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少しの災難 その2



「いいんですか?本当に」
「あ、あぁ。…今日の所はあまり動かないで、様子見たほうがいいだろ」

”いんせき”に激突喰らった11を伴い、宿営地まで戻ってきた一行。
戻ってきてする事といったら、食事の準備だ。

便利なもので、質素ながらも簡単なものを作れる程度の備えがココにはある。
簡易的なキャンプ場といったところか。
食材はといえば、加護のお陰か適当なものが時折補充されているようである。

「どーせなら、出来上がったヤツがあればもっと便利っスよね〜」

と、ティーダの言うことも最もだが、こうして空腹を満たしてくれるだけの準備があるのだから、それだけでもありがたいと思わなければならない。
そこで、4人で交代で食事を作ることになっていたのだが。
その決まり事は11が現れてからも当然変わることなく交代で、
と思いきや

「私、料理したことないんですよ。それでもいいですか」

と真剣な表情で言ってくる11に、彼女の日頃の行いの賜物か、なぜか一同腹の危険を感じて11の番の時は誰かしら手の空いてるものが請け負うことになった。
誰かしら、とは言ってもそれは主にフリオニールなのだが。
料理をしたことがないのなら教えてやるのもいいかもしれないと思いながらも何度となく機会を逃し、今日に至っている。

そして本日は11の当番だ。
いつものように、彼女の代わりにフリオニールが仕度へと向おうとしたら、なんと11がやると言いだした。
気味が悪いほど謙虚な姿勢の11だが、”当番くらい自分でやります”と言い張りなかなか引かず、漸く冒頭の理由により納得させることができた。

申し訳無さそうな顔を浮かべる11。
もしかしたら今の11なら料理くらいできるかもしれない、などと淡い期待を一瞬持ってしまったが今日は大事を取った方がいい。

「すまないと思うなら、これからは11もちゃんと料理覚えて当番してくれ」

いつもはともかく今日は状況が状況だから仕方がないとして、と付け加える。
今の彼女なら、こういったことも素直に受け入れるだろうと考えての提言だ。

「料理できますよ、私」
「…は?」

またしても間抜けな声が出てしまった。
本日2度目である。

「じゃあ、なんだって出来ないなんて言ってたんだ」
「…なんででしょう」

そう、困惑気に首を傾げる。
自分でも理解できていない11に、フリオニールはため息を吐く。
出来る出来ないに限らず、この様子ではまだ錯乱状態なのだろう。
やはり少しでも早く休ませなければと、テントに連れて行こうと11の手を捕る。

「あっ…」
「どうしたっ」

頭でも痛むのかと11に顔を向ける。

「あのっ、手っ…、…手、離してください…」

頬を染め上げ、俯く11。
未だかつて見たことのない11のそんな新鮮な反応に、思わずフリオニールも慌てて手を離す。

「あー…、どうした?」
「なんだか、恥ずかしいじゃないですか」

手を繋ぐなんて、と更に赤くなる。
何を今更、と思いつつも11の様子に違和感が拭えない以上、あまり刺激するのは良くないと考え、とりあえず急に手を捕ったりしたことを謝る。
その光景を遠巻きに眺めていたセシルが近づいてきた。

「11の様子はどう?」
「変わらず、だ。テントで休ませようと思うんだが…」
「あぁ。それなら僕が連れて行くから、フリオニールは仕度に行っていいよ」

どうせ11の代わりにするんでしょ、と苦笑交じりに首を傾げる。
ここはセシルの言葉に甘えて、彼に11を見ていてもらうことにした。
本当のところは誰かに当番を代わってもらって11に付き添っていたいのだが、いくら恋人とはいえ過保護過ぎる気もするし彼女らしくない様子に落ち着かないというのもある。

テントに向うふたりの背中を見送りながら、また一つため息を零す。

(……。ちゃんと元に戻るんだろうか)

常日頃もっとしおらしくなって欲しいとは思っていたが、実際そんな彼女に直面するといまいち調子が狂ってしまう。
しかも手を握ったくらいで恥ずかしがるなど、11らしくない。
そんな珍しい仕草に少しばかり胸が疼いてしまったのは事実だが。

それにしても、料理ができるとは驚きである。
”したことない”ときっぱり言い放った11の演技に、皆まんまと騙されたということだ。

(まぁ、騙されるよな。いつもあんなだし。…腹は大事だしな)

どうせ出来ないなんて言った理由は”面倒くさいからです”の一言なのだろうし。
しかし出来ると判った以上、今後はキチンと遣らせなければならない。
当番は公平であるべきなのだから。
そしてなにより、男として、所謂”彼女の手料理”を堪能することが可能だということに心が躍る。
自分が教えてやるのもいいと思っていたが、それでは意味がない。
彼女自身が培ってきた味を楽しみたいのだから。

11に対する違和感よりも頭に浮かんだ僅かな楽しみが勝り、足取りも軽く食事の仕度へと向うフリオニール。
そんなフリオニールを通りすがりに見掛けたティーダ。

「クラウド!のばらがっ、…のばらがーーっ!」

11と一緒にフリオニールまでおかしくなってしまった!…と、クラウドの元へ報告に走って行ったのだった。

-end-

2009/11/7




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