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終焉



混沌の果てにて、最後に目にしたものは何だっただろうか。
地を割り、迸る炎。
膝をつき、その巨大な体を起こすこともままならない混沌の神カオス。
光に包まれ、次々と姿を消していく仲間たち。
自身も光に包まれる中、耳にした ”無へ還ろう” という言葉。
その言葉の意味は、もはや知る術はない。
戦いの輪廻は断ち斬られたのだから。



仲間たちは、無事に各々の世界へと戻れたのだろうか。
肉親と剣を交えなければならなかった者。
己の力に恐れをなしていた者。
戦う理由を求めていた者。
それぞれ胸に秘めていた思いは違えどクリスタルを手に入れ、こうして光を取戻すことができたのだ。
不思議にも徐々に薄れ行く記憶では、もはや仲間たちの名すら思い出すことが出来ないが、共に戦った日々は決して忘れぬよう在りたいと思う。

手にするクリスタルに目を向ける。
こうして手中に納まっているということは、自身の居るべき世界はここなのだろう。

どこへ向かうべきなのか、辺りを見渡す。
生い茂る草花に、澄んだ水面。体に受ける爽やかな風。
クリスタルを握り締め、足を運ぶ。
何のためにどこへ行くのか。
この先はクリスタルが導いてくれる。


それにしても美しい世界だと思う。
僅かに残った自身の記憶にある映像には、これほど清らかな景色はない。
在るのは、常に暗雲とした曇空。
今にも崩れ落ちそうな廃城。
薄暗い神殿内。
どれも平和とはかけ離れた、不快な光景ばかりだ。
しかし、なぜそんな光景しか思い出せないのか。

…今まで自分は、どこにいた?

ふと、足を止めクリスタルを見やる。
導きに対して不安などない。
おそらく、今までもクリスタルに導かれていたのだろうから。
なのに、不意に胸の奥に焦燥感が募ってきた。

このクリスタルはどこで手に入れた?
何か忘れてはいないか?
わからない。
解らないのに、クリスタルの輝きを見ているとなにやらもどかしい。

クリスタルを、陽に掲げる。
幾重にも重なった光が反射を繰り返し、淡い光を生み出す。
見覚えのある、懐かしい光。
その光の先には、いつも少女が居た。

(…少女?)

少女とは、誰だ。

いつも自分とともにあった少女。その懸命さに心惹かれたものだ。
楽しそうに語る笑顔。はにかんだ微笑。恥ずかしそうに伏せる顔。
あぁ、記憶が蘇ってくる。
大切な、愛しい少女。

彼女に触れたい。抱きしめたい。
自分は無事だと、伝えたい。
彼女の無事を感じたい。

そういえば彼女はどこだ。
なぜ彼女がここにいない。
それよりも、なぜ愛しい者と離れ離れになっているのか。

違う。
迎えに行かなければならないのだ。
迎えに行くと約束した。

では、どこへ行けばいい。
これもクリスタルが導いてくれるのか?
いや。これは自身で辿りつかなければならないのだろう。

それでなくては意味が無い。


「…11」


愛しい者の名前を呼ぶ。

どこに居ようとも、必ず迎えに行こう。

光は我らと共にあるのだから。

-終-

2009/11/30




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