素材の使い道
「来ないね、11」
「忙しいのよ」
そんなに急用でもないし、のんびり待ちましょうとティナ。
一度会ってしまえば、その者の気配を辿って移動できる11。
最初のころは目の前に突然出現されて驚かされたが、慣れた今ではなんだか便利そうで羨ましい。
しかし、たまに勘が狂って仲間の上に落ちてみたりと何かと迷惑をかけることもあり、最近は少し離れた所から現れるようにしたという。
とはいえ、少々離れすぎな所から現れている気もするが。
そんな11を探すようにオニオンナイトは見晴らしの良い高台に登り、辺りを一望している。
「それにしても、ちゃんと休んでるのかな」
先に進むにつれ、自ずと自分達のレベルもあがってきた。
それに比例して素材も順調に集まってくる。
アイテム自体はたまに敵から奪ったりすることもあるが、それでも11の力は必要だ。
仲間達に呼び出されて何かと忙しいことだろう。
「ティナが心配することないよ。ウォーリアと一緒なんだろ?」
「そうだけど…」
好んで彼に付いていってるようだが、無理してないだろうか。
マイペースに見える彼だし、ちゃんと相手にしてもらってるのだろうかと余計な心配をしてしまう。
それに、あちらこちらと飛び回っていれば疲れも溜まってくる。
「子供じゃないんだから、必要があれば休憩してるよ」
「そう、だよね」
確かに必要であれば休憩くらいするだろう。
分かってはいるけれど、彼女の身を案じること位させて欲しい。
少し前に11から貰ったモーグリのヌイグルミ。
あれから眠る時の必需品になっている。
たった一つのヌイグルミなのに、自分を元気付けてくれた大切な宝物。
モーグリが好きなことはもちろんだが、それに付加された彼女の優しさや気遣いのおかげだ。
「喜んでくれるかな、11」
「大丈夫だよ」
なんたってボクも手伝ったんだからね、とオニオンナイト。
モーグリに癒されたお礼をしたいとオニオンに相談したら、自分達に生成はできないから素材をそのまま使って何か作ろうと提案してきた。
とはいえ、何が喜ばれるのか見当もつかず、それなら彼女に聞いたほうが早くないかという結論になる。
さっそく彼女にさり気なく好きなものを尋ねたところ、”光が好きです” と形容し難いものを応えてきた。
その後も具体的な”モノ”というものを聞くに至らず些か頭を捻ったが、ならばお守りでも作ろうということになった。
どうせなら常に身に付けていられるもの。
小さいけれど控えめに装飾されたピアス。
派手な宝飾を好まない彼女のために、オニオンの助言を受けながら試行錯誤して作り上げることができた。
「ティナ、来たみたいだよ」
高台から11に向かって手を振り始めたオニオン。
普段大人のような言動をする彼も11が来るのを楽しみにしていたようだ。
あまり見ることの出来ないオニオンの子供らしい姿にティナは苦笑を零す。
さぁ、なんて言って渡そうか。
喜んでくれるだろうか。
なんだか妙に緊張してきた。
誰かの為に何かをしてあげること。
簡単なようで、案外難しいことかもしれないけれど。
それが喜んでもらえたらとても素敵なことだ。
-end-
2009/4/25
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