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笑顔



最後の闘いに向け、各々がクリスタルの導くままに、唯一残っているコスモスの加護の恩恵を受けた聖地を後にする。

11はといえば、敵に姿が見える以上仲間と共に行動をするわけにもいかず、この聖地に留まることとなった。
生成が必要であれば、今までどおり召喚されることにより自分の仕事はこなせる。
とはいえ、ここまでくると皆レベルもそれなりに高いものになっており、そうそう生成の必要などはない。
ひとり聖地に佇み、仲間の無事を祈りながら過ごしているのが大半である。


「おーい」

離れた所から声が聞こえた。
そちらに目を向けると、ジタンがやって来るのが見えた。
手を振り、彼に応える。
近くに来たから寄ってみたとジタン。
座っている11の隣に腰をおろす。

「お疲れさまです、ジタンさん」

ジタンの無事な様子を見受け、労いの言葉を掛ける。
皆こうして近くを通りがかれば、11の様子を見に来てくれる。
嬉しいしありがたい事だが、反面、どこか寂しさを感じてしまう。
こうした他愛の無い会話でも、ひとりで居ることに比べたらとても楽しいひとときだ。
それ故に、このまま皆がこの世界に居てくれれば、などと考えてしまう。
もちろん闘いのない秩序のもたらされた世界ということが前提だが。
しかし、彼らは世界に調和をもたらす為に召喚された戦士たちだ。
役目を終えれば自分達の世界に帰ってしまう。
少し前まで思っていた、”思い出として昇華する”という自分の考え。
今更ながらだが、浅はかな考えだったのだと胸の奥でため息を吐く11。

昇華なんて、できるわけない。
とりわけ、想いを寄せる彼に関しては。


「そういえば、ウォーリアは最近ココに寄ってるのか?」

あれから、他の仲間たちにも闘いが終わったら別れなければならないことを、検めて告げた。
しっかり覚えている者もいたし、思い出した者、皆それぞれ思うこともあったようだ。
当然ウォーリアと11も御多分に漏れず、だ。
そのことについて思いやっての言葉だろう。

「はい。お気遣いくださってるようで」

別れのことを話してから、頻繁にこの地へと寄るようになったという。
それまでは生成が無ければ11を召喚することなどなく、特別時間を割いてまでして会うこともなかったのだが、足しげく訪れてくれるようになり、そんなウォーリアの気遣いに申し訳なさでいっぱいだ。
一度、呼んでくれれば11の方から伺う旨を伝えたのだが、生成の用事でもないのにそういうわけにもいかないと断られてしまったという。

「この場所以外じゃ危険だし、ウォーリアらしいじゃんか」

落ち着いて話したいんだろ、と苦笑を漏らすジタン。
そう言われればそうなのかと納得できるが、彼の役目の邪魔になってはいないかと少しばかり複雑である。
その様子を目に取ったジタンが言う。

「男ってのはさ、好きな子の為ならなんだってやるもんなんだぜ」

ウォーリアもそのあたり上手く調整とって来てるんだろうし、素直に喜んでおけばいいじゃないかと笑顔を見せる。
確かに会いに来てくれることは素直に嬉しいし、彼の温もりに触れることでより一層愛しさが募っていく。
しかし、いくら考えても別れない方法など思いつかない現状。
共に過ごす時間が長くなればなるほどそれと比例するかのように、別れに対しての怯えともつかない不安も深まっていく。
そんな心の揺らぎを決して悟られまいとウォーリアの前では明るく振舞ってはいるが。


「そんな顔、すんなって」

女の子は笑顔が一番!と、項垂れている11を励ましてくる。
彼は、こと女性に関しては聡いようだ。
11の胸中を思いやってのことだろう。
ほら、笑顔笑顔、と催促してくる。
それに釣られて俯き気味になっていた顔をあげる11。
彼の言葉に反応するかのようにヒョコヒョコ動く尻尾の様子を目に留め、思わず笑みが漏れた。
それを受けてジタンは満足そうに頷く。

「11の顔も見れたことだし、そろそろ行くかな」

そう言い、ゆっくりと立ち上がる。
目の保養だよホント、と言いながら体を伸ばす。
どうにも会う顔合う顔男ばかりでウンザリしてたんだ、と苦言を漏らすジタン。
ティナにはオニオンナイトが引っ付いてるし、偶には女の子とふたりきりになりたかったんだと、肩を竦めてみせる。 ジタンらしい言い草に、再び笑顔を覗かせる11。


仲間の、女の子ともなれば特に、その笑顔を守ってやりたい、とジタンは思う。
たとえそれが一時的なものだとしても、その間だけ不安から解き放たれるのなら幾らでも力になりたい。
実際、11の本心からの笑顔を引き出せるのはウォーリアしかいないのだから。
だから、ウォーリアと11が離れ離れになることを防ぎたいのだが、そんな方法が思いつくわけもなく。
今自分が出来ることといったら、沈んでいるであろう11の気分を少しでも晴らすことくらいじゃないだろうか。
そう思って、ここまで足を運んできたのだ。

案の定、ウォーリアの話題を出せば空元気な様子を見せてきた。
心中複雑なのは察しているが、なんとか11の笑顔を引き出すことに成功して安堵する。

「そうやって、いつも笑顔でいられるようになるといいな」

いろいろ不安もあるだろうけどさ、と紡ぐ。
その言葉に11は微笑みを浮かべ、首を縦に振る。

「あ。そうそう、言うの忘れてた」

歩き出そうとした足をその場に停め、11へと視線を落とす。

「女の子には、誰しもいつか王子さまが迎えにくるんだ」

だから笑顔で待ってなきゃダメだぞー、と述べ、手を振りながら去っていった。

彼を見送りながら今の話を頭のなかで何度も反芻する。
”いつか、迎えに来る”
夢事のような話だが、信じたい。

その言葉を胸に納め、愛しい彼に想いを馳せる。

-end-

2009/10/20




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