そして心が掴まれた
息苦しさに、堪らず咳き込む。
地に膝を着き、たちまち口から溢れ出る赤い体液。
「もう、お終い?」
人間ってホントに脆いモノよねぇ、と女が近づいてくる。
手には杖。
その身ひとつに汚れはない。
手も足も出ないとは、まさしくこういう状態のことをいうのだろう。
「なんで存在してるのか、わからないわ」
そう冷たい眼差しで見下ろしてくる女の顔を、思い切り睨みつける。
「アンタは、本当に化け物だな」
「達者なお口をしているのね」
薄く笑みを浮かべたと同時に頭に衝撃が走った。
「あら。汚れちゃったじゃない」
血に汚れたローブの裾を鬱陶しそうに翻す。
「さぁ。すぐに楽にしてあげるわね」
詠唱が始まった。
止めの一撃になるだろう。
虹彩に煽られ、女の姿が鮮やかに浮かび上がる。
敵わない。敵うわけがない。
女のこの華麗なる術の前に何度自分は跪いた事か。
だから、最初からこうなることはわかっていたんだ。
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