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災難その6



頭が揺れる。
体も揺れている気がする。
その揺れが心地よくて、また夢の中に引きずり込まれていく。

次いで圧する重み。
少し息苦しいが、まだ眠たい。
眠たいのだが重い。
その重みに耐え切れず瞼を上げると11。
人の腹の上に跨りこちらを覗きこんでいる。

「起きましたか〜?」

息苦しいのはこのせいか。

「…もう、朝か?」

辺りはまだ薄暗い気もするが、そもそも朝晩が明確でないこの世界では確たる判断材料にはならない。
皆はもう起きたのだろうか。
久しぶりに充実した睡眠のせいで寝過ごしてしまったか。

「まだです」
「は?」

頭だけ動かして周囲の様子を窺う。

右側の木陰にはクラウドがいる。
左へ目を遣れば、岩肌に寄りかかっているセシル。
暗黒騎士の姿だが、寝苦しくはないのだろうか。
その奥には毛布にくるまっているティーダが見えた。
各々就寝中のところを見るに夜明けにはまだ早いようだ。

「なんだか目が覚めちゃって」

昨日早くに寝たからですかね〜、と人の腹の上で呑気に寛いでる。
それならそれでひとりで大人しく起きていればいい。
人を巻き込むな。
その旨を伝えると、文句を言いはじめたが無視する。

休める時に休む。
戦士の基本だ。

「だって暇になるじゃないですか、私」

相変わらずな発言だが無視無視。
再度眠りに入ろうと避けられていたマントを手繰り寄せる。
腹に負担のかかるこの重みもどけようと腕を上げるが払いのけられた。
子供か。

「重い、苦しい、どいてくれ」
「じゃあ起きてくださいよ」

なんだってこんな時間からコイツの相手をしなきゃならないんだ。
こっちはまだ眠い。
無視し続けていればそのうち飽きるだろう。
そう思い、眠りにつこうと目を閉じる。

すると顔に掛かるくすぐったい感触。
また何か仕出かすのかと薄く目を開けて様子を窺ってみると至近距離に11の顔。
11の髪が顔にあたっている。

「おっおいっ」

思わず声が上ずる。

「起きてくれなきゃチューしちゃいますよ〜」

何を言い出すんだこの女は。

「いいんですか、初チューがこんな女で」

それは遠慮願いたい。
自分にだって選ぶ権利はあるはずだ。
いや、そもそもなんで初とかそんなことをコイツが知ってるんだ?
予想外の展開に目が冴えてきてしまった。
それと同時に体に圧し掛かる感覚もはっきりとしてくる。

朝っぱらから…勘弁してくれ……。
柔らかな感触が男の朝には…正直、キツイ……。


「…いやもう…起きるから…とにかくどいてくれないか……」

身を起こしながら告げると、ようやく体の上から離れてくれた。
自分が起きて満足なのか、妙に笑顔の11。

今日も災難な一日が始まるのだろうか…。
そっと膝を抱えてひとつため息をつく。

-end-

2009/5/27




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