自己満足
「それにしても、ウォーリアと11がそういう関係だったなんて」
「隠してるわけではなかったんですけど…」
申し訳無さそうな顔で見やる11に苦笑を零すティナ。
11がウォーリアに好意を抱いていることは、薄々感じていた。
でもそれが彼に受け入れられるものなのか、余計な心配をしていたのだが。
ティナは11の手をぎゅっと握り締める。
「うぅん。違うの」
仲間思いなことは判っていたが、あんなにもクリスタルを追い求め、他には見向きもしなそうなウォーリアがこんな風に人に特別な感情を寄せるなんて、思いも寄らなかった。
だから、人らしい感情を見せた彼が、ティナにとってなんだか嬉しい。
もちろん、11の想いが叶ったことも嬉しい。
「びっくりもしたけど、嬉しいの」
そう言い11の肩にそっと頭を乗せる。
「有難うございます」
ティナの背中に手をまわし、優しく抱きしめる。
彼女にも、いつかそう思える人が現れるよう願って。
ふと視界の隅にティーダが映った。
こちらを見ながら、首を傾げている。
なんだろう、と11も首を傾げてみると、見られていることに気がついたのか遠慮がちに近づいてきた。
「ティナ、11借りてってもイイ?」
体を離し、頷くティナ。
また後で、と声をかけティーダの後をついて行く。
ティーダにしては、珍しく無言だ。
生成の用事でもないらしい。
ついて行った先にはスコールがいた。
いつにも増して渋い顔で出迎えられる。
「私、何かしました?」
ティーダを見上げる。
目を向けられ、困ったような顔をするティーダ。
「ティーダに聞いた」
「ゴメン11。なんか…言ったというか、言わされたっていうか」
と言葉を濁すティーダ。
謝られることなど、何かあっただろうかと頭を捻る11。
その様子に呆れたようにスコールが息を吐く。
益々眉間にシワが寄っていくスコールを受け、ティーダが慌てて口を挟んできた。
「あ〜、あれっス。この世界が平和になったらって…」
皆が合流し、今後について話している中、どうもティーダがチラチラと11の様子を窺っているのが目に付いた。
先のウォーリアとの件についてのことなのかとも思ったが、それにしては珍しく深刻そうな面立ちに問い質したという。
コスモスが居なくなってしまったとはいえ、クリスタルが残されている限り、まだ世界を救うことは出来る。
そうすれば、各々の世界に戻れるのだが。
「お前はそれでいいのかもしれないが…、ウォーリアはどうなる」
どれだけの愛情を彼から与えられているのか判らないわけではないだろう、とスコール。
「思い出なんか、お前の自己満足にすぎない」
「ス、スコールっ」
きっぱり言い切るスコールに、慌てて止めに入るティーダ。
止めようとするティーダに目もくれずに言葉を続ける。
調和に向けて奔走していることは知っている。
11が生成という力を貸してくれていることだって、皆感謝している。
しかし、今のままではウォーリアの想いを踏み躙っているだけだ。
解決策を探すでもなく、自分達が元の世界へ戻ったら、やっぱり寂しいと悲劇のヒロインでも気取るつもりなのか。 そんなのは、まっぴらゴメンだ。馬鹿馬鹿しい。
「だから…もう少し、自分のために考えてもいいと思うが」
なんなら、考えるのを協力してやってもいい、と顔を背けるスコール。
突如、背中に圧し掛かる重みに体制を崩すまいと踏ん張る。
「スコール!ホント、いいやつっス!」
ティーダだ。
鬱陶しい。
やっぱ頼りになるな〜、と纏わりついてくる。
いいから離れろと押し返すスコールに尚も纏わりつくティーダ。
頭をガシガシ撫でられ、いい加減切れそうになる。
「あの」
と11。
2人、動きを止めて11を見やる。
「自己満足。…そうですよね」
言われなければ気付かなかったことだ。
自分が本当に望むもの。
それを心の奥底に押し込めていては、彼に対して失礼ではないだろうか。
彼の想いに応える為にも、諦めてはいけない。
「私、ウォーリアさんにお話してみようと思います」
だから、お二人とも力貸してください、と頭を下げる11。
その様子に、ほっと息を吐くスコールと、満面の笑みのティーダ。
何でも無理だと諦めるだけでは前に進めない。
消えかけた自分達も、クリスタルの導きによってこの世界に留まることができたのだから。
-end-
2009/8/10
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