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望むもの-side WOL-

11が去ってからどの位の時が経っただろう。
剣を納め、ふとそんなことが過った。
いつものように、仲間のもとへと生成に出かけて行った。
いつものように、戻ってくるのを待つでもなく自分のペースで先へと進んでいたが一向に戻ってくる気配はない。
そうこうしているうちにフリオニールから先の一件を聞くこととなる。
その後コスモスからもその旨を聞いた。

加護がない今、みすみす11を引き連れて行くわけにもいかない。
自分達にも入ることのできない聖域にいるのなら、彼女の身の安全も保障されている。
それに多少移動に時間が掛かるようだが、生成も支障ないらしい。
それよりもコスモスの力の衰退の方が今は懸念するべきことだ。
このまま衰退が続く一方なら、かろうじて残っているこの世界も崩れてしまう。
そうなると残るものは混沌渦巻く世界のみ。
それだけはなんとしても避けねばならない。
クリスタルも集まりつつある。
そうすれば。


「だいぶ会っていないそうだな」

傍らの次元の歪みから姿を現したスコール。
顔を遇わせるなりそう問われた。

「君はすでに手に入れたと聞いている」

スコールの下に立ちはだかった者は魔女・アルティミシア。
時を操るという厄介な相手だったようだが、スコール自身の強固な意志がそれをも断ち切ったのだろう。
戦いの中で何か得たものがあったのか、孤高を好む彼がバッツやジタンと行動を共にしていると11から聞いていた。

「…必要ないのか?」
「今のところは必要ない」
「…」

数々の戦いを経て、素材は充分にある。
だが、物に頼ってばかりでは己自身を見失ってしまうだろう。
そんな考えから必要最低限の生成でこれまでやってきた。
スコールへと顔を向けると、口元を手で覆い何か思案している。
ジタンがスコールは案外解りやすいと言っていたが、自分からしてみれば相変わらず何を考えているのか見当もつかない。
11と違い、彼と接することがあまりないからなのだろうか。

「…11のことだ」
「知っているのか?」

自分達の間柄のことは、仲間達にあえて伝える必要も無いだろうと黙っていたのだが。
スコールが軽く頷く。
わざわざスコールに報告に来たという11。
それはたいそう嬉しそうに。
その時のことを思い出すだけでうんざりする。
人の惚気ほど暇な話はない。
それこそ壁にでも話していて貰いたいことだ。
と、言いたいことをひとまず言い終えたのか、一旦ひと息吐くスコール。

「だから、会ってやらなくても大丈夫なのか?」

生成する・しないに限らず。
それだけ想われていて、彼女に寂しい思いをさせてることをなんとも思っていないのだろうか。
人の恋路に興味などないが、今まで散々ウォーリアについて聞かされていたこちらからしてみれば、先日会ったばかりの11がいつものような 覇気がないのが気に掛かっていた。


「彼女はそんなことは望んではいない」

スコールを真っ直ぐ見据え、そう断言するウォーリア。
ただ会いたいだけならいつだって来れるのだ。
しかしそれをしないのは、11の望むものがはっきりしているから。
それに至る経緯で培った2人の関係も大切なものではあるが、今は優先されるべきことではないと判っているからだ。
そしてウォーリア自身も同じものを望んでいる。

「望むものは、世界の秩序」

最初の印象と変わることなく、眩しい奴だと思うスコール。
この実直さこそが光の戦士たる所以なのだろうと再認識する。


「すまないな、スコール。君に余計な心配をかけさせたようだ」

以前11に ”もっと周りを見たほうがいい” と助言していたことを思い出す。
どうやらそれは自分にも当てはまるらしい。
ウォーリアの言う通り、会いたければいつだって来れる能力を彼女は持っている。
それをしないのも、ウォーリアが彼女を呼ばないことも、お互いのことをよく判っているからだ。
まだまだ思慮が浅いと自嘲する。

「いや。こっちこそ余計な世話だったみたいだ」

軽く手を上げ去ろうとするスコールに背後から声がかかる。

「必要ないことはない」

その言葉に振り返ると、僅かに表情を和らげたウォーリア。
自分以上に表情を露にすることのない彼のこのような顔は貴重かもしれない。

「私には、11が必要だ」
「…そうか」

ウォーリアに気付かれないよう苦笑を漏らし、その場を去る。
近いうちにも、彼がクリスタルを手にすることができるよう願いながら。

-end-

2009/6/20




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