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導き



クリスタルを手にし、集結した戦士達を待っていたのは闇だった。

カオスの炎に身を包まれ、消滅したコスモス。
彼女の言い放った”真の闇”
それがこれなのだろうか。

上とも下ともつかない感覚の中、暗闇に身を委ねる。
何も、無い。
自身の体が本当に存在しているのか、それすらもわからない。
徐々に薄れていく意識の中、脳裏に浮かぶ光景。
はっきりとは映らないが、何か大切なモノ…。
それが次第に闇に飲まれていく。
このまま我々も消滅するのだろうか…。
…いや、まだ成すべき事がある。
ここで諦める訳にはいかない。
10人の強い意志に応えるかのような一筋の光に導かれ、意識が覚醒してくる。


気がついた先で、手に輝くクリスタル。

「…コスモス」

これが彼女の残した力。
クリスタルの導きによって、かろうじて闇から抜け出せたようだ。
まだ終わってはいない。
まだ望みはあるのだ。
クリスタルの輝きにそう確信する。

辺りを見回してみると、無事を喜びあう仲間達の姿が確認できた。
誰一人欠けることなく揃っていることに安堵の息を漏らす。
ふと思い出す、ひとりの人物。
そういえば、彼女は……、11は無事だろうか。
コスモスの聖域に居るのならば何も不安などないのだが、消滅した今、彼女はどうなった。
途端に胸の奥で逸る焦燥感。


「あっ、11!」

オニオンナイトの呼びかけに、視線を移した先には淡い光が浮かびあがっていた。
あの光は紛れも無く11のものだ。
彼女の元へと集まる皆の後ろから続いて行く。

口々に無事と再開の喜びを伝えている中、こちらに気がついたスコールが道を開けてくれた。
そこを通ると、ティナと抱擁している11の姿が目に入る。
11も気がつき、こちらに近寄ってきた。

「お久しぶりです、ウォーリアさん」

そう微笑む彼女の目元は赤く腫れぼったい。
闇に落ちてからどの位の時が過ぎていたのかは判らない。
こうして我々が再び集結できるまで、コスモスを喪失した悲しみにひとり明け暮れていたのだろう。
主を失った11を、ただひとり、心許無い思いをさせてしまったことに胸が締め付けられる。
腕を伸ばし彼女を引き寄せ、抱きしめる。
次いで口付けようと顔を近づけてみたが、慌てふためく11に阻止されてしまった。
久しぶりに自身の腕に収まる11の柔らかさに、自制心が揺らぐが無理強いは良くない。

「無事で、なによりだ」

そう述べ、11の頬に口付けを落とすことで我慢しておく。
スコールが嫌そうな顔でワザとらしくため息を吐くのが視界に入った。

「ほら皆、あっちに行ってよ?」

セシルがそう言うと、興味深気に見ていた者や硬直している者、各々様々な反応をしていた仲間達がいそいそとその場を離れていく。


「消えてしまおうと、思ってたんです」

僅かに体を離し、こちらを見上げて11が口を開く。
コスモスが消滅し、光の戦士達も姿を失った。
そんな失意の中、やがてコスモスの聖域も崩壊を始めたという。
崩れる世界の中で自分の存在意義を見出せず、いっそのこと迫り来る闇に飲み込まれてしまおうと思った矢先。
「光に導かれたんです」
「光…」

彼女もクリスタルに導かれたのかと尋ねると、首を横に振った。
首を傾げ、儚げな微笑を向けてくる11。

「貴方の光に、導かれたんです」

貴方が私を思い出してくれたから、貴方が私を必要としてくれたから…と言葉を続ける11。
闇に紛れる直前に現れた一筋の光。
それを頼りにここへ辿り付いたという。

「ありがとうございます、ウォーリアさん。私、まだ頑張れます」

そう言い、恥らうように顔を伏せきつく抱きついてくる11。
この少女はどうしてこうも、己の心を揺さぶってくれるのだろうか。
募る愛しい想いに、強く抱き締め返す。

コスモスがいなくなってしまったとはいえ、世界の行く末を愁うにはまだ早い。
クリスタル。
その力の導く先には希望が待っているのだから。

-end-

2009/7/10




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