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災難転じて その2



「しかし、なんで服が破けてるんだ?」

ティーダとの対戦は逃げる一方ながらも運良く攻撃は回避できていた。
当ったのは頭にヒットした最後の一撃だけである。
目に見えて掠っていた様子もなかったのだが、気が付けば衣服が破れその下の肌には所々傷が付いていた。
「あぁ、もしかしたら岩とかに引っ掛けたのかもな」

ティーダの猛攻を避けるべく、地形を利用して狭い隙間に入り込んでいたのを思い出しひとり納得する。
11も11なりに一応考えて動いてるようだ。
少しばかり成長したかもしれないと、微笑ましく思う。
それにしても11はさっきからずっと黙っている。

「どうした?頭でも痛むのか?」

そう問い掛けるフリオニールに対し11は頭を横に振って返す。
頭の痛みはないようだ。

「変なやつだな」

と苦笑を漏らすフリオニール。


「…」

一方いきなり抱え上げられたことに少々戸惑い気味な11。
どうしていいのかわからず、とりあえずフリオニールの肩に手を置いて体のバランスを取ってみるも、首元へと誘導されてしまった。
自分から言い出したことじゃない上にマント越しとはいえ密着している状態が緊張を招いている。
それに加え抱え上げられているせいでフリオニールの声が近い。
耳元で喋られるとザワザワする。
余計に緊張が増してきていつものような調子がでない。


「ほら、着いたぞ」

宿営場に到着し、11を降ろす。

「ありがとうございました、フリオさん」

礼を述べ包まっているマントを解き、さっさと着替えようと荷物の元へと足を運ぶ。
その後ろから付いて来るフリオニール。
それに気が付き11は立ち止まってフリオニールへと振り返る。

「着替えるので付いて来ないでください。覗く気ですか」
「傷の手当てが先だろ」
「そりゃあそうですけど…」

やはり調子が狂う。
いつものフリオニールなら”のっ、覗く気なんてないぞ!”等、慌てたりするのだが至極真っ当な返事を返された。
傷の治療が優先なのは判っている。

「手当てくらい自分でできますよ」
「ダメだ」

即答で返された。
11の性格上、適当に済ますことは目に見えている。
腹部は衣服に覆われていて通気性は良くない。
動き回れば汗もかくし、デリケートな傷ともなれば清潔さも保たなければならない。
適当に済まして後から膿んだとなると大変だ。

「傷の程度も看てみないと」

11を荷物の元へと促す。


自分の荷物を弄り、着替えを探しながら11は思考をフル回転させていた。

(なんか違うなんか違う)

世話焼きなフリオニールの性分は知っている。
文句を言われたり聞いてないフリをされたりするが、嫌ではない限り要求を受け入れてくれる。
それに甘んじて彼に対して我侭放題に接してきた。
しかし今日はなにか違う。
服が破れたって、”装備が甘い”だの”もっと周りをよく見ろ”だの、とりあえず小言が降ってくるのに、何も言わずにマントで隠してくれ(お母さんっぽかったけど)、あまつさえ宿営場にまで運んでくれた。
くっ付かれるのが苦手なはずなのに、わざわざ抱え上げて。


(おかしいおかしい…)
「11」

思考に勤しんでいる中、急に後ろから声をかけられ体が軽く跳ね上がる。
振り返れば、フリオニールが薬液の入ったビンを手にこちらを見下ろしていた。
楽しそうな顔をしているのは気のせいだろうか。

「傷、見せてみろ」

そう言い、その場にしゃがみ込んで来た。
周りの荷物を集めそこに腰を下ろしてフリオニールへと向き直る11。

彼の笑顔に軽く戸惑いを覚えながら。

-end-

2009/6/27




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