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苦手



宿営地に到着し、目に飛び込んできたのは水辺ではしゃぎまわる3人だった。

本気で楽しんでいる様子のバッツとティーダ。
楽しんではいるようだが、やや付き合ってます感が漏れてるジタン。
ティーダはともかく、バッツときたら成人してるにも関わらずあのはしゃぎよう。
呆れ半分、羨ましくもある。

(まぁ…熱いもんな)

遠目に彼らを窺いながら、傍に設置されている物資用テントへと足を運ぶ。

「おかえり、11」

ちょうどテントからティナが出てきた。
今日の食事当番はティナとオニオンだったことを思い出す。

「あれ、まだ水浴びしてるんだ」

3人に気がつき、目を丸くするティナ。
聞けば、彼女達が来た時にはすでに水浴び中だったという。
オニオンも誘われたようだが、そんな子供みたいなことには付き合えないと返したらしい。
「彼らしいでしょ」 と笑うティナ。
最年少の癖に妙に大人びた言動をする彼がそう言っている姿は容易に想像できる。


「11は熱くない?」
「そりゃ熱い。この装備だ」

と自分の鎧を指す。
軽鎧とはいえ、覆われている部分は熱が篭って通気性が良いとはいえない。
それにこの熱さ。
今日は一段と日が照っている。

「混ざってくる?」

そう水辺を示すティナに、とんでもない!と言わんばかりに首を横に振り返す。

「冗談よ」

苦笑を零し、11苦手だもんねと彼等を眺める。

そう。
苦手なのだ、あのノリが。
特にティーダ。彼のあの無邪気さが。
基本ひとりで行動している自分によく構ってくるティーダ。
素材集めなどひとりで大丈夫だといっても、姿を見つけては着いて来るのだ。
今日はなんとか振り切って、こうして行動していたが。


「じゃあ私、仕度してくるね」
「さっぱりしたものが食べたい」

そう伝えれば、善処してみると笑顔で夕飯の準備へと出かけて行った。

他の仲間はまだ戻っていないようだし、先に寛がせてもらおうとティナと共用のテントへ向う。


中に入り、剣を降ろして鎧を外していると、

「あ、やっぱり11。戻ってたんっスね」

おかえり〜、と中へ入ってくるティーダ。

「11も一緒に水浴び」
「ティーダ」
「ん?うわっ」

ふいにタオルをティーダの顔へと投げつける。

「まず、濡れたままでテント内には入らないで欲しい」

濡れっぱなしできたせいで、彼の歩いた後が水浸しだ。
拭かせなければならない。

「あっ、ゴメン!」

慌てて手にしたタオルで敷物を拭こうとするティーダを止め、体が先だと促す。
その間に別のタオルを取り出し、頭を拭いているティーダに渡す。
ホント、ゴメンな〜と、それを受け取り水の跡を拭き始めるティーダ。

素直に自分の悪い所は受け入れることができる。
この位の年頃なら自分のことは棚に上げ反感しそうなものだが、こういうところは感心だ。

「それから、テントとはいえ女性の休む場所に断りもなしに入ってくるのは如何なものか」

暑苦しい装備を外し、着替える所だったのだ。
17の子供とはいえ、見られでもしたら堪ったものじゃない。

敷物を拭きあげ、立ち上がるティーダ。

「11が見えたから、つい急いじゃってさ〜」

自分の行動に反省しているのか、困ったような表情でこちらを見やってくる。
そんな顔をされては、こっちの方が困ってしまう。

…やはり苦手だ。


「あと上着、着た方がいい。そろそろ夕暮れだし、じきに冷えてくる」

風邪なんかひくなよと、上半身裸のティーダに目を向ければ髪から伝う水滴が目に映った。
はぁ、とひとつ息を吐き、手招きで頭を下げるよう促すと素直にこちらへと寄ってきた。
肩に掛かっていたタオルを手に取り、ティーダの頭をしっかり拭いてやる。

「…なんかオレ、子供扱い?」
「実際、子供だろう」
「……女の子にモテないっスかね〜」
「人それぞれじゃないのか?」

不満げな声色にさらりと返答しつつも、そんなことを気にしていたのかとそちらの方が驚きだ。

ティーダは彼の世界ではスポーツ選手だと聞いている。
それもチームにおけるエースだとか。
いつかの会話で小耳に挟んだ情報だ。
それなら大層モテるのではないのだろうか。


「ほら、もういいぞ」

ポンと頭を軽く叩いてタオルを渡す。

「…11」
「なんだ?」

タオルはくれるから気にするなと言えば、妙に口篭もるティーダ。
心なしか目が泳いでいる。

「あのさっ、…オレのこと、どう思う?」

意を決したかのように出た言葉。
それはどういう意味でなのだろうか。
正直に言えば、苦手…なのだが、言ったら傷つくだろう。
しかし苦手といえどもキライではない。
むしろ好感はある。


「…まぁ、元気でなによりだと思う」

ひとまず、当り障りの無いよう応えておく。

「それだけ?」
「他になにか?」

思わずティーダを見上げる。
返答に不満なのだろうか。

「いや、オレ、11のこと好きなんだけど」
「ありがとう。私もティーダには好感を持っている」
「えーと、そうじゃなくって…、やっぱりオレって、恋愛対象外っスか?」
「……そんなことはないと、…思う」

そう応えれば、瞬時に顔を明るくさせるティーダ。


年下なうえに苦手なタイプのはずなのだが、なぜかティーダを放っておけないのは事実。
彼を子供扱いしているのは、自分がそんな彼に流されないための見栄。
こうやってこちらが誤魔化そうとしても、率直に自分の想いを伝えようとしてくる彼はかわいいと思う。
そして自分には無い、彼の素直さに惹かれているのも事実。
でも、それを認めてしまうには、まだ心の準備ができていない。

だからもう少しだけ、君を子供扱いさせて欲しい。

-end-

2009/7/15




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