光
廃墟と化した神殿内をひとり進む。
瓦礫となった柱が床に散らばり、天井すらも形を成していない。
その天井から覗く空は、不安を煽るかのような薄暗い雲に覆われている。
辺りに敵の気配は、無い。
自身の足音だけが静かに鳴り響く。
そこに前方から何者かの足音が近づいてきた。
(また来たか……)
心の奥で息を吐く。
「こんにちは、ウォーリアさん」
「まだ生成は必要ないぞ」
来るなり追い返そうと試みたが、判ってますよ〜と傍に駆け寄ってきた。
見た目に反して、意外にも彼女はこうして人の言うことを聞き入れない節が時折見受けられる。
ひとりで行動すると伝えてあるのだが、どうにも自分に纏わりついてくるのにはホトホト頭を悩ませる。
「今、スコールさんの所に行ってたのですが」
だからと言って無碍にする訳にもいかない。
どうしたものかと、思いを巡らせてしまう。
「おひとりでいらっしゃいました」
「ひとりで?……それなら彼についてやってはどうだ、11」
そう提案してみた所、しばらく一緒に行動していたという。
そういえばいつもより居ない期間が長かったようだ。
ではどうして、と立ち止まって振り返ると苦笑を向けてきた。
「バッツさんからお守りを貰ったから大丈夫だって、追い返されました」
お守りを貰ったのは事実なのだろうが、いい口実があったものだと少し羨ましくなる。
もともと、ひとりを好む傾向にあったようだし、任務の遂行に忠実な彼ならひとりでも大丈夫だろう。
もし何かあればこうやって11が様子を伝えてくれるだろうし……。
ふと、気づく。
意外にも、自分は11の報告を待っているのではないのかと。
そうでなければ彼女の居ない期間の長さなど気にも止めないのではないだろうか。
居なくて寂しいとは思わないが、物足りなさを感じていた自分に気づいてしまった。
しかし、彼女はどうなのか。
「君は、なぜ私の傍にいたがる」
相槌をうつしかない自分といたって有益でもないだろうにと常々不思議に思っていた。
なぜこうも自分に関わってくるのか、率直に聞いてみる。
そう聞かれると彼女自身もよく分かってないのか、些か頭を捻っているようだ。
「言葉にするのは難しいのですが…」
考えが纏まったのか、ゆるゆると口を開く。
「ウォーリアさんの光に惹かれる……からでしょうか」
コスモスと似た光の加護を感じるという。
「安心するんです。貴方の傍にいると」
秩序の神に仕える11。
コスモスの力が弱まっている今、彼女の糧は彼の光の加護なのだろうか。
安心するといわれてウォーリアも悪い気はしない。
秩序をもたらすために帆走しているのは皆同じだ。
ならば共に進もう。
-end-
2009/4/8
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