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災難その5



「そんなわけで、交代してください」
「…」

腕を解き、自分の前に座り込む11。
肩揉みは自分へのお礼だったのだが、疲れたから今度は彼女の肩を揉めという。
労いもなにもあったもんじゃない。
先程までの心地よさによる眠気も彼女の言葉で吹き飛んでしまった。
また11のペースに飲み込まれている気もするが、眠気も消えてしまったことだし肩揉み位はしてやろうと肩に手を掛ける。


(………。小さい)

膝を抱えて座り込む姿。
普段の態度のでかさに惑わされているのか、こうやって改めて見てみると案外小さい。
彼女も戦いに身を置く者なのに、力を入れたら折れてしまいそうな体つきだ。
遠慮がちに指圧を始める。

11も少し鍛えた方が良いんじゃないかと提案してみるも、即拒否の言葉が返ってきた。
筋肉質になるのが嫌だそうだが、何もそこまで鍛えろといっているわけではない。
肩揉み如きで疲れるほどの体力では、この先思いやられる。

「だってフリオさん、固いんですもん。予想外ですよ」
「はいはい」

予想外なのはお前の行動だ。

そういえば、めんどくさそうな要求は無視しているが、最終的には彼女の我侭に付き合っている気がする。
クラウドやセシルの言うことは素直に聞き入れているようだし、ティーダは一緒になって騒ぐタイプだから論外か。
自分は少々彼女に対して甘いのだろうか。
だから調子にのって、なんでもかんでも要求してくるというか…。
セシルのように大人然として彼女を窘める態度も必要なのかもしれない。


首筋から背骨に沿って指を進めていく。
親指で軽く押し込むように。
こってはいないが、自分にしてくれた一連の流れを彼女にも施していく。
心地良いのかいつものように喋くることもなく静まり返っている11。
こうして黙っていれば、魔法を操る者らしくそれなりに賢そうに見えるのだが。
上方より下降していき、腰元までたどり着く。
薄い肉付きだなと指を動かしていると、篭った声がした。
手を止め、11を窺うと口を手で覆っている。
痛かったのだろうか。
ひとまず謝り、指圧を再開する。
すると今度は手首を掴まれ、動きを遮られた。
次いで11がこちらに身を向ける。

「…ワザとですか?」
「は?」

力加減には気を付けたつもりだが、まだ痛かったのだろうか。

「腰っ」
「腰?」

細っこいから両手で支えながら親指を動かしていたのだが、それが嫌だったのか?

「くすぐったいじゃないですかっ」
「…あぁ」

そうか。
それで声を篭らせてたのか。
突発的な声を聞かれるのは嫌だもんな。
気持ちはわかる。
わかるが……、11が気にするタイプだとは思わなかった。
思わず口元が綻ぶ。

「意外とかわいい所もあるんだな」

率直な感想だ。

「な…何を言い出すんですかフリオさんっ」

急に慌てたように立ち上がる11。
そのまま、セシルの方へと去っていってしまった。
意外と照れ屋なのかとまたしても新たな一面を見つけた。

走り去る11の背中を見送り、普段もあの位しおらしい方がいいんじゃないかと思いながら、眠りに入るフリオニールだった。

-end-

2009/5/21




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