関心
「という訳なんですけど。どう思います?」
「どうって…なぁ…」
己の息子とそう年端も変わらないであろう少女をジェクトは見下ろす。
なんだってこんなチンチクリンな少女が混沌勢にいるのかと出会った当初は頭を捻ったものだが、なかなかどうして破天荒な言動にそれも然も有りなんと微妙な納得をしたものだ。
その少女…11の問いかけになんと返すべきか、今また頭を捻っている。
思ったままの返事をすべきか。
それとも、しっかり諭してやるべきか。
通常なら前者なのだろうが、問題は11がティーダと被るところにある。
もしあのガキが息子ではなく娘だったのなら、おいそれとヘタなアドバイスなど出来やしない。
もはや親の心境である。
しかし11にとっては、それは余計なお世話だろう。
”説教”という選択肢など頭にないのだから、こうしてジェクトに聞いてきているのだろうし。
そして己の過去を振返ってみる限り、自分が”説教”できる立場にないことも重々承知している。
詰まる所面倒くさい。この一言だ。
「そんなのぁ、あれだ。本人に直接聞きゃいいんじゃねぇのか」
まどろっこしい、と返答する。
実際そうだ。
相手の好みなど、ジェクトには判りはしない。
そんな話などしたこともないし、聞きたいと思ったことすらないのだから。
そもそもの相談相手が間違ってやないかと思う。
「それがですね。教えてもらえなかったわけで」
と11が言う。
11に教えなかったのなら、益々ジェクト自身が知る由もない。
「だから、一般的にはどうなのかなと思って。どうなんですか?」
「俺か?あー、そうだな…」
またしても、なんとも返答しがたい質問である。
何についての問いかけかというと、11の意中の相手”セフィロス”についてなのだが…。
「やっぱ雲さまとかアルティミシアさまみたいに、ボインボインですかねー」
「いやあれだ。雲は女じゃねえから除外だろうよ…」
「見た目ですよ、見た目。見た目がまず大事ですって」
先ほどから、セフィロスの好む体型とはどういうカンジなのかという質問ばかりである。
終いには一般的にはと、ジェクトの好みまで聞き出そうとする始末。
11が言いたいコトとは、まず、セフィロスの心をGET☆できるのは、そこはかとなく無理な気がしてならない…いや、無理だと判断し、ならば体だけの関係でもいいんじゃないか!と言うことだ。
そこでそうなる為には何が重要かといえば、11曰く、体である。
ひとまず彼の心を惹ける体型さえ手に入れれば後は煮るなり焼くなり御茶の子さいさい…らしいのだが。
(…馬鹿……なんだろうなぁ)
だいたい仮に11のいう”ボインボイン”が好みだったとして、どうやっていきなりそんな体型に成ろうというのか。
それにそんなことをしたところで、あの男が容易に靡くことなど在りえないとジェクトは思う。
「まぁよ、見た目とかはあんまカンケーねぇんじゃねーか?」
「うわ、節操ナシですねジェクトさんたら」
いやだイヤラシイ、と横目で見てくる11。
イヤラシイのはどっちだとゲンコツの一発でもくれてやろうかと思ったが、耐える。相手は小娘。こちらは大人だからだ。
「何をしている11」
不意に現れたのは、話題のセフィロス。
「セフィロスさんが教えてくれないので、ジェクトさんにいろいろ尋ねてたんです」 でもあんまり参考になりませんでした、と続ける。
「くだらんな」
「そんなことないですよ。私にとっては一大事なんですから」
そう言う11の目は真剣だ。
それを見ているセフィロスは、なんとも楽しそうな目をしている。
常に人をあざ笑うかのような、冷たい視線を向けるヤツが。
(…へぇ)
顎鬚をなぞりながらジェクトはふたりを眺める。
「おまえはあいつの偵察に行くと出掛けたんじゃなかったのか」
「それがですね、まぁ、ジェクトさんに会ったら聞かなきゃ!とか思っちゃいまして」
ヘラヘラと笑っている11の頬をこれでもかといわんばかりに引っ張っているが、11は気にすることもないようだ。
痛そうではあるが。
「世話をかけたな、ジェクト」
「…おぉ。さっさとコイツ連れてってくれや。まともな会話が成り立たねぇ」
そう溜め息を吐いてみせる。
それを受け、失礼ですよ、などとのたまっている11だが、唐突にセフィロスに頭を鷲掴みにされ大人しくなる。
その表情の変化に思わずニヤリと笑みを漏らすジェクト。
よく飼いならされているものだと、変な所に感心してしまう。
しかし、セフィロスの本心が何処にあるのかはわからないが、こうやって上手く11の関心を己に誘導しているあたり性質が悪いのかもしれない。
(悪趣味なヤツだ)
とは思うが、無碍にされるよりはいいのだろうか、とも思う。
(ま、11に言わせればヨケーなお世話ってとこか)
11自身、現状満足とはとても言い難いようだがとりあえずは良しとしてセフィロスに付き纏っているのだろうし、セフィロスもセフィロスでそれを楽しんでいる感もある。
わざわざ口を挟んでややこしい事態になるのも勘弁だ。
11の想いがヤツに届くかどうか生暖かく見守ってやるか、とジェクトはひとり思うのだった。
-end-
2009/11/24
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