そして恋が鐘を鳴らした
心地よい風が吹きすさぶ。
こんな日は、貴重なお宝が手に入りそうな予感がするんだ。
意気揚揚と駆け巡り、次元を移動したその先に、いつものあいつが佇んでいた。
行く先々で、尽く人の獲物をかっぱらって行くカオスに属している者。
どうにも身軽で、なかなか捕えることが適わない好敵手だ。
「あは。お先しちゃった」
そう、お宝片手におどけて見せるあいつにがっくりと肩を落としてみせる。
「それ、スッゲー欲しかったんだよなー」
「あら、それはそれは」
そんなに欲しかったのか、と愉快そうに尋ねてくるあいつの隙を瞬時に付いて、一息にその手に掴むお宝を奪い去る。
呆気にとられた後に、さっきとは打って変わった悔しそうな顔。
うーん、堪らない。
形勢逆転、っていったところかな。
「バッツのくせに!」
なんて追いかけてくるけれど、あれ、これって結構楽しくないか?
いつもは追っかけてる方だったけど、これはこれで…。
やっばい。
クセになりそう。
[表紙へ]