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災難転じて その7



昨夜は大変だった。

あれから何度も痛いと嘆く11を何とか宥めて就寝させ、汗ばんだ体じゃ気持ち悪いだろうとタオルで眠る11の体を拭いてみたり。
汚れたシーツに体を預けるのは心地悪いだろうと部屋を移動したり。
何も纏わず横たわる彼女の姿に、滾る気持ちを落ち着かせたり。
ここまできたら、同じ布団で眠っていいものかと悩んでみたり。
とりあえず同じ布団に入ってはみたが、思っていたよりも緊張して眠れなかったわけだが…。


横に眠る11に目を向ける。
勢い余って、痛がる11を気遣うこともできずに自分の欲望のままに抱いてしまった。
それでも彼女は、最後まで自分を受け入れてくれたし、事後には苦情を漏らしながらもいつもと変わらない調子で接してくれた。
そんな11に愛しさが募る。
募れば募るほど、彼女の肌が恋しくなってくる。

「11」

頬をそっと撫でてみると、瞼が揺れた。
唇に口付けを落とす。
未だ覚醒しきってないのをいいことに、堪能させてもらう。

時折漏れる甘い息に、昨夜の出来事が脳裏に浮かび上がってきた。
無理をさせたばかりなのに、もっと欲しいと思うのは我侭だろうか。
11に覆い被さり、薄く開かれている唇に舌を挿入させ、深く口付ける。
高まる鼓動に、夢中で何度も舌を絡め取る。

息苦しさに、ようやく意識を覚醒させた11が目を見開き、突如胸を押し返してきた。
一旦顔を上げてやる。

「ああああ朝っぱらから…なにしてるんですかフリオさん!」
「何って、キスだ」
「いやいやいやムリですのでお引取りくださいって…」

11の慌てる中、突っぱねる腕を押さえて再度口付けようと顔を近づける。
あぁ、やっぱりまだ頭が沸いてるんだな。
こんな態度も可愛らしく思えるなんて…。

「あ〜、いたいたフリオニール〜…って…」

急に開かれたドアから現れたのはティーダ。
ティーダの目に映ったものは、上半身裸のフリオニール。
…とその下に組み敷かれ、こちらも肌をさらけ出している11。
3人一斉に動きが止まる。


「おいっ、シーツに血痕がっ…」

慌てた様子で登場のクラウド。
片手には、血痕の付いたシーツを持っている。
中を見て彼もまた動きが止まる。


「あ、クラウド。フリオニールと11居た?」

違う部屋より顔を覗かせるセシル。
微動だにしないティーダとクラウドに首を傾げ、ふたりに近づき部屋の中へと視線を移すと、腕を押さえつけ11に迫るフリオニールがいた。
しかも裸である。

「あ」

と、漏れたセシルの声に、はっと我に返るフリオニール。

「あ…あぁぁっ違うんだっ、これはっ……!」
「も〜、ヒドイんですよ、フリオさんてば痛いって言ってるのに〜」
「お、おいっ11!」

布団に身を隠しながら苦言を言い出す11。
慌てるフリオニールにクラウドとティーダの冷たい視線が突き刺さる。
今の11の一言で、絶対に誤解されている。
無理やりじゃない。無理やりじゃないんだ!
いや、最後の方は多少無理やりだったかもしれないが…あぁ問題はそこじゃなくて!

ふたりが武器を構えるのが目に入った。
全身の血の気が一瞬にして引いてくる。
そんな中、セシルはなぜかひとりニコニコと笑顔だ。

「11、お赤飯炊く?」

と11に声をかけている。
”オセキハン”とは、なんだ?
なんにしても、見当違いな気がする。

それよりもこの状況だ。
誤解を解くのが先だ。
とりあえず服も着なければ。
こんな格好では、話そうにも心許無い。


災難転じて想い実ったのは嬉しい。
しかし、やっぱり11と関わると碌なことにならない。
でも、そんな彼女を愛しく感じているのは事実。

11に目を遣り、何から話せばいいものかと、ひとつため息を吐くフリオニール。
これからも、この調子で彼の災難は続くのかもしれない。

-終-

2009/8/6




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