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少しの災難



「おっ、おい!大丈夫か!?」

倒れた様子を視界に捕らえ、慌てて11に駆け寄る。

11の相手にしていたイミテーションは、事態に気がついたセシルが消滅させた。
なんだって、あんなのにやられているんだ。
まさか、紛いモノの”いんせき”に直撃するとは。
気転が利かないにも程がある。
しかし思い付かない事を仕出かすのが11だ。
そこの所はもはや諦めの境地に立ってはいるが…。

名前を呼んでも、返事はない。
意識を失っているようだ。
何度か名前を呼んでいると、辺りの敵を一掃し終えたクラウドがポーションを片手にやってきた。
呼んでも意識が回復しないのなら、仕方が無い。
クラウドに頷いて、ポーションを与えてもらう。
さらさらと注がれる不思議な光に身を包まれて、11の瞼が揺れた。

「11っ」

名前を呼んで頬を軽く叩いてみると、漸く意識がはっきりしてきたのか目を開き始める。
その様子にほっと胸を撫で下ろす。

「…あぁ…フリオ、さん…」

私、やられちゃいました…?と途切れ途切れに声を出す。
キョトンとしてこちらを見上げて来る辺り、もう大丈夫なようだ。
一大事にならなくて良かったと、息を吐く。

「まったく、なんだって”いんせき”なんかに当ってるんだ?しっかり見ていれば…」

と、いつものように小言ともとれる注意をしていると11の頭が下がったのが視界に映った。
下がった、というかお辞儀のようなその仕草。
地面に座り込んで三つ指を突き、姿勢を屈めている。

「この度は、またしてもご迷惑をおかけしまして。本当に申し訳ございませんでした」

そう深々と頭を下げてくる。

「…は?」

気の抜けた声を出してしまった。
目が点である。
なにを思って、いきなりしおらしい態度なのか。
また何かの悪戯だろうか。
それともやっと心を入れ替えて、反省することを学んだのか。
11の思わぬ態度に困惑してしまう。

「いや、そのだな…。まぁ、無事でなによりだ…」

と声を掛ければ、ゆっくりと顔を上げる。
首を傾げて、「本当にそう思ってくださってます?」と尋ねてくる11に頷いて見せると、柔らかな笑顔を覗かせた。
無事で良かったとは本心からだ。
11に限らず、他の仲間だって誰一人失うことなど考えられないんだから。

それにしても、だ。

なんだろう、この可愛らしい笑顔は。
含みのない、純粋そうな微笑。
これはこれで、とても好ましいが…なんだか不気味だ。

「…立てるか?」

そう手を出せば、素直に手を取り立ち上がる。
おかしい。
いつもならココで、「抱っこしてくれないんですか〜」など、文句を言いながらごねるところだ。

頭にうずまく違和感にひとり首を傾げていると、なにやらクラウドにも頭を下げている。
貴重なポーションを云々と、礼を述べているようだ。
益々違和感が募っていく。

今日のところは敵もいなくなってしまったし、そろそろ宿営地に戻るかとのクラウドの声に同意し、11に背中を差し出す。
無事とはいえ頭を打っているのだから、なるべく動かさずにもう少し様子が見たい。
そう考え、おぶっていこうと思ったのだが、それを丁寧に断られてしまった。

「これ以上、お手を煩わせるのも申し訳ないので…」
「いやいや、それとこれとはまた話が違うだろ」

そんな遣り取りをしているうちに、素材を集め終えたティーダとセシルが合流してきた。

「お疲れ様です」

と、またしても頭を下げ、あまつさえふたりに労いの言葉を掛ける11。
それを受け、動きの固まるティーダとセシル。
あぁ、やっぱりそうなるよな、とふたりに目を向ける。

「えっ?11っ、どうしたっスか!?」

慌てながら、11の額に手をあてるティーダ。
熱の心配でもしているようだが、それはない。

「どうしたの?11」

打ち所でも悪かった?となぜかこちらに心配そうな目を向けてくるセシル。

「静かで、いいんじゃないか」

と11のしおらしい態度にあくまで冷静な見解を見せるクラウド。
三人三様の反応を見せてくれた。

11に目をやれば、頭に”?”を浮かべたような顔をしてこちらを見上げてきている。
いつもと違うそんな仕草に少しばかり胸が疼くが、どうにも落ち着かない。
調子が狂うというか……やはり違和感の一言に尽きる。


「…とりあえず、戻るか」

こんなところで気を揉んでいても仕方が無い。
一時の錯乱なのかもしれないし、11がこんなままでいるはずがない。
一晩寝れば、いつも通りの彼女に戻っているだろうと一同皆前向きに考えて、宿営地に足を向ける。

しかし、果たしてそれで済むのだろうか。

僅かな不安を胸に秘め、ひっそりとため息を吐くフリオニールだった。

-end-

2009/11/2




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