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災難転じて その6


そっと口付けてみる。

何度か啄んでいるうちに、気分が昂揚してきた。
目を瞑り、真っ赤になっている11の様子に思っていたよりもいろいろと漲ってくる。
あぁ、なんだか幸せだ。
この気持ちをどう表せばいいんだ。
11の肩に顔を埋めて息を吐く。


「あのですね…、もうイイですか?」

トントンと背中を叩かれ、離れるよう促されているみたいだが無視する。
この昂揚した気持ちを抑えられる自信はないんだ。
今、離れるなんて考えられない。

腰に手を這わせてみたら、それから逃れるように体をモゾモゾと揺らす。
そんな仕草でさえ可愛らしいと思えるほど頭が沸いてきているらしい。

「11」

耳元で名前を呼ぶと、慌てた様子で腕をつっぱり体を押し返してきた。
力で勝てるわけないのに。

「…フリオさん、離れてくださいよ」
「いやだ」

我侭言わないでくださいなどと言っているが、どっちがだ。
こっちはどれだけ耐えてきたのか…呑気な11には判るはずもないか。
だいたい日々、自分からくっ付いてきているのに今更こんな態度を取られるのは腑に落ちない。
同じ想いを持っているのなら尚更だ。


「11。…したい」

そう告げ11に目を向ける。

「目っ、目が怖いですよっ」

ただでさえ目つき悪いのに!と失礼なことを言いながら逃れようとする11を押さえつける。

「俺も男だからな」

そういう欲望はある。
何度、想像の中で11を抱いたか。
その度に罪悪感に駆られもしたが、今当人が自分の腕の中にいるんだ。
我慢なんか出来るものか。

「観念しろ、11」

口付けを再開する。


頑なに閉じている11の唇に舌で小突いて開けるよう催促してみる。
一瞬唇を固く結んだが、やんわりと口を開いてきた。
その隙間に舌を割り込ませる。
熱く湿った感触に、更に中へと侵入する。
何度か歯がぶつかったが、程よい角度を探り舌を絡ませた。
人の口の中というものは、こんなにも熱く、柔らかいものなんだ。


しばらく夢中で貪っていると、11に胸を強く押された。
名残惜しいが1度顔をあげてみる。

「…なんかもう、疲れました」

そう言い腕で顔を隠す11。
相変わらず体力がない。
だからアレほど少し鍛えた方がいいと言ったじゃないか。
まさかこんな展開になるとは思ってもいなかったけれど。
だからといってこんなところで止められる訳もなく。

「疲れるのはこれからじゃないのか?」
「あ〜、勘弁してください。私、こういうの初めてですもん」
「…え?」

初めて?
じゃあ、今までのあのスキンシップは?
経験のない自分をからかってしていたわけじゃなく、親愛のスキンシップだったのか。
さっきの口付けだって、歯がぶつかったり、どう絡ませばいいのか、果たしてこんなカンジで心地よくなって貰えているのだろうかと、内心かなり焦っていたのだが。


「…」

ヤバイ。
嬉しい。
どうしよう、尚更止められるわけないじゃないか。
綻ぶ口元を手で覆い隠す。

幸いにも、ここには自分達以外いない。


「…なぁ11」

やっぱり我慢できないんだ。

-end-

2009/7/31




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