other ガラケー | ナノ




明日、あの人に渡せますように


落し物を拾った。
なんの変哲もない布切れだけど。
普段ならこんなものなんて拾わない。
でも拾ってしまったのは、この布が見覚えのあるモノだったから。

ちょっと歩いて、もう一枚。
その先にももう一枚。
何度かこんなふうに布を見つけては拾い集めて行く。

この布切れたちは、フリオニールのバンダナだったものだ。
変わった柄だなと思っていたから、よく覚えている。
おそらく戦闘の際にでも引っ掛かって、バラバラになってしまったのだろう。

ということは。
今、彼の頭に纏わり着いているものは何もないということだ。
寛いでいる時には鎧はもちろんバンダナも外しているから、別に見慣れない姿ってわけでもないんだけれど。

「おーい」

そう近寄ってきた男の姿に目を瞠る。

「俺のバンダナ見なかったか?」

確かこの辺だった気がするんだが、と辺りを見渡す仕草なんて当然ながら見慣れたフリオーニールの仕草で。

「ん?どうした?」

あまりにも彼を見やっていたせいか、不思議そうにこちらを窺ってきた。
いや、だって。

「あ、頭…」
「あぁコレか?戦闘中は何か巻いてないと落ち着かないからな。とりあえずの代わりなんだが」

おかしいか?と照れくさそうに頭に手をやる彼に首を振り返す。
彼の頭に巻かれているものはバンダナだ。
でも、いつもと違う布地に加え、巻き方まで変わっている。
…予想外すぎるでしょうコレは。

ゴメン。
見た目で判断するのは良くないってわかってはいるけれど。
とってもとっても、この彼がとても自分好みなのは恥ずかしすぎて口が裂けても言えない。
挙動不審に陥っている自分に彼が大丈夫かと顔を覗き込んでくるけれど、やめて、その様相でそれは反則!

大事な仲間である彼のために、不器用ながらも繕って渡そうと思っていた拾い集めた布地たち。
早々に渡していつものフリオニールに戻ってもらわないとこちらの心臓が危いのは確かだ。

だから今夜は徹夜してでも補修して、明日、すぐにでも彼に渡せますように!



[表紙へ]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -