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目の前で揺らめく髪を眺める。
素材を集めて生成して貰うために11を呼んだのだが、なかなか始まらない。
今回は材料の数が多いようで、一つ一つ素材の確認をしているようだ。
セシルは手持ち無沙汰に先程から11の頭を見下ろしている。
すると、ふと動きが止まった。

「どうかした?」
「…お呼びが掛かりました」

忙しそうだな、と思いながらも11の様子が気になる。
いつもなら早々に仕事を終え元気に去って行くのだが、片手を頬につけ、やや思案気味の様子だ。

「皆、頑張ってるよね。誰に呼ばれたの?」

と聞いてみる。

「ウォーリアさんなんですけれど……」

自分の感が当たっていればだが、彼女は彼に好意を寄せているはず。
なのになぜ、こんなに戸惑っているのだろうか。
喧嘩でもしたのかと余計な詮索をしたくなってしまう。

「最近、なんだか変なんです」
「変?」

妙に彼からの視線を感じたり、気が付けば物凄く至近距離にいたりと落ち着かないという。

「この間なんて…、ウトウトしていた私もだらしなかったんですけど、目が覚めたら目の前にウォーリアさんの顔がありまして……」

何だか物凄く恥かしくて、と弱々しい声を出す。
思い出したのか、顔が真っ赤だ。
彼女の口から紡がれる、ウォーリアの意外な一面に吹き出しそうになるのをなんとか堪える。

(でも、それって…)

いつでも実直な彼だが。
いや、実直な彼であるから…だろうか。

(もしかして、反応みて楽しんでる……とか?)

想いも告げずに態度ばかりで表しても彼女は戸惑うばかりだろうに。
人の性癖に文句をいう気はないが、思わずため息をついてしまう。
気を取り直し、11へと向き直る。

「11はウォーリアに恋してるんだね」

好きでもない人にこんな風に迫られたって、なんともないでしょ?と11の顔を覗き込んでみる。
驚いた表情は見せたが、慌てるような素振りは見せない。

「恋……、これって恋なんでしょうか?何分、こんな感覚初めてでして…」

戸惑いながら、首を傾げる。
こんな彼女の言葉に初恋なのかな、と微笑ましく思う。

「落ち着かないのはしょうがないとして、変、で片付けないでさ。
恋ってなかなか素敵なものだよ」

さぁ、早く行っておいで、と11を彼の元へ行くよう促す。
光に包まれ、消え行く彼女の顔にはまだ多少の困惑を残していたが、後はウォーリアがなんとかするだろう。
いや、なんとかしてあげて欲しい。
彼女の、まだ気づいていない本当の気持ちを引き出せるのは、彼しかいないのだから。
淡い光の消えた後に佇んでいると、足に当たったコツリとした硬い感触。

「あぁ。生成して貰うの忘れてた…」

地面に転がっている素材に苦笑を漏らす。
薄れている記憶の断片に時折見え隠れする、自分の大切な者。
まだ、はっきりと思い出すことは出来ないけれど。
自分も早く愛する者の待つ世界へ戻らなくては、と思いを馳せる。

-end-

2009/3/?




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