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災難


「なんていうか……、趣味悪い内装」

足を踏み入れ思わず出た一言。
息苦しそうな城内。
皇帝の拠点とするパンデモニウムにフリオニールと11は進入した。


「こんな所で敵さんと会っても戦う気にならないんですけど」
「俺に言わないでくれ」

辺りを見回す。
巧妙な造りのせいか、壁面の模様のせいか……、視界が悪い。
身を隠すには丁度いいだろうが、それは向こうも同じだろう。
幾ら魔法タイプの彼女とはいえ、こんな狭く入り組んだ場所じゃ戦いにくいのではないかと少々心配してしまう。
有利に戦うためには、少し戦略が必要だと気を引き締める。
そんなフリオニールの考えも知らず、不愉快そうに顔を歪めている11。

「手当たり次第に呪文ぶっ放すのはやめてくれよ」

巻き添え食らうのはゴメンだからなと注意するが、顔を向けた隣には誰もいない。
どうやら先に進んで行ってしまったようだ。
ため息をつき、11の後を追う。


現在ふたりで行動するに至ったのは、次元の歪みに突入した彼女を追ってのものだ。
おかげでクラウド達からはぐれてしまった。
後から合流した彼女はこの異界での戦い方をまだ解っていない。
レベルの低さはともかく、誰かが見ていなくては無茶をするだろうとやや強引にウォーリアに押し付けられたのだが、彼の予想は当たっていたなと再度ため息をつく。

すると、後方から自分を呼ぶ声が聞こえる。
通り過ぎてしまったかと道を戻ると、座り込んでいる11を見つけた。

「もう疲れたのか?」
「いいえ、足を挫いてしまって」

痛くて立てないんですよと11。
いくら視界が悪いからとはいえなんでこんな障害物もない所でと、看てやろうと屈んだ瞬間目の前を突起物が掠った。
硬直する。

「これにびっくりして捻っちゃいました」

油断大敵ですよね〜、と呑気に笑っている。
そういうことなら早く言ってくれと脱力する。
あやうく顔面に突き刺さるところだ。


「…とにかく、こんなトコじゃ危険だからひとまず移動するぞ」

背中に乗るよう促すと「えぇ〜、お姫様抱っこじゃないんですか〜」と不満げな声を出してきたが、無視する。
本当に足を捻ったのか疑問が湧くほど勢いよく圧し掛かってきたが、とりあえず背中の重みを確認して立ち上がる。
思っていたよりもすんなりと立ち上がれたことに、女の子は軽いなと何気に思う。


女の子……、そういえばコイツ女だったな、と思い出した。

首元に絡まる腕。
喋るのに合わせて耳元にかかる息。
背中に僅かに当る柔らかい感触。
なんの誘惑かと。
意識し始めたら気になって仕方がない。

(これは……ヤバイ………)

彼の災難はまだまだ続くようだ。

-end-

2009/4/1




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