災難その2
皇帝の居城を抜け、安全な場所へと移動してきたフリオニールと11。
途中何度か敵に遭遇したが大したレベルでもなく、おぶられている11の魔法でも充分やり過ごすことが出来た。
怪我の手当てをしてしまおうと、どこか適当に腰を降ろせる所を探す。
「あ。あそこがイイ感じですよ」
彼女の指し示した方へ向う。
低い岩場へと11 を降ろし、小一時間ぶりに身体を伸ばす。
居城と打って変わって開放感溢れる光景に心身共に軽い。
おぶられていただけの11は元気な様子だ。
少しはここまで運んだ自分に対しての感謝も欲しい所であるが、さっさと皆と合流した方が精神上良策だろうと早速捻った脚の具合を確認する。
「どの返が痛いんだ?」
フリオニールの問いかけに右足首を示す。
見れば踝のあたりが少々赤く腫れているが、たいした事はなさそうだ。
ポーションを見つけるまでの間、冷やして固定しておくだけでも支障ないだろう。
そう判断し小袋を弄る。
すると唐突に髪を引っ張られる感触がした。
「髪の毛、長いですね〜」
後ろで束ねてあるフリオニールの髪を自分の方へと引っ張りだして感心している。
いい気なもんだと息を吐き、湿布を手に取り足首に貼付けてやる。
「うわっ、ちょっ…、いきなり貼らないで下さいよっ」
「お前だって、いきなり何か仕出かすじゃないか」
日ごろの仕返しだといわんばかりに言葉を返す。
こんな不可思議な異界の中において、勝手気ままな行動ばかりされていては文句のひとつでも言いたくなるものだ。
いつも突拍子もない行動を起こされるこちらの身にもなって欲しい。
そう言えば心当たりがあるのか無いのか、しばし黙考に入ったようだ。
静かになり、落ち着いて足首を固定するように包帯を巻きつけていく。
「じゃあ、髪の毛洗ってあげます!」
唐突な発言に思わず包帯をきつく締め付けてしまった。
痛がる11に謝りつつ、再度包帯を巻きつけていく。
「だから、なんでそうなるんだ?」
何をどう考えて、その発言に至るのか。
全く理解不能である。
11曰く、勝手な行動の挙句怪我までしてしまって申し訳ない。
そのお礼に、髪を洗ってあげよう!……という結論になったというのだが。
「申し訳ないという気持ちだけで充分なんだが、そのお礼がなんで洗髪なんだ?」
「髪長いと、洗うの大変じゃないですか?」
「それは、まぁ……」
確かに手間はかかるが、この状況とは全く関係ない。
しかも洗髪ともなると必然的に………。
瞬時にいろいろと想像が過ぎったが、彼女に関わると碌な事にならないのはこれまでの経験上目に見えている。
「……断る」
包帯を巻き終え立ち上がる。
遠慮しないで下さいよ〜、などとのたまっているが無視。
11のペースに巻き込まれるのはゴメンだ。
仲間と合流するまで、彼の災難はもう少し続きそうである。
-end-
2009/4/21
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