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閑話 WOL


コスモスより預けられた少女を伴い、道を進むウォーリア。
この異界がまだよくわかっていないせいか、少女11はあちらこちらと歩き回り、思うように進まない。
どうしたものかと思案するもこれといった解決策もなく、11を引き連れここまで辿り付いた。

廃墟と化した魔女の巣窟・アルティミシア城。


「11」

声を掛けると、こちらへと駆け寄ってきた。

「なんか、おどろおどろしいですよね〜」

おどろおどろしい…、確かにほの暗い。
所々、床が抜け落ちた螺旋状の回廊が不気味さを醸し出している。
ヘタに動き回っていてはふいに落ちてしまうだろう。
その旨を注意したが聞いてか聞かずか、呑気に返事をしてまた散策を始めた。

こんな奇妙な世界において好奇心旺盛なのは感心なことだが、その無邪気さが油断を招くとは未だ幼さの残る11には理解できないのだろうか。
ことある毎に窘めはするものの、その言葉のどれ位が彼女の頭に入っているのか甚だ疑問である。
とはいえ今のところ敵の気配もないことだし、放っておいても支障ないと判断してウォーリア自らも城内を偵察することにした。


壁面は崩れ落ち、空洞になっている。
そこを覗いてみれば次元の歪みが禍々しく蠢いている。
禍々しいとはいえ、ここをくぐらなければ他の空間へと移動できないのはなんとも考えものだ。
そこかしこに渦巻く歪みに顔を顰める。

秩序の乱れた世界など、あってはならない。
世界の為にも、一刻も早くクリスタルを……

「……アさ〜ん〜…」

クリスタルを手に入れなければならない。

「ウォーリアさ〜ん〜〜!」


決意を新たにしていると、程よく近い場所から空間に反響してウォーリアを呼ぶ声が聞こえた。
また何かに引っかかったのだろうかと、声を辿っていくとデジョントラップに埋もれもがいている11を見つけた。
人の忠告を聞いてない結果だろう。
ひとつため息をつく。

「ちょっ、助けてくださいよ〜っ」

動かず、じっとしていればデジョンなどいとも簡単に抜け出すことができる。

「まず、君は少し落ち着きが足りないと思うのだが」

言ったはずだ、所構わず歩き回るのは危険だと…と言葉を続ける。
これだけ老築化していればいつ崩れ落ちても不思議ではないのだから。

「えぇと、お説教は後でじっくり聞きますからっ、ひとまず出してくださいっ」

淡々と語るウォーリアを見上げながら、デジョンの中でもがき続ける。


ふと誰かの気配が近づいてくるのが感じられた。
仲間の気配だ。

「あっ、ウォーリア〜!」

佇む姿を見つけ、ティーダが駆け寄ってきた。
次いでセシル・フリオニール・クラウドも寄ってくる。

「君達も来ていたのか」

久しぶりに再会した仲間達の元気な姿を目に留める。
しかしクリスタルの輝きは確認できず、彼らもその行方に彷徨っているようだ。

「ウォーリアを呼ぶ声が聞こえて」

女の子の声だったし気のせいかと思ったけどホントに居たから驚いたよ、とセシル。
セシルの言葉を受け、あぁ、と思い出したかのように足元に目を遣るウォーリア。

「呼んでいたのは彼女だ」

ウォーリアの目線を追えば、デジョントラップ。
その中心部からじたばたと忙しなく蠢いてる腕が見えた。

「新しい仲間だ」

とウォーリアの一言。

仲間と聞いて、慌てて腕を伸ばすフリオニール。
手首を掴み、デジョンから引きずり出す。
クラウドも少女の体を抱え上げて手伝い、漸くデジョンから抜け出すことができた。


「おい、大丈夫か?」

床に座り込む少女に声をかけるフリオニール。
命に支障はないとはいえ、デジョンに嵌るとなんとも云い難い感覚に苛まれる。
それが体力を徐々に削っていく原因のようだ。
動かなければ直ぐに抜けることができるが、頭まで嵌っていたことを考えると長いこともがいていたことが想像できる。

「油断大敵と言っただろう」

ウォーリアの言葉から察するに彼女にこの世界での在り方を教えていたのだろうか。
それにしてはやり過ぎな気もしないでもない。
疲弊しきっている彼女に軽く同情するが「冷たいですよウォーリアさん」
と、言い返せる程度には元気なようだ。

「だいたい君は」

切々と11に説教を始めるウォーリア。
相変わらず表情に変化はないが、これほど口達者なウォーリアを見るのは初めてだ。
時々11も言い返しているが、それをも遮り彼の説教は続く。


「な、なぁウォーリア。そろそろその位でいいんじゃないのか?」

彼女もだいぶ疲れきっているようだし、と助舟を出すフリオニール。
言葉を止め、フリオニールに目を移す。
ウォーリアに無言で見つめられ、何か変なことでも言っただろうかと頭を捻るが思いつかない。


「フリオニール。君には義理の妹がいると言っていたな」
「あ、あぁ」

急な問いかけに返事をしつつも余計に頭を捻る。
彼女への説教と何か関係でもあるのだろうか。
他の3人もウォーリアの言葉へと耳を傾ける。

「彼女を頼んだ」
「…え?」

義理とはいえ妹のいる君なら彼女を上手く扱えるだろうとウォーリア。
慌てるフリオニールを余所にマントを翻し去っていく。

仲間達に振り返れば、楽しそうなティーダ。
よろしくね、と挨拶しているセシル。
疲労を癒すためにとポーションの準備をしているクラウド。
各々すでに順応している。

慌てているのは自分だけか。

心なしか足取りも軽く、颯爽と去っていったウォーリア。


押し付けられた感が些かあるが置いていくわけにもいかないしな、と息をつくフリオニールだった。

-end-

2009/7/1




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