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一輪硝子の想い


ジリジリジリッ!!!!


「…ぅ…んっ…」


ガタンッ!!


手探りでやかましい音を奏でる目覚まし時計に一撃を加えその音に終止符を打ってやった


「…朝、か」



カーテンから微かに差し込む朝日を頼りに起き上がる

カレンダーの日付を確認する
今日は愛しいあの子と約束の日…

覚醒しきれないこの頭を抱えカーテンを開ければ光が溢れる

眩い光に瞳を細め遠くを眺め…今日と言う日を迎える


「支度…しないとな」


未だに睡眠を欲する体を引きずって洗面所へ

本日の睡眠時間はたったの三時間

洗面台の鏡にはやや疲れ気味の顔

目の下にクマができているような…

とりあえず眠気を誤魔化すように洗顔する

大丈夫…大丈夫…。

今度は心の中でそう唱えながら歯ブラシに歯磨き粉を付けて銜える

我ながら何が大丈夫なのだろうか?

…眠気が覚めて少しはマシになった顔が鏡に映る


「はぁ…」


瞼を閉じて寝ようとしても

脳裏に焼きつく君の笑顔が眩しくて

昨日の夜は一人、悶々とベットの中で苦しんでいた

いや、昨日だけじゃないな…ココ最近拍車が掛かって睡眠不足に悩まされる日々が続く
原因はもちろん、11


人に相談したらバカバカしいとか

男の癖に女々しいとか言われるかもしれない

けれど…俺にとっては深刻な問題なんだ


いつからだろうか?

こんなにも彼女に強く惹かれるようになったのは…

もう忘れてしまった

『セシルとティーダが紹介したい子?』

『あぁ、フリオニールに紹介したい子がいるんだ(微笑)』

『しょーかいするッス!友達の11ッス!』

『初めまして!11です!よろしくね!』

『あぁ、よろしくな!俺はフリオニールだ』




君と出逢った頃から

君が気になり始めた頃から




『フリオニール!』

『ん?なんだ、11か』

『なんだって…なんかそれ酷くない?』

『酷くない、酷くない。で?なにか用事か?』

『特にはないけど…』

『ないけど?』

『姿が見えたからナンパして声掛けただけ!(笑)』

『ナンパって…まったく、暇な奴だな(苦笑)ほら、さっさとしないと次の授業に遅れるぞ?』

『あっ、待ってよー!!フリオニール!』




君に何度も名を呼ばれるようになった頃から

君のかけがえのない友達になった頃から

俺の日々は輝き出した

『今日の放課後はゲーセン巡りに行くッスよー!!(≧▽≦)』

『おー!(^▽^)/』

『セシル、ノリがいいね〜(笑)フリオニールも行くでしょ?』

『お前も行くだろう?』

『うん』

『なら、決まりだな』




君に会えない日は虚しく想うようになった頃から

君なしの日々が考えられなくなった頃から




『今日は11、居ないッスねー…』

『なんでも風邪引いたらしいよ?』

『そう…か』

『フリオ、気になるッスか?』

『えっ!?』

『ふふふ、顔に出ているよフリオニール(微笑)』

『セシルまでっ…俺は別に』

『変な意地貼ると後で後悔するッスよー…。』

『意地なんかっ…』

『じゃぁこう考えてみたらどうかな?フリオニール』

『セシル?』

『例えば…11がもし君の目の前から居なくなってしまったら君はどうする?』

『居なくなってしまったら…まずはとにかく彼女を探すな』

『探す?』

『なんの根拠もなく消えたのなら…見つかるまで自分が納得するまで探すさ。その前に彼女が消えないように最大限の最善の方法をできるかぎり試して、最後まで抵抗するだろうな』

『なるほど…フリオニールらしいね』

『もぉー…フリオ、それって完璧に…』




あぁ、そうさ

いつの頃からだなんて俺は覚えていないけど

俺は11が好だ

この気持ちはもう自分を欺けない

だから今日を迎えたんだ

身なりを整えてもう一度…いや何度も姿鏡の前で確認する

彼女が好きだと言ってくれたスーツのスタイルで

彼女から誕生日に贈られた香水を身に纏った

なんとも言えぬ香りが部屋にも溢れる

付け過ぎた…かもしれないと思いつつ腕時計を見る

時間を確認して彼女への贈り物を持って部屋を出る

そして玄関で真新しい靴を出して扉に鍵を掛ける

これで忘れ物はない…後は自分次第だ

期待と不安の中、俺は11との待ち合わせの場所に到着した

待ち合わせの時間に30分早く着いた…あぁ緊張するっ!!

彼女を待ちながら頭の中で色々シュミレーションをする

どこで何をして

どうやって彼女を楽しませられるかとか

彼女が望む事はなるべく応えられるようにしようとか


「フリオニール!」

「11」




そうしてると彼女は現れた…

好きだから伝わらない

こんなもどかしい想いは切な過ぎる

だから…素直に言うよ

言い慣れてないけれど

今なら言えるよ

“君のために”




「11」

「フリオニール!今日は…なんだかカッコイイね」

「たまにはこういう格好も悪くないだろう?」

「うん!スーツ、カッコイイよ♪」

「だろ?そういうお前も…似合ってるな」

「へへっ♪今日はちょっぴ背伸びしてメイクもばっちり♪」

「いいんじゃないか?そういうの…普段と違って新鮮だし…」

「新鮮だし?」

「…だ」

「およ?」

「普段と違って可愛いんじゃなくて綺麗だと、思う…///」

「…そっか、ありがとう♪」

「あぁ…///」

「じゃぁ…デート始めますか?」

「あぁ、それじゃ改めて…デートするか?」

「はいはーい!デートします!」

「軽いノリだな…まるで遠足に出かける子供じゃないか(笑)」

「それぐらい楽しみにしてたってコトだよ!ほら!ちゃんとエスコートして?」

「はいはい…お手をどうぞ、お嬢様」

「褒めて遣わす!(ニヤニヤ)」

「まったく偉そうなお嬢様で(苦笑)」


差し伸べた手のひらに笑顔で手を重ねる君

これがデートの始まりの合図

今日は楽しくなりそうだ

「今日はどこに連れてってくれるの?」

「着いてみたらのお楽しみだ」

「期待しちゃうよ?」

「期待してくれ、きっとお前も気に入るはずだから」

「おぉ!それは楽しみ♪」


君の好みはリサーチ済み

君と俺の好みも最高の相性

だから俺の好きなあの場所も君は気に入ってくれるはず…

その場所はあんまりメジャーじゃないけれど

俺にとってはとても心安らぐ場所であり


「どうしてもお前に見せたかったんだ…」

「わぁ…!!」


そこは様々な花々が一年中咲き乱れる花園

元より人気のあるスポットでもないせいか

俺たち二人以外の客はほとんど見当たらない

故に自然と貸切状態だった


「きれーいっ!!すごい!すごいっ!!」


無邪気な笑顔浮かべて庭園を掛けて行く君につられて俺も笑みを浮かべていた

春が芽吹くこの季節は春を先取りして様々な彩り鮮やかな花々が園を飾る

独特な形と様々な色のチューリップ

一つの穂に無数の華を咲かすヒヤシンス

純白の花弁を持つマーガレット

色淡く赤く魅力的なアネモネ

鈴を揺らすように風に靡く鈴蘭


「まだ3月なのに…もうこんなに咲いてるのね」

「あぁ…どれも綺麗だな」

「うん、ねぇ…薔薇は?」

「薔薇…か?」

「そう!フリオ、好きでしょう?」

「あぁ…好きだよ(微笑)」

「そ、そっか…私も、好きだよ…薔薇がね///」

「……?」


なんとなく自分の好みを答えた

気のせいか彼女の顔が…赤い

あぁ、勝機が見えた気がする

自信持ってもいいんだよな?

なぁ…11

「3月だと薔薇はまだやっと芽を付けたぐらいにしか育っていないんだ」

「へぇ〜、そうなんだ…なんか残念、だね」

「あぁ、本当は6月頃が一番見ごろな華だから」

「そっか…」

「でも華じゃなくてもいいなら…」

「え?」

「華じゃなくてもいいならここにある」


俺が取り出したのは綺麗にリボンでラッピングされた長方形の箱

11は驚いてそれどうしたの?と聞いてきた

笑顔で俺は答えた


「季節の華じゃないからこそ…こういう事に使えるから便利なんだよなぁ」

「え?どういうコト…?」


?マークを頭の上にたくさん浮かべる彼女

当たり前だよな

今、そのクエスチョンを取り去ってあげるから

この想いと共に君へこの華を送るよ

「一目惚れだったんだ…」

「フリオニール…?」


シュルッ


静かにリボンを解いて長方形の箱を開け11に魅せた


「わぁ…!」

「一目見た瞬間からもう決めてたんだ」

「綺麗…これガラスでしょう?」

「あぁ、硝子細工の薔薇だ」


箱に眠っていたのは硝子細工の薔薇

本物のように花弁は赤の色彩を纏い

その一輪はクリスタルのような輝きを持っていた


「高かったでしょう?」

「まぁ…そこそこに、な(苦笑)」

「一目惚れだったんでしょう?」

「あぁ、アンティークショップで見つけたんだ…一目惚れだったよ」

「そうだったんだ…それにしも綺麗…」

「お前に贈りたいんだ」

「えっ…いいの?」

「あぁ…でも…」

「でも?」

「もし俺の気持ちに応えてくれるならば…この薔薇を受け取って欲しい」

「フリオニール…?」

「さっきから言ってただろ、一目惚れだったって…///」


硝子細工の花びらが陽光に照らされキラキラ色を帯びて輝く


「う…そ…///」

「ここまで来て嘘だなんて、そこまで俺は演技派じゃないっ///」

「え…あ…ご、ごめんっ///」

「あ、いや…その…///」


うわぁ、まずい彼女の態度を見ていたら

俺まで妙にドキドキしてきた

ちゃんと…言えるか不安になってきた


「わ、私…///」

「11、付き合う前提で結婚してくれっ!!///」

「…へっ!?///」


俺、今…なんて言った?




【付き合う前提で結婚してくれ】




ちょっと待ってくれ!!

俺の言語、盛大におかしくないか!?

あ…うわあああああああああああああああっ///




「ぷっ…クスクスクスクスッ…(微笑)」

「あ、いや!!今のは盛大な日本語の間違いででででっ…///(半泣き&パニック)」


11は可愛らしい声で笑いを殺しきれていないようで

俺はもう泣きそうだし軽いパニック状態だ

情けない…もう一回、やり直せるなら時を遡りたい

ダメだ、まともに彼女の顔を見れない


「フリオニール」

「な、なんだ…っ///」

「こっち向いて」

「…っ///」

「じゃぁ…いいよ」

「えっ…?」


死にたいくらい恥ずかしくてそっぽ向いてると

ふいに彼女の手が伸びて来て…手の中が軽くなった


「フリオニール、私でよければ付き合う前提で…結婚してあげる」


彼女は両手で硝子細工の薔薇を持って悪戯に微笑でいた


「…い、いいのか?///」

「いいよ、まさか付き合う前提で結婚だとは思わなかったけどね(ニヤニヤ)」

「だ、だからそれは間違いだって!!///」

「じゃぁ、付き合うけどお嫁には貰ってくれないの?」


唇を硝子の花弁に押し当てるように、そう囁くそうに11が呟いた


「…貰う///」

「ありがとう、フリオニール(微笑)」

「…11っ///」



その後、真っ赤な顔を隠す照れ隠しに彼女の体をぎゅっと抱き締めた

苦しいとか潰れちゃうとか言っていたけど、体温の限界を超えた俺には届いていなかったようで

その後も曖昧な記憶しか残っていなくて

覚えているのは情けない告白と優しい返事をくれた君の微笑ばかり

あぁ…11

君を想う熱に眩暈さえ覚えた


-次の日-



「あれ〜?今日はフリオまだ来てないッスか?」

「なんか熱だして家でうなされてるみたいよ(苦笑)」

「マジッスか!?」

「でも、それにしも今日の11…なんだか機嫌がいいね」

「あ、セシル!あのね実は…ごにょごにょ」

「ふーん…そういうワケか(笑)」

「俺にも教えてくれッスよぉー!」

「ティーダ、ごにょごにょ…」

「Σえぇーーっ!!11とフリオが結婚ッスか!?」

「ちょ、ティーダ!声大きいよ!」

「ご、ごめっ…(汗)」

「それにしてもかなり話が…吹っ飛んでるね(微笑)」

「あはは、セシルもティーダも式には来てね(笑)」

「すげー…フリオニール、やるッスねぇ!」

「まさかフリオニールがそんな積極的だったなんて…」

「当の本人は今頃家で熱に苦しんでいる頃だと思うけどね…(苦笑)」



【一輪硝子の想い】



(付き合う、結婚、付き合う、結婚…うぅ…11っ///)




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<単純?矛盾?相思相愛?>さまの、20,000hit記念夢!
フリーだったので、頂いてきましたvv
やっぱり、こういう胸キュン好きだー!
肝心なところで言い間違えるフリオがフリオらしくて可愛いvvv



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