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災難転じて



迫り来る炎を軽々飛び越え、ボールを投げつける。
それも当ることなく11は近くの岩へと着地した。
なんだかふたりとも楽しそうである。
レベルを上げるため、とティーダに11の相手をさせているのだがこれじゃあ意味が無い。
仲が良すぎるのも問題なのか、どうもお遊び半分にしか見えない。
レベル差が歴然なのはあきらかだけど、それで手を抜いてやったりしてはそれこそ彼女の為にならないだろう。


「ティーダ!しっかり相手しろ」

そう叱責すれば、なぜか11が嫌そうな顔をこちらに向けた。
確かにティーダがまともに戦えば、彼の戦闘スタイルは読み難い動きだし、あっという間に近づかれて終わりだろう。
だからといって怠けていては力にならない。
不満そうな眼差しを送ってくるが無視する。


そうこう思っているうちに、「行くっスよ!」とティーダの猛攻が始まった。
ティーダは相変わらず楽しそうだが、11は必死に逃げ回っている。
まだまだ体力に余裕がありそうなのが窺えるが、逃亡一筋なのもいかがなものか。

「11、逃げ回ってばかりいないで反撃!」
「無理ですよ〜、早いんですもん〜」

そう言いながら断崖の隙間を縫って、岩場へと飛び移る。
ティーダは手を休めることなく攻撃一方だ。
笑顔なのが性質悪い。
少しだけ11に同情する。


いいかげん飛び回ることに疲れたのか、地面に着地しティーダを正面から捕らえる。
火球を発生させるが難なくかわされ、次いで氷塊を投げつけた。
それに気が付いたティーダは、着地と同時にダッシュで11へと向かう。
その反動で魔法を弾き返し11の背後へと回り込み「きまった!」と止めのボールを投げつけた。
回避しきれず、11の後頭部にボールがクリーンヒット。
その場に顔面からなだれ崩れる11。
それを見て”しまった!”と言わんばかりにティーダが慌てて駆け寄って行く。

「ゴメンな〜、11!つい手加減できなくって」
「ひどいよティーダ。頭、イタイ…」

傍観していたフリオニールも駆け寄ってきた。
ティーダは座り込んでる11の後ろ頭を撫でてやっている。

「だってさぁ、フリオニールがしっかりやれっていうから」

とフリオニールに目を遣るティーダ。

「そうですよ〜、フリオさんが私のレベル知ってるのにティーダを煽るから〜」

と11もフリオニールに視線を移す。
ふたりの視線が突き刺さる。
しっかり相手になってやれとは言ったが、煽ったつもりはない。
それにティーダなんか、あんなに楽しそうにしてたじゃないか…とは言葉には出さずに11の頭の具合を看てやろうと近づく。

「あ」
「あ?」

フリオニールの視線が11の腹部に留まる。
その視線をティーダと11も辿ると、左脇腹から胸下まで衣服が破けていた。
それはもうザックリと。
肌にも所々、血が滲んでいる。

「うっわ〜、こっちはイタクないっスか?」

とティーダが触ろうと手を伸ばした瞬間、フリオニールがそれを阻止した。
マントで11を包みこむ。
その行為に呆然とするティーダと11。
はっと、我に返るフリオニール。

「おっ…女の子がお腹冷やしちゃいけません!」

思わず11に覆い被さってしまった気まずさに漏れた一言にティーダと11の頭に過ぎったものはといえば。

(お母さん?)
(お母さんだ)

お母さんである。


呆気に取られているふたりをよそに、11に立つよう促す。

「とりあえず手当てと、着替えだな」
「ポーションないんですか?」

フリオニールから繋がるマントを裾の方から体に巻き着けつつ問い掛ければ、勿体無いと返された。
タダだからといってこの程度の傷に使うには勿体無いし、簡単な治療で済むものならそれに越したことは無い。
以前、足を挫いた位で使ったこともあったが、あれは歩けない以上ああするしかないと判断してのものだし。
人の自然な治癒能力も馬鹿にしたもんではないのだ。
そもそも着替えも必要だ。


「ティーダはクラウド達と合流してるか?」
「う〜ん、…そうっスね。欲しいアイテムあるし」

ちょっとその辺り散策してくると出かけて行った。
「しっかり看てもらえよ〜」との言葉を残し意気揚揚と去っていくティーダを見送り、宿営場にと足を運ぼうとしたらマントが突っ張る。
11が包まっていたのを忘れていた。
フリオニールを見上げながら、なにやらマントを引っ張っている。

「マント、外してくれませんか?歩き難いっ…?!」

急な浮遊感と共に11の視界が高くなる。

「こっちの方が早いだろ」

マントごと11を抱き上げて歩き始めるフリオニール。
不安定な体のバランスを支えるよう11はフリオニールの肩に手を置く。

「…」

いつもなら状況を楽しむか、くだらない話をし始める11が妙に静かである。
頭をぶつけておかしくなったのだろうか。

「なんか、…変ですよフリオさん」
「そうか?俺はいつもどおりだ」

左に目を遣れば、不安気な顔の11。
だってなんだか妙に紳士的というかツッコミがないというか…とブツブツ言っている。
その様子に苦笑を零し、11の背中をあやすようにポンポンと叩く。

「いつだって紳士的だろ?」

そう言って、11の腕を取りフリオニールの首元へしがみ付くように促す。
慌てる11に落とすと危ないからしっかり掴まっていろとフリオニール。

「…やっぱり、なんか変ですよ」
「はいはい」

しっかり11を抱きとめ、歩みを進める。
いつもと違い、優位に立っていることに顔を緩めながら。

-end-

2009/6/23




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