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災難その4



決して自分から言い出したことじゃないんだ、と皆を納得させてようやく誤解の解けたフリオニール。
クラウドの提案もあって、今日はもう休憩することにした。


食事を済ませ、各々寛ぎの時間。

11は先程からセシルと話しをしている。
いつになく真面目に受け答えしている様子だ。
自分にもそう接してもらいたい。
クラウドとティーダは食後の運動をしてくると声を掛けていった。
自分も行こうかと思ったが、今日の所は辞めておいた。
久しぶりにゆっくり休めるんだ。
早めに心身共に休めようと、木に寄りかかる。


目を伏せ、数分経っただろうか。
顔に影がかかった。
目を開くと、11の足が見える。
人の眠りを妨げにでもきたのかと邪推してしまう。

「今、セシルさんに説教されてきたんです」

”女の子が軽々しく男とお風呂に入るなんて言っては駄目だよ” と窘められてきたという。
細かくいえば本来の目的は洗髪なのだが、洗髪するには風呂に入る必要もあるわけで違うとは言い切れない。
誤解は解けているが、<風呂に入る> という行為が強調されていて、なんとなく物悲しい。
その代わりに別のお礼方法を教えてもらってきたと、腕を引っ張られる。

「肩揉みしますね」

後ろに回り込まれ、肩に手を置かれる。
グイグイと勢いよく揉み始めた。
自分には少々物足りない刺激だが、まともな労い方に黙って受け入れておくことにした。

「そういえばさっき、ティーダにお姫様抱っこしてもらったんですよ」
「そうか。良かったな」

しっかり目撃していたが、なんとなく知らない振りをしておく。
肩甲骨に沿って、細い指が移動する。
緩い力だが、これはこれで気持ちいいかもしれない。
適度な感触に体を委ねる。

「でもですね。思ってたよりあんまり良いもんじゃなかったです」
「我侭な言い様だな」

理想と現実の差ってやつか。
そんなことは多かれ少なかれ、これからも目の当たりにしていく事だ。
これを区切りにもう少し思慮深く行動するようになればいいが。

「おぶられる方が、こう…安定感があるっていうか」
「そりゃそうだろうな」

背中に身を預けることに比べれば肩と膝の二支点だけの支えでは心もとないだろう。

「あと、視界が違いますね」

自分の身長は高い方だと思う。
コスモス勢では、ウォーリアやセシルと並ぶ位か。
カオス側には、もっと長身の者もいるようだが。
少なくとも11とは結構身長差はある。
声の調子から嬉しかったようだ。
いつもより高い目線が新鮮だったのだろう。

肩から手が離れた。
終了だろうか。
礼を述べようと振り返ろうとしたら顔の両脇から腕が伸びてきた。

首筋に絡みつく腕。
温もりと共に圧し掛かる重み。
一瞬鼓動が高まりながらも、何事かと11の様子を窺う。

「疲れました」

広い・固い・終わらない…と苦言を漏らし始めた。
体格差もあるし、魔法タイプの彼女に力仕事は望めないとはいえ自分からやり始めたことじゃないか。
文句を言われる筋合いなどないはずだ。
それにしたって肩揉みごときで疲れるとは、もう少し体力をつけさせた方がいいのだろうか。
またしても保護者気分になってきてしまった。


背中に11の重みを受けながら、またひとつため息を吐く。

-end-

2009/5/18




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