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「へ〜。なんだかカッコいいこと言うっスね」

流石ジタンだな!と大きく頷きながら感心しているティーダ。
先日11の聞いたジタンの話、”いつか王子さまが迎えにくる” を聞いてのことだ。
信憑性は如何ほどのモノかは判らないが、11にとっては信じたい話である。

「夢があって、いいんじゃないか」

とクラウド。


久しぶりに生成の要請を受け、ふたりの元へと訪れている11。
もうひとり、スコールも居るのだが今は仮眠中だ。
少し離れた所に横たわって休んでいる。
安全とはいえない場所にいる以上、休憩の時にはこうして交代で睡眠をとっているという。


「でもさ、”王子”っていうにはお堅い雰囲気だよな〜」

とティーダが笑う。
王子といえば、柔らかな笑みを称えて物腰優雅に振舞う煌びやかな姿が浮かび上がるという。
実際ティーダの世界にはそのような存在は無く、御伽噺で読んだ位の知識しかないのだからイメージとしてはそんなところなのだろう。
そんなティーダからしてみれば、ウォーリアは”王子”といった感じがしないのは明らかだ。
見た目的にいえば、セシルや敵側になるがセフィロスあたりが王子っぽいと続ける。
それを受け、「言われてみればそうですね」と納得いくかのように11が頷く。

こんなふたりの遣り取りをウォーリアが耳にしたらどんな気持ちだろうな、と胸の奥で溜息を吐くクラウド。
彼だって、自身を”王子”だなんて微塵も思ってはいないだろう。
”モノの例え”
この言葉をこのふたりにどうやって教えてやろうかと思考を廻らせていると、スコールの背中が動いたのを目に留めた。
まだ幾らも眠ってないだろうにと、スコールの元へ移動する。


「もう起きたのか」

重たそうに体を起こすスコールに声をかける。

「…騒がしい」

そう言いながら眠たげな視線を前方に向けると、ティーダと11が目に映った。
いつの間に11が来ていたのか眠っていたから分からないが、なにやらティーダと楽しそうに盛り上がっている。
そのお陰で目が覚めてしまったのだが。
何をあんなに盛り上がっているのかクラウドに尋ねると、先ほどのジタンの話を教えてくれた。

「…王子…って風貌でも、ないだろう…」

ポツリと漏らしたスコールの言葉に、クラウドは思わず吹き出しそうになるのをなんとか堪える。
年齢の割には大人びた言動のあるスコールだが、ティーダと同じようなことを言いだすあたり年相応なところもあるようだ。
案外、心の壁さえ壊してしまえばあのふたりと今以上に意気投合することが出来るのではないかとも思えてくるが、そんなことは彼のプライドが許さないだろうし、到底無理だろう。

「あぁ。そういえば…クラウド」

クラウドの考えていることに気付くわけも無く、スコールが口を開く。

「夢を見た」
「夢?」

寝れば大抵見るだろう、とは言わずにスコールの話に耳を向ける。
彼がこうして自分から会話を振ってくることは珍しいことだし、そんな時は大体真摯なことだったりするからしっかり聞いてやらなければと思っている。

「力を使う度に、記憶が消えていく」

大切な思い出も力へと形を変えていく、そんな世界で戦っている夢だったと紡ぐ。
記憶と引換に力を得るとは、夢とはいえ穏やかではない世界だ。
なにか思うことでもあったのだろうと、スコールの言葉を待つ。

「それから、仲間と逸れて…再会出来て…」

そこで言葉が途切れた。
片手を口元に当て、何か思案している様子だ。
やがて溜息を吐き、顔を上げる。

「…肝心なところが思い出せない。どうやって再会出来たのか」

眉間に皺を刻み、11へと目を向ける。
夢とはいっても、あれは間違いなく自分の世界の事だと思うとスコールは言う。
だから、少しでもウォーリアと11に迫っている問題のヒントになればと、忘れないうちにクラウドに伝えておきたかったようだが、肝心なところが抜け落ちているようだ。

「珍しいな。自分から誰かの為に考えるなんて」

依頼されたわけでもないんだろ、とクラウドが苦笑する。
実の所クラウドは知っている。
日頃11を鬱陶しがっているスコールだが、なんだかんだ言いつつも彼女を1番気に掛けているのも彼だということを。
「対等じゃないのは、気に入らないだけだ」

苦笑を零しているクラウドを横目に顔を背ける。
働きに対して対価を得るのは、当然だと思う。
敵を倒せば素材などが手に入るように、この先、カオスを倒すことができたのなら自分達にとってのそれは、おそらく己の世界に戻ることだろう。
では11はどうなのかという話だ。
それはクラウドも腑に落ちない部分である。
ただ言葉として出さないだけで。
言ったところで、どうすることも出来ないのが現状なのだから。
本人は無意識なのだろうけど、こうして素直に口に出すことの出来るスコールは、やはりまだまだ子供なのだと実感する。


「あっ、スコール〜」

こちらに気がついたティーダが手を振りながらやってくる。
後ろから11も付いて来た。
おはようございます、と挨拶をしてくる11にスコールは短く返事をする。

「”王子”の話は、もう済んだのか?」

とのクラウドの言葉に食いついてくるティーダ。
どうやら”王子”ネタについては、ひと段落ついたようだが、じゃあウォーリアには何が相応しいのだろうという話題になっているという。

「戦士、とか…」
「…スコール。それってそのまんまじゃないっスか」

もうちょっと捻ろうぜ…、とティーダが残念そうな顔を見せる。
それなら自分で考えろと言わんばかりに不機嫌そうな顔をするスコール。
こうして一見相性の合わなそうなふたりだが、根本的な考え方は一緒なのだと思うと感心と共に可笑しさが込み上げてくる。
確たる判断材料を模索するスコール。
少しでも、元気付けようと模索するティーダ。
彼女をどうにか励ましたいというふたりの思いは、方法はどうあれ確かに同じものだ。
それを言ったところで、スコールは断固否定するだろうしティーダは無駄に喜びそうだから言わないが。
そんなことを思いながらクラウドが口を挟む。

「ウォーリアは、しいて言うなら”勇者”ってところじゃないか」

何事にも怯むことなく、常に真っ直ぐ突き進むその姿勢。
勇者の名が相応しいとクラウドは言う。
クラウドのその言葉を聞いてティーダが「それだ!」と目を輝かせた。

「11、勇者って世界を救ってくれるんだ」

ウォーリアにピッタリじゃん、とティーダが11の手を強く握り締める。

「そんで、世界を救ったあとはお姫さまを迎えに行ってハッピーエンド!」

そう言い満面の笑みを向けてくる。
それを受け、笑顔で頷く11。


希望を与えてやるのはいいことだと思う。
夢のような話でも、それで少しでも11の気が晴れるのなら。
最後の闘いの時は、おそらくもうすぐだ。
その先にある終焉には何が待ち受けているのか判らないが、クラウドはただ黙って見守るしかない。

-end-

2009/10/28




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