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主観



受け取った素材を手に新しい形へと生成していく。
眩い光に包まれて姿を現す剣。
いつ見ても不思議な光景だ。

「ありがとう、11」

11の目の前に浮かび上がる武器を手に取る。

「いいえ。お役にたてて光栄です」

首を傾げ笑顔で応える11の揺れた髪から覗く装飾品。
以前、着けていた物と変わっている。
なんでもティナとオニオンが本来こうしてアイテム等に使う素材を駆使して作ってくれたという。
女の子同士のプレゼントの遣り合いなんて微笑ましい。
仲良くやっているようで何よりだと思う。

(仲良くといえば…)

先日の出来事を思い出す。
ティーダの空気を読まない発言に顔を赤らめて去っていった11。
あの後ティーダに何か変なことでも言ったのだろうかと聞かれたのだがこれといった確信もなく、なんと応えて良いのか困ったものだ。
結局適当にあしらってその場はやり過ごしたのだが。

「あ〜…、11」
「なんでしょう」

ふたりが所謂恋人同士という関係ならそれはそれでいいと思うし、もしそうならスキンシップ過多なティーダの身の安全の為にも、ここは一度はっきりしておいた方が良策かもしれないと考える。
それにフリオニール自身もなんとなく気になるところだ。
意を決して11に向き直る。

「ウォーリアと、その…そういう、関係…なのか?」

一瞬の間。

「…察していただければ、と思います……」

そう言いほんのりと頬を染める11。
見ているこちらが恥かしい。

こんな不可思議な世界で戦いに身を預けているなか、ふたりにとっての小さな幸せ。
仲間として素直に嬉しいし、少し羨ましい。
どちらから想いを告げたのかも気になるところだが流石にそこまで詮索するのは野暮だろう。
それにしてもまさかあのウォーリアが。
そんなことには無縁のように見えるが、それは自身の主観に過ぎないのではないか。
このことに限らず何事も己の主観だけでは視野を狭めかねない。
もっといろんな角度から物事を捕らえるのも必要だと気を引き締める。

ふと、視界に入った揺らめく鈍い光。
イミテーションだ。
こちらに近づいてくる。

「少し待っていてくれないか」

アクセサリも生成して貰いたいと告げ、敵へと足を向けるフリオニール。
敵の放った魔法を光の盾で防ぎ、息を付く間もなくナイフで止めを刺す。
隙のない一連の流れを見て思わず拍手を送る11。
そんな11の仕草に気付き苦笑を浮かべる。
さっさとアクセサリも作ってもらってウォーリアの元に帰してやろうと振り返ったフリオニールの目に映ったものは、今にも11に斬りかかろうと迫り来るイミテーションの姿だった。
剣を交えようとも間に合わない。
だからといって斧を投げようにも、ひとつ間違えば11に当りかねない。
それよりも何故、敵に11の姿が見えているのか。
急展開すぎる事態に、頭が混乱してきた。

「11!」

フリオニールの叫びに何事かと首を傾げる。
11自身、まさか敵に姿が見えているとは思いも拠らないのだから仕方がない。
戦う力のない者は無防備すぎる。

「逃げろ!」

言葉を発すると同時に振り下ろされる一閃。
その瞬間、ふいに岩陰から現れた剣先に目を奪われるフリオニール。
次いで鳴り響く金属音。

「大丈夫か」

背中越しに11を庇うように岩陰から姿を現したのはクラウドだった。
大剣でイミテーションの降ろした剣を受け止めている。
敵をなぎ払い、そのまま大剣を3度斬りつけ葬り去った。


「すまないクラウド。助かった」

走りよってきたフリオニールは無事な様子の11を見てほっと胸を撫で下ろす。
クラウドも大剣を納め、11に目を向ける。

「…もしかして、私…、敵に姿、見えてました?」

11が途切れ気味に言葉を漏らす。
コスモスの加護のおかげで11の姿は敵には見ることが出来ないはずである。
それが今のように見えているということは。

「コスモスの力が、弱まってきている?」
「そんなっ……」

フリオニールの言葉に慌てる11。
調和の神に仕える11は、自身の身の危険よりもコスモスの力の衰退に動揺しているようだ。
自身を生みだしてくれた、11にとっていわば母なる存在。
狼狽するのも無理はない。
しかしここでうろたえていても何の解決にもならない。
フリオニール達にできることは、一刻も早くクリスタルを手に入れること。
そして11は。

「一度、コスモスの元へ行ったほうがいいんじゃないのか」

クラウドの一言に無言で頷く11。
困惑気に顔を曇らせ、光に包まれて姿を消した。


「俺はもう手に入れている」

クラウドの手にはクリスタル。
これがこの世界を救う鍵。

「だから生成も急に必要ってことはないんだが」

他の者達にも早めにこのことを知らせておいた方がいいだろうとクラウド。
確かに安全でないところで彼女を召喚するのは得策ではない状況になった。

「わかった」

頷くフリオニール。
ウォーリアに早々に伝えなければと歩き出す。

-end-

2009/6/4




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