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告白



「11こっちこっち」

目の前を先行くティーダに手招きされて、後をついて行く。


ティーダに告白らしきものをされて以来、言いたかったことを言えて満足したのか、今まで程頻繁に纏わり付いてくることはなくなった。
こちらはといえば、未だ確たる返事をしていない。
以前クラウドが漏らした 「飼主と犬みたいだな」 の言葉のせいもあるのだと思う。

無茶をしようとすれば注意するのは当たり前だ。
ティーダもすぐにそれを正してくれる。
確か、そんなやりとりを見ての言葉だった気がする。
だからティーダの想いを受け入れたとしても、回りにそんな目で見られてしまうかもしれないと思うと少しばかり躊躇してしまう。
自分がもっと女性らしく、穏やかな姿勢で応じることができるのならいいのだろうけど、もって生まれたこの性分は今更変える事など簡単にはできない。

ティーダの後姿に目を向ける。
誰かが落ち込んでいれば、その理由を聞くでもなく持ち前の明るさで励ませるのはティーダのいいところだ。
敵との戦闘も、仲間の苦戦している状況を読んでさり気なく援護に入ってきたりするし、あれでいて結構考えて行動している。
その割には突拍子も無く無茶な行為に出たりするのだから、その度に苦言を漏らすことになるのだが。
お陰で、こうも悩むはめとなっている。
せめて注意しなくても済むくらいに落ち着いてくれれば。
そうなれば、ティーダの想いも素直に受け入れられる気がする。
彼の無邪気さは苦手だけど、好かれている事は嬉しいし、彼の人となりに好意は持っているのだから。


「疲れたっスか?」

不意に足を止めてこちらを窺ってきた。
こうやって、こちらを気遣える優しさがあるところにも好感を持てる。

「いや。今日はそんなに動いていないから大丈夫だ」

この辺りのイミテーション群もあらかた片付いている。
素材も急いで欲しいものは無い。
今日はウォーリアとセシルが見回りに行くと言っていたし、たまにはゆっくり休むのもいいかもしれないとティナと寛いでいたのだ。
そこにティーダに誘われて、こうしてついて来ている。

そういえば、なぜ呼ばれたのか聞いていない。
あんまりにも目を輝かせて誘われたものだから、思わずふたつ返事でついて来てしまった。
一応、武器は持ってきているが完全装備ではない。
それについて何も言わないということは、戦いに向っているのではないのだろう。
コロシアムとは真逆の方向なのだし。

「えーと、もうそろそろ着くから」

そう、明るい声をかけてきた。


道を進むにつれ、次第に開けてくる視界。
鬱蒼とした木々がまばらになる頃に、耳に付き始める音。

「ほら。ここっスよ!」

と、小走りに向うティーダの後ろから歩いて行けば、そこには雄大豪壮な景色が待ち受けていた。
荘厳たる滝の姿が目に映る。

「…すごいな」

この世界で、こんな景色が覗けようとは。

気高く聳えた崖から落下する水流。
岩肌に打ち付けられた水が飛沫となって、肌を僅かに潤してくる。

「だろ?これ見せたくってさ」

11あんまり宿営地とか散策しないから知らないだろうなって、とティーダが笑顔を見せてきた。
確かに、自分はあまり出歩かない。
散策するくらいなら次に備えて体を休めたいと思っていたりする。
こちらの動向をよく知っているものだと感心してしまう。

しかし、この素晴らしい景色。
こうした心洗われるような景色を眺めるのもいいものだ。

「癒されるな」
「うん。癒しは大事っス」

体の疲れは休めば幾らでも取れるけど中身ってなかなか取れないでしょ、とティーダ。
言われてみればティーダの言うことも尤もかもしれない。
体ばかり休めていた所で、心にある蟠りはなかなか取れないものだ。

「11、あんまムズカシク考えすぎっていうか」

そう苦笑を向けてきた。

「オレは気にしてないっスよ。ホントは自分でも注意してればいいんだけど。思いついたらつい動いちゃうからさ」
「気付いてたのか?」

こちらが何に悩んでいたのか。

「んー、なんとなくだけどね。でも怒るの11だけじゃないし、怒ってる11も好きっスよ、オレ」
「そ、そうか」
「だからもっとレベル上げて、11が頼れるような男になるから!」

だからこの前の告白、前向きに考えてくれると嬉しい、と告げてきた。

あくまで頭を悩ましているのは、クラウドの言った ”飼主と犬” に対してであって前向きもなにも、もうすでに気持ちは傾いているのだが。
そこまでは気付いていないようだ。

しかし、この景色を眺めていると、そんなことは小さな悩みだったのだと思わされる。
ティーダが自分に向けてくれている真っ直ぐな愛情。
それを受けとめるのに何を躊躇っているのか。

「今でも充分、頼りにしているよティーダ」

そう言えば、キョトンとした表情を覗かせてきた。

「え、それって…」
「私はこんなだし、今更この性分を変えることはできないだろうけど、それはお互い様だろうし」

それでも構わないというのなら、と告げると一瞬大きく目を見開いたのち口元を手で覆い隠した。
意外な反応に首を傾げる。

ティーダのことだから、大袈裟にも盛大に喜びを表現するのだと思っていたのだが案外大人しい。

「大丈夫か?」

思わずそんな声をかけてしまう。
それを受けティーダは何度か首を縦に振った。

「ごめん11。なんかスッゲー嬉しすぎて、オレ、顔がにやけすぎてる」

そう言ってその場にしゃがみこんでしまった。
そんな可愛らしい反応に頭を撫でてやる。

「…子供扱い?」
「まぁ、気にするな。私からしてみればキミはまだまだ子供だ」

そう伝えれば、不服そうな声を漏らしてきた。
そんな態度が子供っぽいのだとティーダ自身が気がつくのはいつになるのか。

バッツと同い年の自分と17のティーダ。だから実際、子供扱いするほどの年の差ではない。
ティーダをこんなふうに扱ってしまうのはそんな彼自身の態度もあるかもしれないが、ほとんどは彼に流されないようにするための自分なりの見栄だ。
ただこの見栄が、いつまで続くのかは自分でも判らない。

ティーダの想いを受け入れた以上、自分の気持ちにも素直になっていかなければならないのだから。

-end-

2010/2/5




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