明日、あの人と話せますように
(あぁあ、どうしようか…でも…)
目の前に居る人はウォーリア・オブ・ライト。
常に隙がなく、振るう剣先に揺るぎはない。
秩序の戦士たる自分たちを先頭に立って引っ張っていってくれる頼もしい存在だ。
そんな彼はカッコよくて、大人で、眩しくて。
自分にとって憧れともいえる人物で、憧れすぎて普段こちらから話し掛けるなんて畏れ多いこと、と勝手に思ってたりしてたのだけど。
その彼が今自分の目の前で眠っている。
木に身を寄りかからせて、自分が近づいても気配に気がついた様子なんて微塵もなく。
彼のこんな無防備な姿なんて想像もつかなかったのだから思いがけずに直面してしまって動揺している自分がいる。
…それからほんの少しの好奇心。
彼が自分たちと同じく血の流れる人間なのだと、そんなような感じを確かめたかったのだと思う。
だって、彼はあまりにも感情を露にしないから。
組んでいる腕に手を伸ばして、そっと手を触れてみる。
温かい。
当たり前だけれど。
でもその温かさがなんだか自分をホッとさせた。
そして安堵したのも束の間に、瞬時に心臓が凍りつく。
手首を捕られ、開かれた彼の目と目が合ってしまった。
冷たく突き刺さるような視線に身体が硬直してしまう。
でもそれも一瞬のもので、すぐに腕の力は緩められた。
それから溜息をひとつ零して、再び彼の目は閉じられる。
「…君か……」
とポツリと一言、その後に聞こえてきた安らかな寝息。
緩められた力に、掴まれた手首の手は難なく解くことが出来た。
それなのに一連のあっという間の出来事に、高まった自分の動悸は治まるところをしらない。
でも。
(結構、目で語るタイプ?)
溜息の後に垣間見せた優しい眼差し。
憧れ、その次に湧き出てきた彼への興味。
もっと彼を知りたい。
そうしたらきっと、もっと、いろんな表情の変化が感じられるはず。
だから、明日は彼と話せますように。
そんな勇気をどうか私に。
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