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加護



悠久の時を過ごす中で、コスモスが創り上げた少女11。

人の形をした<器>を創造し、そこに<精神>を入れ、人として機能する<知識>を加える。
ほどよく出来あがった11をコスモスの傍らに仕えさせた。
もう、ずいぶん永い時をともに過ごしている。
戦う力のない11はコスモスの良き話相手となり、時には異界の中で終わることのない戦いを傍観していた。
これからも果てしなく続くかに思われた闘争。
それが今、カオスの元に集いし者達の手により均衡が崩されてしまった。
調和の光が混沌の渦に飲み込まれようとしている。
光を失いつつある現況の中、コスモスには以前のようにカオスに対抗できるだけの勢力を召喚する力は残っていない。
数多の戦士を失ったコスモスの元に残った者はわすか10名。
希望の光は彼らに掛かっている。


11を創造したときに戯れに付加した能力。
この少ない人数なら、それも役に立つだろうと11の力を彼等に託す事にした。
敵に存在を悟られぬよう、光の加護を授けて。
そのお陰で11の姿は敵の目に映ることもなく、自由に仲間達の間を行き来することが出来ていた。
だが今、その加護が消えている。


調和の力の衰退を懸念して、11はコスモスの元へと戻ってきていた。

11が側に居たところで光が戻るわけではない。
それでも創造主であるコスモスの身を案じ、側に居たいのだ。
しかしコスモスから告げられた言葉は思いも寄らないものだった。
確かに光は弱まりつつあるが、加護がなくなったのはそのせいではないという。

「あなた自身がそうしたのです」

光の加護はコスモスと11の繋がりによってもたらされるもの。

11のコスモスに対する深い敬愛があったからこそ、加護を受けることができていたのだ。
しかし、それが届かなくなってしまったという。
コスモスに対する敬愛に変わりはないのはコスモス自身よく判っている。
ではなぜか。
それはコスモスとは違う繋がりを彼から与えられているから。

11もまた、彼に与えているから。
そこにコスモスの加護が入り込む隙間がないという。
思い当たる節があるのか顔を蒼白させる11。
コスモスの手が11の頬に触れる。
その手は、酷く冷たい。

「私ではもう、11に加護を授けられない」

悲しい面立ちで少女を見下ろす。
繰り返される戦いを傍観するだけの日々。
戦況の変化により、不謹慎ながらも初めて”人”と関わりを持てることに心が弾んだ。
そこで自分を必要としてくれる仲間ができた。
そして想いを交せる人物に出会うことができた。
コスモスの庇護下にあるという身分に甘えていたのかもしれない。
その甘えの結果が、コスモスを悲しませてしまった。

「ごめんなさい。コスモス様」

胸が締め付けられる。

「後悔している?」

コスモスの真っ直ぐな視線を受け、11は首を横に振った。
コスモスを悲しませてしまったことは正直辛い。
でも自分の想いに後悔などはない。
そんなことをしたら彼に失礼だ。

「ここからでも、彼等の力になることはできます」

少し移動が難しくなりますけど、と苦笑を浮かべる。
加護が無くなった以上、彼等と行動を共にするのは得策ではない。
今までが特別だったのだ。
頬に添えられたコスモスの手に自身の手を重ね、楽しい時間を与えてくれたことに感謝をする。

時期にクリスタルは集まるだろう。
コスモスはその時を思い、そっと11を抱きしめた。

-end-

2009/6/12




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