんか、本当に竜が滑降するように見えて、すっごくカッコいい んだぞ!!」
さすが竜騎士だよな!
「……」
「ルミナスシーカーと聖竜騎士になった姿も素敵なんだけど、やっぱり一番はノーマルだ!」
あのしっぽが!
「……」
11の力説は続いていた。が、如何せん誉める部位が部位なだけに、その場にいた仲間はリアクションの選択に困っていた。
だってしっぽ。カインそのものではなくカインの鎧に付いているいわばオプションのよう
なものに、どうしろというのか。最早『彼氏の体のどこが好き?』ではなく『彼氏の装備 のなにが好き?』談義だ。そして熱弁を止められる者はいなかった。
ここで万が一水を差すような発言をして、11を傷つけでもしたら。幾人かが己の末路を想像し背筋を冷やす。槍の突き刺さった惨殺死体になるのは御免だ。
「例えばウォーリアがカインの格好しても、あんなに素敵には見えない。あれはカインが
装備してこそのものなんだ!」
ああやっとカイン本人を(微妙だが)評価した、と思ったら
「昔、竜に乗ってる人を一度だけ見たことがあるんだ。友達があれは竜騎士だって教えて くれて、私その時初めて竜騎士を目撃したんだ。カッコ良かったなぁ」
頬を染めながら当時の記憶を語る11。そういえばその人にもしっぽついてた! とい らんことまで思い出す。
11それはカインには言わない方がいい。きっと妬くかヘコむ。多分後者の確率が高い。
「11はきっとその時から竜騎士が好きだったんだね……」
誰ともなく零した言葉はその場全員の総意でもあった。
それでも、「というか竜騎士の“しっぽ”が好きなんだね」という確信的且つ核心的な発言は自重した。kyなヴァンですら慎んだ。口にしたら最後、これから先竜騎士を見る目が生暖かいものになってしまう。
11はカインが好きなのか、単に「竜騎士」というカテゴリが好きなだけなのか、仲間たちは敢えて結論を出さなかった。
只ここで判明したのは、11がかなりの“竜マニア”だという事実。
ある意味お似合いの二人である。
◇◆◇
「11は竜騎士を見たことがあるのかぁ」
後日、その話を又聞きしたセシルはまずそう思った。
「ん……?」
そして数瞬遅れで違和感に気づく。
「まさか、ね……?……」
その違和感はひとつの可能性をはらみ、また、もしそれが実現するなら二人にとってこれ 以上ない幸福となるであろう。
End.
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そしてまたまたふたつもいただきましたよ!
贅沢者ですね私vv
ヴァンはどうしてもカインに対する夢主さんの熱い想いを聞きたい模様です(笑
そして私はジェクトの恋愛観に興味深々です。かっこいいよジェクトv
竜騎士萌えの夢主さんに萌えv
恋する乙女はどんなにクールでも可愛らしくなってしまうものですねv
そんな気持ち、大事にしたいものですv
ユリス様、素敵なお話ありがとうございました!
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